石橋静河、15歳で訪れた転機「危機感を覚えて飛びだした」ひたむきな女優道のスタートラインとは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
石橋静河、15歳で訪れた転機「危機感を覚えて飛びだした」ひたむきな女優道のスタートラインとは?

インタビュー

石橋静河、15歳で訪れた転機「危機感を覚えて飛びだした」ひたむきな女優道のスタートラインとは?

転機や女優業へのひたむきな想いを明かした石橋静河
転機や女優業へのひたむきな想いを明かした石橋静河撮影/野崎航正

凛々しさと柔らかさが同居する、特別な存在感を放つ女優の石橋静河。第1回木下グループ新人監督賞の準グランプリ受賞作品を映画化した『人数の町』(公開中)では、自らの意志を貫こうとする女性を好演。また新たな扉を開いた。両親とも俳優という家庭に育ち、「小さなころは『親の七光りとも言われてしまうから、私はお芝居をやらない』と言っていた」と抗った過去もあるそうだが、15歳の留学経験をきっかけに、「わがままだった」という自身に大きな変化が起きたという。本作で初共演した中村倫也の印象をはじめ、女優として歩み始めるまでの転機を語ってもらった。

謎の町を舞台に描くディストピア・ミステリー『人数の町』
謎の町を舞台に描くディストピア・ミステリー『人数の町』[c]2020「人数の町」製作委員会

荒木伸二監督による初長編映画となる本作。借金取りに追われていた主人公の蒼山(中村)は、ある日「居場所を用意してやる」というヒゲ面の男に誘われて奇妙な町にやって来る。そこでは簡単な労働と引き換えに衣食住が保証され、町の住人たちは深く考えずにそれらの労働を受け入れていた…。不思議な町を舞台に、人間が“人数”としてしか認知されない恐ろしさが浮き彫りになる、ディストピア・ミステリーだ。

「コロナ禍では、また違う感想を抱いた」

「いまの時代ともリンクする気がする」と映画の魅力を語る
「いまの時代ともリンクする気がする」と映画の魅力を語る撮影/野崎航正

脚本も手掛けた荒木監督と話し、「監督のやりたいこと、アイデアがものすごく明確でした」と発想に大いに興味を惹かれたという石橋。「これまでの日本映画にはあまりないような、シュールでちょっと笑える部分もありながら、それがホラー的な怖さにつながるような作品になると感じました。そういった作品はやったことがありませんし、ぜひやってみたい。そして私自身、この映画を観てみたいと思いました」とワクワクしながら飛び込んだ。

ファンタジーでありながら、現実とリンクしていくような恐ろしさがある。石橋は「人間が人数としてしかカウントされない町なんて、嫌だな、怖いなと感じました」と町の印象を語りつつ、「コロナ禍になる前に完成した映画を観た印象と、コロナ禍で観た印象では、また違った感想が生まれた。そこがまたおもしろかった」と明かす。「いまの時代を生きるうえでは『今後どうなってしまうの?』と感じることもあって。本作の描く、どうなるか先がわからないという“得体の知れない怖さ”は、いまの時代ともリンクする気がしました」。

「危機感を覚えて勇気をふるった。15歳の留学経験は大きな転機」

留学先でたくさんのことを学んだという
留学先でたくさんのことを学んだという撮影/野崎航正

石橋演じる紅子は、行方不明になった妹を探すために町を訪れる女性。蒼山と共に町の真相に迫っていく役どころだ。町の住人たちが、町のルールに流され、深く考えずに労働を受け入れていく一方、紅子は「この町はおかしい」という違和感を持ち、自らの意志をしっかりと貫こうとする。石橋は「脚本を読んでいる時も『この町はおかしい』と紅子目線で読んでいましたし、その自分の素直な感覚を役に注ぎ込もうと思っていました」と紅子に心を寄せる。

石橋自身、紅子のように「『みんながこうしているから、私もそうしよう』とはあまり考えないタイプ」だと自己分析。「何事も自分で決めないと嫌だなと思います。そうしないと、その結果がよくなかった時に『だって、みんなが言っていたから…』と誰かのせいにしてしまいそうですよね。それは悔しい。自分で『よし!私はこうしよう』と決めて、もしそれが間違っていたら『私、間違っちゃいました!』と言えばいい(笑)。自分で決められることは、自分で決めたいですね」と話す。

自らの意志をしっかりと貫こうとする紅子
自らの意志をしっかりと貫こうとする紅子[c]2020「人数の町」製作委員会

凛としたたたずまいも美しい彼女だが、「自分で決めたい」という心の声を聞いても、芯の強さが感じられる。その強さの原点は、15歳で経験した留学時代にあると告白する。「15歳でバレエを学ぶためにアメリカに留学して。アメリカでは『私はこう思う』と主張しないと、すべてに置いていかれてしまうんです。例えば『このあと、どこかに行こう』となると、日本ならば『あなたも行く?』と聞いてくれますよね。でもそれを待っていて、なにも言わなかったら『この子は行きたくないんだな』と思われて、置いていかれてしまう。その経験は、自分のなかで大きなものとして残っています」。

留学は「間違いなく自分の転機」だというが、当時中学校3年生の石橋はなぜその決断をしたのだろうか? すると、「危機感ですね」とふわりと微笑む。「留学するまでは、家の近所が私の世界のすべてでした。末っ子で、家族からも大事にされて幸せな子ども時代。でも恵まれすぎていて、ヤバいんじゃないかと勝手にいろいろと想像を巡らせて(笑)。このままでは、わがままし放題の大人になってしまう。ここから飛び出さないといけないと思いました」と勇気をふるった。

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