マイノリティに光を当てる…時代の流れを汲んだNetflixのフレッシュな青春モノ3作|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
マイノリティに光を当てる…時代の流れを汲んだNetflixのフレッシュな青春モノ3作

コラム

マイノリティに光を当てる…時代の流れを汲んだNetflixのフレッシュな青春モノ3作

ものすごいハイペースでオリジナルのコンテンツをリリースし続けているNetflix。その作品づくりのフットワークの軽さゆえ、刻一刻と変化し続ける社会の潮流を汲み取ったフレッシュな作品を輩出している。なかでも良作を多く生みだしているジャンルが青春モノだ。

スクールカーストにおける“ジョック”(体育会系で上位カーストに位置することが多い。日本で言う“陽キャ”“リア充”)や、“ナード”(コンピュータに詳しい「ギーク」や「ブレイン」などを含む“陰キャ”)などの典型にキャラクターを当てはめるのではなく、人種や性的指向といった部分に踏み込んでティーンの葛藤や成長を描いた現代ならではの作品が数多く登場しているのでチェックしていきたい。

多様な愛の形を提示する『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』

Netflix青春映画で昨年、傑作と話題になったのが、台湾系アメリカ人でレズビアンのアリス・ウー監督のパーソナルな経験が反映された『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』だ。白人が多く暮らし、保守的な価値観が根付いているアメリカの架空の田舎町、スクアヘミッシュ。そこに暮らす女子高生のエリーは唯一の中国系ということもあり校内では浮いた存在で、頭の良さを生かしレポートの代筆で小遣いを稼いでいるが、それ以外では他者と隔絶した日々を過ごしている。

そんなある日、万年補欠のアメフト部員ポールから学校一の美女アスターへのラブレターの代筆を頼まれることに。渋々引き受けたエリーは、誰にも分け隔てなく接するアスターの人柄や知的な面に惹かれていく一方、ポールとも友情を築き、三角関係のような板挟みの感情を覚えていくことに…。

アジア系の同性愛者の女子高生を主人公に据えるという、ひと昔前までは見られなかった設定に加え、物語も定番からかけ離れている本作。エリーが一つの愛にたどり着くまでを描くといったおとぎ話的なキラキラした物語ではなく、「愛とはなんなのか?」という誰しもが頭を悩ます普遍的な問いを模索していく姿が描かれる。異性愛や同性愛、友情にも近い愛など一つの型にはめ込まない様々な可能性が示されており、多様性に満ちた描き方に新しさを覚える一作だ。

型にはまらない同性愛者の姿をフレッシュに描く『ザ・プロム』

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【写真を見る】LGBTQにスポットを当てた『ザ・プロム』などNetflixの青春モノがアツい!Netflixオリジナル映画『ザ・プロム』は独占配信中

ザ・プロム』もまた、レズビアンの女子高生が登場する作品だ。インディアナ州の田舎町に暮らす同性愛者の女子高生エマは、異性同士のペアしか参加できないというルールによって、PTAから恋人を同伴してのプロムへの参加を拒否されてしまう。そんなニュースをSNSで偶然知ったブロードウェイ俳優たちは、彼女を助けることで、公演に失敗し落ちぶれた自分たちのイメージの挽回を図ろうと現地に乗り込んでいく。だが、エマや周囲の人々の思いに触れていくなかで、本当の人助けをしようと心を入れ替えていく。

ドラマ「glee/グリー」で知られ、自身もゲイを公言しているライアン・マーフィーが監督を務める本作。エマのほかにもブロードウェイ俳優のバリーらLGBTQの人々にスポットを当て、心のままに生きることの美しさやすばらしさをダンスや歌とともにポジティブに伝えていく。

そんな本作で新鮮なのがエマの人物描写だ。例えば、伝統的な価値観が色濃く残るプロムに対し、エマは純粋に恋人とダンスを楽しみたいという好意的なスタンスで向き合っている。マイノリティだから保守的なものを嫌うという描き方をではなく、彼女のパーソナリティをしっかりと反映している。また、エマが自らの性指向に悩むことなく(周囲の悪意に心を痛めることはあるが)振る舞っていることも、これまでのLGBTQを題材とした青春モノでは性指向や性自認に対する葛藤が描かれることが多かったゆえに、その先を描いているという点で印象的だ。


日系主人公の人間的な描かれ方が魅力の「ダッシュ&リリー」

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日系の女子高生が交換ノートを通じて愛を知っていく「ダッシュ&リリー」Netflixオリジナルドラマ「ダッシュ&リリー」は独占配信中

マイノリティの描き方のフレッシュさは、ドラマ「ダッシュ&リリー」からも感じ取ることができる。『レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語』(04)などで知られるブラッド・シルバーリング監督が手がける本作は、ニューヨークを舞台に、クリスマスが好きなリリーと嫌いなダッシュが相手を知らぬまま1冊のノートを通じて交流を続けていく物語だ。

恋に憧れる奥手な女子と皮肉屋で冷めたところのある男子の恋模様という王道のストーリーを新鮮なものにしているのが、主人公リリーが日系人だという点(演じるのは日系アメリカ人のミドリ・フランシス)。読書や歌うことを愛し、洋服を自作するアートな少女で、同世代の友だちは少ないが年上とつるみ、過去のトラウマから自分を変わり者と自認して行動を制限し…と、少々面倒なところもある複雑で人間的な性格の持ち主としてチャーミングに描かれている。

また、リリーの兄がゲイであり、そのことをリリーをはじめとする家族が受け入れているということや、リリーが子ども時代のいじめっ子男子に対し、いじめがどれだけ人生を変えるのかを説いて立ち向かうエンパワーメントな姿勢など、随所に現代的なポイントが感じられる作品となっている。

時代の流れを汲み取った作品を次々とリリースしているNetflix。この先も続々と配信されていくであろう新たな作品たちに埋もれてしまう前に、ぜひこれらをチェックしてみてほしい。

文/サンクレイオ翼

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