春の雪|MOVIE WALKER PRESS
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春の雪

2005年10月29日公開,129分
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三島由紀夫の遺作を「北の零年」の行定勲監督、妻夫木聡&竹内結子共演で映画化。大正初期の貴族社会を背景に、運命に奔ろうされる男女の悲恋を描く純愛物語だ。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

侯爵家の息子・清顕と伯爵家の令嬢・聡子は互いに恋心を抱いていた。だが不器用な2人はすれ違い、やがて聡子は宮家の王子と婚約。ようやく彼女への深い愛に気づいた清顕は、聡子と密会を重ねる。

作品データ

製作年
2005年
製作国
日本
配給
東宝
上映時間
129分

[c]2005「春の雪」製作委員会 [c]キネマ旬報社

  • rikoriko2255

    やまひで

    1.0
    2007/5/22

     庭に立つ太い古木。数百年の歴史の重みを感じさせる。そこへ、清々しい女の子の声が聞こえる。百人一首をやっている。相手は男の子で、この年齢の時分に相応しく、女の子の方がお姉さんぶっている。微笑ましい光景である。そこからカメラが後方にスーッと曳いていく。すると、画面の右から別のシーンが流れ込んでくる。絶妙なタイミングである。これは行けると思わせる。遊んでいる女の子の父親とその乳母が登場。これで、一挙に大人の、しかも公家の世界の陰険・陰湿な企みがめぐらされる。伝統のある公家の綾倉伯爵の、明治になってからの成り上がりだろう、松枝公爵に対する妬みであろう。やがて結婚することになるであろう、今遊んでいる二人の子供。その時には、わが娘の処女は他の男に呉れてやれと、綾倉伯爵は乳母に命じ、その暗い情熱の炊きつけられたように二人は情事へと絡み付くのであった。
     中々のいい出だしと、思いきや、次のシーンが良くない。ミス・キャストである。穏やかな日の光の中に寝転びながら、ある若者が自分の生活に対する贅沢な不満を述べいている、自分は飽き飽きしていると。この、自ら働くことを知らない、それでいてすべての物欲は満たされている、金持ちの贅沢な悩みである。しかし、このアンニュイの感覚を口に出せるものは、また、その精神が高くなければ、嫌味になる。その精神の高貴さを感じさせる顔立ちをこの役をやっている役者は残念ながら持っていないのである。だから、言うことの端からその言葉が嘘に聞こえる。
     この感じを裏切らないように、ストーリーは、自分の気持ちに素直になれない天邪鬼が自分で招いた悲劇へと展開する。あるドイツ人が日本のことについて書いた本のタイトルを『こどもの国、日本』と名付けているが、正にこれは子供の恋愛ごっこで、こんなものを歴史の大舞台に乗せて、はい、百年の恋でございますといっても、誰も信用しないだろう。
     映画の中盤に舞踏会のシーンがあり、監督としては、ヴィスコンティーの、あの歴史の荘重さを出したがっていたように見えたが、本物の重厚さに負けて、借り物の軽薄さが図らずも出てしまった。やはりビデオ・クリップ畑の監督には歴史物は荷が重すぎたかもしれない。ラスト・シーンの安っぽい神秘主義も、原作に飲み込まれた結果とも言えるだろう。
     その分、ストーリーの展開の鍵を握る乳母の役をやった大楠道代の存在感ある役作りに賞賛を送る。

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