【今月の寅さん:2021年1月編】寅さんがウィーンへ旅立つ?満男と泉の恋も描かれる「男はつらいよ」シリーズ5作品が放送!

コラム

【今月の寅さん:2021年1月編】寅さんがウィーンへ旅立つ?満男と泉の恋も描かれる「男はつらいよ」シリーズ5作品が放送!

山田洋次監督の代表作で、渥美清演じる車寅次郎こと“寅さん”が、毎回温かい笑いと感動を届けてくれる国民的映画『男はつらいよ』。現在、BSテレ東ではシリーズ計49作品の4Kデジタル修復版を毎週土曜日に放送する「土曜は寅さん!4Kでらっくす」を展開中で、この1月には第39~43作が登場する。さて、今月の寅さんはどんな騒動を巻き起こすのか?

寅さんが孤独な少年と共に母親捜しの旅へ…『男はつらいよ 寅次郎物語』(87)<1月2日放送>

福島から秀吉という少年(伊藤祐一郎)が、寅次郎を訪ねて「とらや」にやって来る。寅次郎のテキヤ仲間だった父親が亡くなったため、位牌を持って施設から逃げて来たという。また、彼には産みの母親がいたがいまは行方知れずだった。寅次郎は秀吉を伴い、テキヤ仲間の情報をもとに、母親捜しの旅を始める。和歌山、そして奈良の吉野の旅館へとたどり着き、そこで旅の疲れからか秀吉が高熱を出してしまう。隣の部屋にいた隆子(秋吉久美子)が協力を申し出て、寅次郎と共に夜を徹しての看病をする。いつしか2人は、「とうさん」「かあさん」と呼び合うようになっていた。
寅さんが薄幸の少年のために旅を続け、その道中で様々な人々と出会い、親切心に触れる心温まる物語に。自身が渡世人であることを寅さんが強く意識しており、かかわった人たちの幸せのために一歩引いた行動をする姿が印象的。

寅さんと少年が母を捜して旅をする『男はつらいよ 寅次郎物語』
寅さんと少年が母を捜して旅をする『男はつらいよ 寅次郎物語』[c]1988 松竹株式会社

俵万智の句を引用した短歌文学の香り豊かな作品『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』(88)<1月9日放送>

信州小諸で知り合ったお婆さん(鈴木光枝)の家に泊まり、昔語りを聞く寅次郎。翌朝、医師の真知子(三田佳子)が、お婆さんを入院させるためにやって来る。重病のお婆さんは入院を嫌がったが、寅次郎の説得でなんとか応じ、御礼にと真知子の家に招待される。そこへ、東京の早稲田大学に通う姪の由紀(三田寛子)が訪ねて来て、彼女の趣味である短歌などで盛り上がる。未亡人の真知子は、寅次郎に最愛の夫の面影を見るのだった。
俵万智のベストセラー短歌集「サラダ記念日」を原作にした短歌文学の香り豊かな作品で、随所に俵の句が引用されている。寅さんが早稲田大学で講義を受けるシーンもあり、実際の早大生がエキストラとして出演している。本作より、「本家とらや老舗」の屋号が「本家くるま菓子舗」、通称「くるまや」に改められた。

俵万智のベストセラー短歌集「サラダ記念日」を原作にした『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』
俵万智のベストセラー短歌集「サラダ記念日」を原作にした『男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日』[c]1989 松竹株式会社


日本を飛び出して寅さんが音楽の都、ウィーンへ!?『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(89)<1月16日放送>

線路で自殺を図ろうとしたサラリーマン、兵馬(柄本明)の胸の内を聞きやさしく励ます寅次郎。彼には音楽の都、オーストリアのウィーンへ行くという望みがあり、同行してほしいと誘われてしまう。断りきれず結局ウィーンにやって来た寅次郎は、絵画や文化に興味がないため退屈な日々を過ごす。そんな時、現地でガイドをしている久美子(竹下景子)と出会い、さらに金町出身のマダム(淡路恵子)とも知り合い、すっかり日本にいる気分に。寅次郎と日本の話に花を咲かせているうちに、久美子は捨ててしまったはずの郷愁の想いを募らせていく。
飛行機で「男はつらいよ」シリーズを観たウィーン市長の強い思いもあり、ウィーンでの撮影が実現。寅さんが海外に出たのはシリーズで初めて。しかし、ドナウ川を江戸川に見立て、神父を御前様と呼ぶなど、マイペースぶりは相変わらず。ヨーロッパと故郷との間で揺れるヒロインの久美子を三度目のマドンナ役となった竹下景子が好演する。

【写真を見る】寅さんがウィーンへ行く!『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』
【写真を見る】寅さんがウィーンへ行く!『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』[c]1989 松竹株式会社

寅さんの甥、満男の恋路の行方は?『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(89)<1月23日放送>

満男(吉岡秀隆)は浪人生となり、予備校通いの毎日。しかし、勉強には身が入らず、さくら(倍賞千恵子)や博(前田吟)を心配させていた。そこで、彼の悩みを聞くため、久しぶりに帰ってきた寅次郎が浅草の居酒屋へと連れ出し、2人で酒を酌み交わすことに。満男は高校時代の後輩、泉(後藤久美子)への恋心を募らせていたが、彼女は両親の離婚で転校してしまっていた。一目会いたさに名古屋、佐賀へとバイクを飛ばす満男。旅先で偶然にも寅次郎と再会し、2人で泉を訪ね、美しい叔母の寿子(檀ふみ)に迎えられるが、泉の叔父は教育者で…。
第27作『男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎』(81)から吉岡秀隆が演じてきた満男を主軸にすえた第42作。彼が恋する泉役には、“国民的美少女”の後藤久美子。本作から、寅さんは甥の満男の恋をコーチする役に回っている。

満男(吉岡秀隆)の泉(後藤久美子)への恋路を寅さんがコーチする『男はつらいよ ぼくの伯父さん』
満男(吉岡秀隆)の泉(後藤久美子)への恋路を寅さんがコーチする『男はつらいよ ぼくの伯父さん』[c]1987 松竹株式会社

満男と寅さん、それぞれの恋が描かれる『男はつらいよ 寅次郎の休日』(90)<1月30日放送>

満男は無事に大学への進学を果たす。そんなある日、泉が離婚して去った父、一男(寺尾聰)を訪ねて名古屋から上京してくる。ふたりで一男の勤め先である秋葉原の大型電気店を訪ねるが、すでに仕事を辞めて、大分県日田市に住んでいるという。諦めて名古屋へ戻ることにした泉を東京駅まで見送りに来た満男。しかし、泉が父を捜しに九州へ行くと告げたのを聞き、思わず新幹線に飛び乗ってしまう。若いふたりを追って、寅次郎は泉の母、礼子(夏木マリ)と共に寝台車で九州へ向かうのだった。
前作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』の一年後が舞台で、泉の父親の再婚を中心に“家族の幸せ”について問いかける作品に。満男と泉、寅さんと礼子の二組のカップルの恋が同時進行で展開。さくらと博の夫婦は、息子の満男のことで悩み、満男もまた大きな悩みを抱えている。現代の家族が抱える問題が、さくら夫婦を通じて描かれる。

寅さんが若いカップルを追って九州へ!『男はつらいよ 寅次郎の休日』
寅さんが若いカップルを追って九州へ!『男はつらいよ 寅次郎の休日』[c]1990 松竹株式会社

文/サンクレイオ翼

■「土曜は寅さん!4Kでらっくす」
毎週土曜18:30~ BSテレ東にて放送中
https://www.bs-tvtokyo.co.jp/cinema/tora-san4k.html