ルイ・ド・フュネス
Victor Pibert
政治的な陰謀にまき込まれた実業家が主人公のコメディー。製作はベルトラン・ジャヴァル、監督は一連のフュネス喜劇を手がけてきた「大乱戦」のジェラール・ウーリー、ウーリーの原案をウーリー自身とダニエル・トンプソンが共同脚色、撮影はアンリ・ドカエ、音楽はウラジミール・コスマ、編集はアルベール・ジュルジャンソンが各々担当。出演はルイ・ド・フュネス、シュジ・ドレール、マルセル・ダリオ、アンリ・ギベール、クロード・ジロー、クロード・ピエプリュ、ランゾー・モンターニなど。
マンハッタンのユダヤ・オーソドックス派教会の牧師ジャコブ(M・ダリオ)は、この界隈の人々に聖人として崇拝されている。そのジャコブ師が三十年ぶりに、パリに住む身内のシュモル家の人たちと再会するために、弟子を一人伴い飛行機でニューヨークを発った時を同じくして、パリの実業家で休暇の旅を楽しんでいたビクトル・ピベール(L・D・フュネス)がお抱えの運転手サロモン(H・ギベール)の運転する車で帰途につき、ノルマンディにさしかかった。ピベールは急いでいた。というのも、明日は娘アントワネットの結婚式がある日なのだ。そのとき、サロモンが運転を誤り、車は道路から外れて河に突っ込んだ。だが、車には逆さまにしたボートが乗せてあったため、奇跡的にボートが河に浮かび、その上に車が乗るという奇妙な結果になった。一方パリでは、中東から帰ったモハメッド・ラルビ・スリマン(C・ジロー)がサン・ジェルマン通りを歩いていたところを、突然現われた四人の同国人に無理矢理車に押し込められた。そのころ、サロモンを激励して河にはまった車を引き揚げようとあせるピベールは、あまり口汚なく彼をののしったために、愛想をつかされ一人とり残されて途方にくれていた。彼は助けを求めるために、見知らぬ工場に入ったが、今日は休みらしく人影もなくヒッソリしていた。ここでピベールはまたしてもとんだ災難に遭遇した。工場の一室で行われている秘密裁判を目撃してしまったのだ。裁かれているのはパリの路上で誘拐されたスリマンで、裁いているのはフアレス(L・モンターニ)という陸軍大佐だった。スリマンは、実は某国の革命家で自由党の党主だった。彼は拷問にかけられた上、死刑の宣告を受けた。この様子を目撃したピベールは警察に知らせようとしてフアレス大佐に発見されたから大変。工場内で追いつ追われつの大騒動が始まり、このドサクサに乗じてスリマンは逃げ出した。ピベールもなんとか逃げることができたが、今度はスリマンにピストルをつきつけられ、オルリー空港に到着した。空港では、ジャコブ師を出迎えるシュモル家の人々、スリマンを探すフアレス大佐とその部下、ピベールの帰りを今や遅しと待つ妻のジェルメーヌ、司法警察署長アンドレアニ(C・ピエプリュ)が詰めかけていた。スリマンとピベールはフアレス大佐に見つかり、窮地に追い込まれた二人は、空港ホテルの一室からユダヤ牧師の衣裳を失敬して逃げだすことにしたが、いち早くシュモル家の人が二人を見つけてジャコブ師とその弟子と思い込み、大歓迎した。その頃、パリのユダヤ人区ロジェール街はジャコブ師歓迎のためのお祭り騒ぎとなっていたが、みんなが夢中になって歓迎しているジャコブ師がほんものでなく、ピベールであることを知ったのはサロモンであった。一方、サン・ルイ教会では、結婚式を挙げようとするピベールの娘アントワネットが父親の到着を今や遅しと待っていたが、いつまでたっても現われないので半狂乱の態であった。そこへ本物のジャコブ師とその弟子をピベールとスリマンだと思い込んでいるフアレス大佐とその部下と警官が教会内で鉢合せするという珍妙な大騒動が起こった。折から空には某国の大臣が乗った一台のヘリコプターが旋回していた。ヘリから降り立った大臣は、スリマンに革命が成功したこと、スリマンが共和国の大統領になったことを伝えた。そうこうしているうちに本物のジャコブ師は、やっとのことでシュモル家の人々と再会したが、彼らは一向に嬉しそうな顔をしなかった。彼らの頭の中は、今日、起こった色々な出来事で、すっかり狂っていたからであった。
Victor Pibert
Germaine
Rabbi Jacob
Solomon
Slimane
Commissioner Andreani
Colonel Fares
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