マリリン・バーンズ
Sally
モダンホラーの原点としてリメイクもされた鬼才トビー・フーパー監督のデビュー作となる傑作ホラー。残虐な殺人鬼レザーフェイスの電動ノコギリが若者たちに襲いかかる。
※結末の記載を含むものもあります。
猛暑のテキサスをワゴン車でドライブするサリーら5人は、サリーが幼少期を過ごした屋敷へ。到着早々、暑さをしのごうと川へ泳ぎに出かけた2人が謎の怪人レザーフェイスに惨殺され、他の3人にも魔の手が忍び寄る。
Sally
Jery
Franklin
Old_Man
Leafher_Face
Grandfather
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アメリカン・ニューシネマの全盛期、後に「ポルターガイスト」を撮ったトビー・フーパー監督が新人の頃に僅か14万ドルといった日本のATGもびっくりの低予算で撮り上げたバイオレンス・ホラー映画の傑作です。舞台は真夏の炎天下のテキサス。ワゴン車に乗ってドライブ旅行をエンジョイする若者グループが、狂気の殺人一家に遭遇してしまう物語ですが、原題は“テキサス・チェーンソー虐殺事件”であり、アルフレッド・ヒッチコック監督の名作「サイコ」と同じ実在の殺人鬼のエド・ゲインの犯罪を原案にしています。
「悪魔のいけにえ」に登場する人肉マスクを被ったレザーフェイスは「エルム街の悪夢」のフレディや「13日の金曜日」のジェイソン同様にサイコキラーとして有名です。ラストシーンではチェーンソーを握ったレザーフェイスの執拗な追跡を逃れる為に荒野を逃げ回るヒロインが長時間に渡って撮影されていますが、これは本当に怖かった思いをした人が多くいたのではと思います。後のスプラッタムービーの魁と語られる本作品ですが、実際に血飛沫が飛び散るシーンは殆どなく、フーバー監督のダイナミックでありながら、時には驚くべきデリケートな演出の妙が得体の知れない恐怖の源泉になっています。
そしてホラー映画の範疇にカテゴライズするのが躊躇されるレザーフェイスが朝焼けのハイウェイでダンスを舞うラストシーンの美しい映像は見事なのです。モダンホラーの傑作として推薦します。
この作品が恐ろしいのは、徹頭徹尾被害者目線で描かれていること。
被害者はなにが起こったのかわからないままにブッタ斬られ、吊るされ、と大変なことになってしまう。
ガソリンスタンドで「飼われて」いる、主人が立ち上がったら車の窓を拭くように「調教」されている男のコミカルな姿でさえ、底知れぬ恐怖を感じさせる。
30年近く前に「出会って」以来、未だにこの作品を超えるホラー映画にでくわしたことはない。
だから自分にとっては原点であり頂点の作品。