ジャン・ポール・ベルモンド
Alexandre Stavisky
一九三〇年代のフランスで暗躍した希代の詐欺師スタビスキーの半生を描く。製作はジャン・ポール・ベルモンド、監督は「ミュリエル」のアラン・レネ、脚本はホルヘ・センプラン、撮影はサッシャ・ヴィエルニー、音楽はステファン・ソンダイムが各々担当。出演はジャン・ポール・ベルモンド、シャルル・ボワイエ、アニー・デュプレー、フランソワ・ペリエ、クロード・リッシュ、ロベルト・ビサッコ、ジジ・バリスタなど。
南仏のマルセーユから海路、一艘の小舟が浜辺をめざしていた。小舟に乗っているのはレオン・トロツキー。十月革命の英雄も、スターリンとの権力争いに敗れて、今は亡命の身を安住の地を求めてフランスに逃れてきたのだった。一九三〇年の、はじめの頃だった。その頃、アレクサンドル・スタビスキー(J・P・ベルモンド)は、クラリッジ・ホテルの一室で、友人であり共同の事業経営者であるラオール男爵(C・ボワイエ)、弁護士のボレリ(F・ペリエ)と共にお茶を飲んでいた。スタビスキーは公債を発行し、国際的な実業家として大きく踏み出そうとしていた。彼は生まれながらの野心家だった。劇場をおさえ、銀行を買収し、新聞に投資して実業家として着々と力を伸ばして行った。スタビスキーの妻アルレッテ(A・デュプレー)は、ぜいたくさを自然に身につけた、ゴーシャスなムードを漂わせる女だった。その彼女に献身的な愛を捧げる男がいた。スペイン人のモンタルボ(R・ビサッコ)だ。折からのスペインはフランコ政権に抵抗する人民戦線の激しい闘いが各都市を砲火で包んでいた。モンタルボはフランコ側につく地主の息子で、人民戦線を叩きつぶす目的でムッソリーニから武器を買いつけるためにマルセーユに来ていたのだ。その頃、スタビスキーの身辺が騒がしくなっていた。ボニー(C・リシュ)という検察官が彼の前歴を調べて廻っていたのである。スタビスキーが発行したバイヨンヌ市の公債が偽公債だと噂されたことがスタビスキーの致命傷になった。やがて、彼の息のかかったバイヨンヌ市の市立銀行の行員が逮捕され、偽公債の発行を認めたことから事態は急変した。雪の降りしきる夜、アルレッテと一緒にオペラを観にいっていたスタビスキーは、ボレリからその報告をうけ、前後策を講じたが、状況は絶望的だった。彼の息のかかったベリクール議員を使って急場を乗り切ろうとした彼に、ボレリも男爵も逃亡を勧める。いったんスイスの山荘に逃れて捲土重来を期したスタビスキーにとどめをさしたのはベリクールの裏切りだった。スタビスキーは、シャモニーの山荘で死体となって発見された。ピストルによる自殺として新聞に発表され、アルレッテは獄窓につながれた。時を同じくしてトロツキーはフランスを追放され、ヨーロッパ全土に無気味なファシズムの影が忍びよっていく。
Alexandre Stavisky
Baron Raoul
Borelli
Arlette
Bonny
Montalvo
Henriet
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