杉野遥亮が見つめる、“いまの自分”「喜んでもらうことにやり甲斐を感じる」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
杉野遥亮が見つめる、“いまの自分”「喜んでもらうことにやり甲斐を感じる」

インタビュー

杉野遥亮が見つめる、“いまの自分”「喜んでもらうことにやり甲斐を感じる」

映画『キセキ-あの日のソビト-』(17)で俳優デビューして以来、ぐんぐん力をつけ、いまやドラマや映画で主演を務めるほどの人気俳優となった杉野遥亮。そんな杉野が、2017年に公開された『覆面系ノイズ』で共演した中条あやみと、『水上のフライト』(公開中)で久々に共演している。
杉野が扮するのは、事故で下半身が不自由となった遥(中条)がパラカヌーに挑む夢を、裏方で支える義肢装具士の颯太。「『覆面系ノイズ』の頃は、それこそ右も左も分からなかったから…」と苦笑する杉野が、本作で感じた手ごたえとは――。本作に込めた想いを聞いた。

「中条さんが真ん中で頑張っているから、周りの僕らも頑張れた」

走り高跳びで世界を目指していたヒロインの遥は、不慮の事故で下半身が不自由になり、将来の夢を絶たれてしまう。絶望や葛藤を潜り抜けながら、パラカヌーと出会った遥は、再びパラカヌーで世界を目指す夢に向かい始める。杉野は、「カヌーの練習をはじめ、中条さんが真ん中で頑張っているからこそ、周りの僕らも頑張れた」と、遥を演じる中条の姿勢から大いに刺激を受けたようだ。
「前回共演した『覆面系ノイズ』では、歌の特訓をされていましたし、本作ではカヌーの練習がありましたが、中条さんは常にポジティブ。多分、人前で弱音を吐いたり、ネガティブなことを発したりするのが嫌いなんだと思いますが、とにかく目の前のことを懸命に頑張るんですよ。中条さん自身が、遥にちょっとリンクしているところがあって、そこが魅力でもあり、すごく心強かったです」。

ヒロインの葛藤と成長を見事に体現した中条
ヒロインの葛藤と成長を見事に体現した中条[c]2020 映画「水上のフライト」製作委員会

最初こそ、遥と颯太はぶつかり合うが、次第に心を許し始める。遥と颯太の楽しい掛け合いを、「そうそう、確か合宿所あたりのシーンはアドリブでした」と目を細めて思い返す。
「相手が中条さんだから、自然と出来たのかな、と思います。中条さん自身、自分を取り繕う人じゃないから、僕もなにかを取り繕わずにいられた、というか。実は共演はたった2度目ですが、再会してすぐに距離がすごく近くなれた気がしました。本来は僕、あまりアドリブが得意じゃないんです。でも相手が中条さんなので、颯太としての気持ちや言葉がすんなり素直に出てきたんだと思います」。

「ちゃんと本質で繋がれる人がいる。人生それ以上にすばらしいことはない」

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撮影/河内彩 ヘアメイク:速水昭仁/スタイリスト:伊藤省吾

一度夢を絶たれた遥がふたたび新たな夢に向かうことが出来たのは、母親をはじめ本当に多くの人々の支えや背中を押してくれる手があったからこそ。もちろん杉野が扮する義肢装具士の颯太も、その一人だ。義肢装具士とは、あまり聞き慣れない職業でもある。
役作りについて杉野は、「パラカヌー競技を観たくらいで、前もってなにかを勉強したということはありません。ただ、義肢装具士というのは、実際にカヌーに乗る選手と一心同体というか、ある意味パートナーでもあるんだな、と感じました。あとはそこに気持ちを乗せただけ。装具士の颯太にとっては、遥が喜んでくれれば、颯太も自分のことのように喜べる。そういう関係値になっていく、というのがストーリーの一つの軸でもあると思いました」と語る。

杉野が“一つのストーリーの軸”と語るように、遥と颯太の関係性の変化が、観る者の心を絶妙にくすぐってくれる。それにしても2人が出会った頃は、互いに刺々しかったが…。
杉野は、「それこそ、その人自身が変われば、相手も変わっていく、という人間関係の変化ですよね。最初の頃の遥は人を寄せ付けない状態だったし、遥があのままだったら2人は交わらなかったはず。でも遥が変わったから、颯太も変わったわけで、それからは刺激し合う、とても大切な関係になっていったと思います。颯太も、遥の生きている姿を見て、自分をこじ開けられたような感覚だったんじゃないかな。遥に成長させてもらったというか」と、演じたからこそ感じられた“颯太としての感覚”を教えてくれた。

2人の距離感の変化も見どころのひとつ
2人の距離感の変化も見どころのひとつ[c]2020 映画「水上のフライト」製作委員会

中条と杉野、美女とイケメンが揃えば“恋愛方向”へ進みそうなものだが、安易にそうならないのが、本作の味わい深さでもある。杉野も「僕自身も、そこに好感を持ちました」と語る。
「確かに僕も“付き合うわけじゃないんだ”とは思いましたが(笑)、男女の恋愛ではなく、本質でつながれた大切な人の1人というのがいいな、と。遥は、母親、宮本コーチ、そして颯太と、本質でちゃんとつながれている人が3人もいる。人生においてそれ以上にすばらしいことがあるのか、と思いますし、それが遥の強みですよね。しかも僕の感覚からすると、恋愛って表面的なところから入って次第に深くなっていくイメージですが、遥と颯太は早い段階で相手の痛みを共有し、傷や弱い部分を知っていたと思うんです。それこそ恋愛云々以上に強い絆だな、と。まあ、颯太はきっと遥のことが好きだとは思いましたが(笑)」。

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