渥美清
車寅次郎
宮崎を舞台に、寅次郎と甥の満男のそれぞれの恋の行方を描く「男はつらいよ」シリーズ第45作。スタッフ、キャストは前作「男はつらいよ 寅次郎の告白」とほぼ同じメンバーで、監督・原作・脚本は山田洋次、共同脚本は朝間義隆、撮影は高羽哲夫と花田三史が担当。
※結末の記載を含むものもあります。
秋風の漂う頃、旅から旅のフーテンの寅こと車寅次郎は九州・宮崎のある港町で、“髪結いの亭主”よろしく理髪店の女店主・蝶子のもとに居候することになった。一方、寅の故郷、葛飾・柴又では、東京のレコード店に就職した泉が、休み前になると満男の家に遊びに行き、さながら家族のように過ごしていた。そんな泉は高校時代の親友の結婚式で宮崎に出かけ、偶然、寅に出会う。久しぶりの再会に喜ぶ2人だったが、そこへ蝶子がやって来て、大あわてした寅は足をくじいてしまう。泉から電話でそのことを聞いた満男は、大急ぎで宮崎へ。その慌てようにさくらたちは大騒ぎとなるが、満男が急いだのはもっぱら泉に会いたいからだった。宮崎に着いた彼を迎えに来たのは泉だけでなく、蝶子の弟で漁師の竜介も一緒だった。泉が竜介と仲良くしている様子に満男はふくれるが、竜介にはちゃんと許婚がいることが分かると、とたんに元気を取り戻す。こうして彼らはしばしの楽しい日々を過ごすが、いざ満男と泉が帰るという日、寅も一緒に帰ると言い出し、蝶子は怒ってしまう。蝶子も寅のことが好きになっていたのだった。久しぶりに柴又に戻ってきた寅が相変わらず社長と喧嘩したりしている頃、名古屋で働く泉の母親・礼子が入院することになり、泉は東京の勤め先をやめ、名古屋に向かうことを決心する。新幹線のホームまで見送りにいった満男は、離れたくない思いをかみしめ、泉を励まして別れる。そんな満男の成長を見届けながら、寅はまた旅に出るのだった。
車寅次郎
さくら
蝶子
竜介
竜造
つね
社長
源公
ポンシュウ
御前様
博
礼子
満男
泉
監督、原作、脚本
製作
プロデューサー
プロデューサー
脚本
撮影
撮影
音楽
美術
録音
編集
照明
スチール
助監督
[c]キネマ旬報社
本作品では、もう泉(後藤久美子)は大人なのに対し、親のすねをかじって生活している満男(吉岡秀隆)が未熟なのですが、本人らは、全然気がついていません。後の作品を知っているからこそ、そのあたりが、シリーズものの醍醐味です。
理髪師(蝶子)の下に、突然、十数年前に訪れプロポーズした、その男性が、どのような氏素性かわからないこと、おそらくその男性と蝶子が結婚したであろうに、あえてそのことを明示しないこと、深みがある作品です。
御前さま(笠智衆)が、本作品を持って姿を消します。(上映次のの年の1993年に亡くなりました。)昭和の映画史の上での貴重な方です。合掌。なお、本作品後も、御前さまはいることになっています。