チアン・ウェン
シャオ
「至福のとき」の名匠チャン・イーモウ監督による日本未公開作。現代の都会を舞台に、対照的な2人の男が巻き起こす珍騒動をスタイリッシュなカメラワークで描いた痛快作だ。
※結末の記載を含むものもあります。
北京で暮らす露天商シャオ。別れた女アンホンに復縁を迫っていたある日、見知らぬ男たちに襲われる。その場に居合わせた男チャンの新品のパソコンを壊してしまったことから、チャンとの奇妙な関係が始まるのだった。
シャオ
Lao Zhang
An Hong
JunK-peddler
Policeman
Poet reader
[c]キネマ旬報社
チャン・イーモウ監督の作品群の中でも、かなりの異色作。
本作の前までは農村を舞台の映画を作っていたチャン・イーモウ監督が初めて大都会=北京を舞台に作った映画だが、手持ちカメラによる撮影含めて実験的作品に見えた。
この映画の主演女優チュイ・インという人がとても綺麗でビックリ!映画観終わって調べたら、なんとスーパーモデルだったらしい。黄色のミニスカートで都会を自転車で突っ走る姿を追うカメラも見事だったが、パンチラなりそうなのでドキドキした(笑)…パンチラはありませんでしたw
物語は、ある男(チアン・ウェン)が別れた美人女性=赤紅(チュイ・イン)を追いかけるところから始まるが、コレ、かなりのストーカー行為っぽい。
しかも、女性を見失ったマンションの真ん中で女性の名前を叫ぶ場面があり、男は自分で叫ぶのではなく、金で雇った通りがかりの人達に叫ばせる。廃品回収業の男(チャン・イーモウが自作出演!)などに叫ばせるのだが、男の指示「君のことを、眠れないほど好きだ!」と叫べ、が「君と寝たいほど好きだ!」と叫ぶギャグが面白い(笑)
この映画でも「♪GO WEST」(ペットショップボーイズ)が流れるが、この曲はジャ・ジャンクー監督の『山河ノスタルジア』でも印象的に使われていた。中国ではこの曲が流行っていたのだろうか…。
チャン・イーモウ監督のインタビューもDVD特典映像で収録されていたが、「本当はこの映画、ブラックユーモアを描きたくて、バッドエンドで終わらせたかったのだが、(中国の)公開認可がおりないので結末を変えた」とのこと。→同じことが「キネ旬ムック ディレクターズ・ファイル チャン・イーモウ」という本にも書かれていた。
この映画の原題『有話好好説』というのは「ゆっくり話そうよ」という意味らしいが、邦題の『キープ・クール』もニュアンス的にはさほど離れてはいない感じである。
まぁ、この邦題は、美人女優チュイ・インがクールな面を見せるので、こちらの雰囲気も出していると思う。
原題の「有話好好説」とは、話がもつれたときなどに使う「落ち着いてゆっくり話しましょう」という意味の慣用句だそうです。日本語では「話せば判る」と言ったところでしょうか。
ところが主人公は、しゃべればしゃべるほど誤解を生み、自分がとる行動とそれが引き起こす結果がコントロールできずに、泥沼にはまってゆきます。
私は、SABU監督の「アンラッキーモンキー」や「ポストマンブルース」と似てると思いました。
ということは狂気の主人公を演じる姜文=堤真一ということに・・・似てると言えば言えなくもない・・・か。通りすがりに巻き込まれてしまう気の弱そうな男は、まさに田口トモロヲですね。
ブラックユーモアたっぷりのコメディというなら、最後の反省文のような手紙は不要だったと思います。「5,6,7,8」とカウントダウン(?)するところの暗転で終わっちゃって十分です。
全編手持ちカメラの映像で船酔いしたみたいでした。陳凱歌もクリストファードイルを使ったこと有るし、張芸謀もやってみたかったんでしょうね。でもやりすぎ。
と、私は思います。
大好きな監督で、あらかた観ましたが
華やかな色彩と、激情を画面に写し取る作風が、今作はカメラ自体が激しい心情を表現していて、目が回りそう…
しかし、いつも感心するのは、目の届かない様な、気にも留めない様なテーマを、徹底的に掘り下げて見せてくれる手腕はさすがだと思う