ジェームズ・スペイダー
Graham
バトン・ルージュに住む夫婦と妻の妹、そして突然の訪問客である夫の友人の4人の姿を通して人間の真実の本質を描く89年カンヌ映画祭グランプリ作品。エグゼクティヴ・プロデューサーはナンシー・テネンボームとニック・ウェシュラー、モーガン・メイソン、製作はロバート・ニューマイヤーとジョン・ハーディ、監督・脚本・編集は本作品が長篇デビュー作になるスティーヴン・ソダーバーグ、撮影はウォルト・ロイド、音楽はクリフ・マルティネスが担当。出演はジェームズ・スペイダー(同映画祭主演男優賞)、アンディ・マクドウェルほか。
※結末の記載を含むものもあります。
一見何の不自由もない幸せそうなカップル--夫のジョン(ピーター・ギャラガー)は大手法律事務所に勤める有能な弁護士、妻のアン(アンディ・マクドウェル)は夫の希望を受け入れ専業主婦に--しかしアンはかかりつけの精神科医(ロン・ヴォーター)に日常の些細な悩みを訴え、一方のジョンは貞淑すぎる妻とは正反対なアンの妹シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と秘かに肉体関係を結んでいた。そんなある日、ジョンの大学時代の友人グレアム(ジェームズ・スペイダー)が家を訪ねて来、アンは彼を親切に迎え入れるが、同時に彼の不思議な魅力を感じてもいた。翌日グレアムのアパート探しを手伝ったアンは、彼が不能であることを聞かされ驚くが、やがて彼の部屋にあるヴィデオ・テープを見つけ、その内容が自分のセックス観について語った女性たちをグレアム自身が撮ったものであることを知り、急に恐れを感じるのだった。そんな折シンシアがグレアムのヴィデオの前に立ち、初体験からジョンとの情事までを赤裸々に語った。後にその事を妹から聞かされたアンは、激しい嫌悪感と共に嫉妬を抱く。そして寝室でシンシアのイヤリングを見つけたことでジョンの浮気を確信したアンは、怒りをあらわにして家を飛び出していた。気がつくと彼女は、グレアムのヴィデオの前で告白を始めていた。家に帰ったアンは夫に離婚を切り出し、グレアムのヴィデオに出たことを告げた。怒ったジョンはグレアムのアパートに駆けつけ、彼を追い出して妻のヴィデオを見る。そしてその時初めて、アンの真実の思い、またグレアムの変貌の理由を知るのだった。帰り際ジョンはグレアムに、彼の昔の恋人エリザベスと関係があったことを告げた。心の中で何かが弾けたグレアムは、ふっきれたかのように次々とヴィデオ・テープを壊し始めるのだった。数日後アンとグレアムは、2人で新たな生活を始めようとしていた……。
Graham
Ann
John
Cynthia
Therapist
Barfly
Girl on Tape
製作総指揮
製作総指揮
製作総指揮
製作
製作
監督、脚本、編集
撮影
音楽
美術
字幕
[c]キネマ旬報社
タイトルからは「いかがわしそうな雰囲気ただよう映画かなぁ~」と公開時から思っていたが、ようやく鑑賞…(汗)
内容は非常に普遍的なるものであり、ある夫妻と妻の妹、そして旧友の男、という4人の登場人物だけで、これだけ見事な映画を作り上げてしまうソダーバーグ監督の力量に圧倒された。
旧友の男グレアムが、ある夫婦の家を訪れたことから、人間関係が歪んでいくあたりが素晴らしい。
映画は観てみないとタイトルの正確な意味は解らないのは当然であるが、傑作である。
才能溢れる催眠術師ならば小道具に凝る必要はありません。二言三言囁くだけで相手は眠りに堕ちてしまうでしょう。そんな才能を当事若干26歳の新人監督だったスティーブン・ソーダバーグは持ち合わせていました。「セックスと嘘とビデオテープ」は心の内側をテーマにした心理サスペンス劇です。最初に登場するのはアンディ・マクダウェルが演じるアン、結婚生活は順調ですが、あのとき夫に体を触れられるのが嫌だと精神科医に話します。ピーター・ギャラガーが演じるその夫ジョンは、アンの妹のシンシアと愛人関係にあるのです。
そんな愛憎劇の真っ只中に、ジョンの旧友グレアムが登場します。女心をくすぐり、アンをトリコにしますが、性生活を告白する女性をビデオに撮るのが趣味だと語ります。題名に惑わされてはいけません、この映画にはセックスシーンはワンカットも登場しません。抑制の利いたカメラワークと控えめな言い回しが、セックスをめぐる不協和音に満ちた四重奏を見事に奏でています。ソーダバーグ監督は、人間同士の睦まじさを芸術の域にまで高めたのです。