原田知世
芳山和子
ある日突然、時間を超える能力を持ってしまった少女の不思議な経験と悲しい恋を描く。筒井康隆の同名小説の映画化で、脚本は「転校生」の剣持亘、監督も同作の大林宣彦、撮影も同作の阪本善尚がそれぞれ担当。主題歌は、原田知世。
映像の魔術師・大林宣彦の魅力に迫る PR
余命3か月を宣告されながらも、故郷である尾道を舞台にした超大作『海辺の映画館-キネマの玉手箱』を完成させ、今年4月10日に82年の生涯に幕を下ろした大林宣彦監督。本特集では大林監督が手掛けた作品群から、その平和へのメッセージを解き明かす。
※結末の記載を含むものもあります。
土曜日の放課後、掃除当番の芳山和子は実験室で不審な物音を聞きつけ、中に入ってみるが人の姿はなく、床に落ちたフラスコの中の液体が白い煙をたてていた。フラスコに手をのばした和子は不思議な香りに包まれて気を失ってしまう。和子は、保健室で気がつき自分を運んでくれたクラスメイトの堀川吾朗や深町一夫らと様子を見に行くが、実験室は何事もなかったように整然としていた。しかし、和子はあの不思議な香りだけは覚えていた。それはラベンダーの香りだった。この事件があってから、和子は時間の感覚がデタラメになったような奇妙な感じに襲われるようになっていた。ある夜、地震があり外に避難した和子は、吾朗の家の方で火の手があがっているのを見、あわてて駈けつける。幸い火事はボヤ程度で済んでおり、パジャマ姿で様子を見に来ていた一夫と和子は一緒に帰った。翌朝、寝坊をした和子は学校へ急いでいた。途中で吾朗と一緒になり地震のことを話していると突然、古い御堂の屋根瓦がくずれ落ちてきた。気がつくと和子は自分のベッドの中にいた。夢だったのだ。その朝、学校で和子が吾朗に地震のことを話すと、地震などなかったと言う。そして授業が始まり、和子は愕然とした。昨日と全く同じ内容なのである。やはりその夜、地震が起こり火事騒ぎがあった。和子は一夫に今まで起った不思議なことを打ち明けるが、一夫は一時的な超能力だと慰める。しかし、納得のいかない和子は、一夫を探していて、彼の家の温室でラベンダーの香りをかぎ、気を失った。気がつくと和子は、一夫が植物採集をしている海辺の崖にテレポートしていた。そこで和子は不思議なことが起るきっかけとなった土曜日の実験室に戻りたいと言う。一夫は反対したが和子のひたむきさにうたれ、二人は強く念じた。そして、時をかけた和子が実験室の扉を開けると、そこには一夫がいた。彼は自分が西暦二六六〇年の薬学博士で、植物を手に入れるためこの時代にやって来たこと、自分に関わりのある存在には、強い念波を相手に送って都合のいい記憶を持たせていたことを告白する。そしてすべてを喋ってしまったのでお別れだと告げた。和子は一緒に行きたいと言うが、彼は自分に対しての記憶も消さなくてはならないと言う。和子は嫌がるが、ラベンダーの香りをかがされ床に崩れた。十一年後、大学の薬学部研究室に勤めている和子は、実験室を訪ねてきた一夫とぶつかる。二人はハッと思うがそのまま歩み去るのだった。
芳山和子
深町一夫
堀川吾朗
神谷真理子
福島利男
立花尚子
芳山哲夫
芳山紀子
芳山良子(7歳)
芳山良子(18歳)
堀川貞子
竹尾原道
時計屋の男
喪服の女
生徒A
生徒B
生徒C
幼年時代の和子(5歳)
幼年時代の和子(3歳)
幼年時代の一夫
幼年時代の吾朗
深町正治
深町たつ
製作
プロデューサー
プロデューサー
原作
脚本
監督、脚色、編集
撮影
音楽監督
音楽プロデューサー
音楽プロデューサー
美術デザイン
音楽デザイン
録音
照明
スチール
助監督
作画合成
作画合成
人形製作
主題歌
[c]キネマ旬報社
最初は、演技が下手なアイドル映画としか思えませんでした。しかも、 今のようにCGがない時代。明らかにブルーバック(?)を使った合成 映像の粗さもなんか昭和チックな感じ。
でも、そこは大林監督マジック。最後の30分ですっかり魔法にかかった ような、不思議な気持ちになりました。
初恋の頃の戻ったようなノスタルジックな気分にさせる映像と、SF風 の物語、最後にすべてがつながる推理小説のような謎解き。
なかなか面白い。好きな人と嫌いな人が両極端に分かれます。最後のエンドロールがとても斬新で面白いのと、若くかわいい原田知世のアップがよかった…。
この映画のテーマは「愛するヒトの秘密をあばいたばかりに別れなければならなくなった少女」でしょうか。
最初はNHKのTVドラマで見て、良く覚えています。NHKでは『時間よ止まれ!』というドラマもあり、時間モノが気に入っていました。
この原田知世バージョンはユーミンの歌が好きで、知ってはいました。が、どうも知世が好きになれず、2006年のアニメ版で初めて観ることになり、逆にこのバージョンに戻ってみました。
原田知世は歯並びが悪い印象があって、自分自身もそうなので、それが嫌いな印象だったかもしれません。しかし、最近の知世を観ると、演技力もあってたいしたものですよね。『姑獲鳥の夏』はあまり良くなかったけれど、『となり町戦争』『紙屋悦子の青春』は良いですよ。
さて、この映画のテーマですが、Wikiを見ると原作の筒井康隆がイヤイヤ書いたようになっていますが、真実を得ていると思います。思春期の少女の壊れそうな自意識を良く描いているし、このテーマも永遠のものですよね。誰でもヒトを愛すればそのヒトのことを知りたくなります。しかし逆に身を滅ぼすことも。根源的な問題を秘めていると思います。
学芸会を見せられた感じ。
後に、‘“尾道三部作”の二作目’と言われるようになったけど、劇場公開時は‘三部作’でもなんでもなかった。
“転校生”に続いて大林宣彦監督が自分の出身地で撮ったから、‘尾道シリーズ第二弾’ではあったが。
原田知世の劇場映画デビュー作で、演技は論外。
これで日本アカデミー賞の新人俳優賞を獲ったということが意味するのは、この年はろくな新人がいなかったということか、もしくは、日本アカデミー賞自体がろくな賞ではないということだ。
大林監督は相手役の高柳良一に棒読みセリフを命じたらしいが、それが本当だとしたら、その意図はわからないし、それは完全な失敗だった。
即ち、この作品は監督の失敗作だ。