スヴェン・ヴァルセッキ
Tommy
特異体質のため、生後八年間ずっと無菌室で成長してきた少年が、両親の亀裂を埋めるために自らの生命をなげうつというドラマ。「殺人魚フライングキラー」のオビディオ・G・アソニティスが製作、これが二作目のフィリップ・オットーニが監督にあたっている。アメリカでの実話を基にフィリップ・オットーニが脚本を書き、マリオ・ヴルピアーニが撮影、ステルヴィオ・チプリアーニが音楽を担当。スティーヴン・パワーが主題歌を作曲し、主演のスヴェン・ヴァルセッキが歌っている。出演はスヴェン・ヴァルセッキ、クリストファー・ジョージ、ゲイ・ハミルトン、マウロ・クーリなど。イタリアでの原題は、“Questo si che e amore”。
8歳のトミー(スヴェン・ヴァルセッキ)は、血液抗体欠落症という特殊体質のため、まだ外の世界にふれたことのない少年だ。どんな細菌やビールスにも無抵抗のため、ガラス張りの無菌室で成長した。部室の中にはベッドのほかに、テレビ、バスケット・ボール用のネット、スケートボードのできるスペースもある。親友のラリー(M・クーリ)も愛犬をつれて毎日面会にきてくれる。生活の不自由さはないが、両親とくらせないわびしさはひとしおだ。ママのグエン(ゲイ・ハミルトン)は染色家、パパのマイク(クリストファー・ジョージ)はテレビで人形芝居をやっている人気タレントだ。だが夫婦の仲は、トミーの誕生以来うまくいっていない。悲運の子供の出産は、グエンを地獄の責め苦に追い込んでいた。ついに二人は離婚を決意して、家庭裁判所を訪れる。だが、トミーには知らせたくないというのが、親としての思いやりだった。しかし、繊細なトミーは、両親の心の動きを察知した。パパとママはもう愛しあっていないのだ。その原因は僕なのだと、トミーの心は悲しみにしずんだ。翌日、マイクのテレビ番組を見ていると、視聴者から歌を募集していた。早速、トミーはパパに会いたい思いを歌にたくし、匿名で応募した。哀調を帯びたメロディに手紙をそえて、マイクの心は痛んだ。これがトミーの作品であることが、すぐわかったからだ。マイクが病院にかけつけた。でも、トミーの心は晴れない、両親の愛しあっている姿を見たかったのに。マイクは病院の帰りに、久しぶりにグエンと会い話しあったが、もはや二人の間の亀裂を埋めることはできない。グエンはトミーに離婚のことを打ち明けた。パパとママのためなら、死んでもいい。そう思ったトミーは、ラリーの協力で病院を抜け出した。トミーは外界の空気を初めて吸い、大喜び。昔、両親が愛しあったという田舎の家へ向かう。トミーの失踪を知った両親も田舎の家へ急ぐ。トミーの死期は近づき、やっとのことで写真で見なれたとんがり屋根の家についた。庭先にパパとママが出迎えてくれた。「ぼくがいなくなっても仲良く暮してね」とトミー。両親の腕に抱かれながら、トミーは永遠の眠りについた。
監督、脚本
製作
撮影
音楽
編集
歌
主題曲
字幕
[c]キネマ旬報社