挫折からの再起、仲間との絆…『すばらしき世界』に通じる心温まる映画たち |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2021/1/25 16:30

挫折からの再起、仲間との絆…『すばらしき世界』に通じる心温まる映画たち

監督デビュー作『蛇イチゴ』(03)以降、国内外で数多くの映画賞を受賞し、日本映画界を代表する監督の一人となった西川美和が、初めて原案小説を題材に挑んだ『すばらしき世界』(2月11日公開)。名優、役所広司が主演を務め、刑務所から出所したばかりの元殺人犯の男が、人生の再スタートを切ろうと奔走する姿が描かれる。現代社会の光と影をあぶり出す物語が展開される一方で、主人公の泥臭い生き様や、主人公を支える人々との交流が観る者の胸を熱くさせる…。そんな本作が提示するメッセージを、同様に「リスタートへの前向きさ」や、「人と人との絆」をテーマにする作品をピックアップしながらひも解いていきたい。

人生の再スタートを切ろうとする男と、彼を取り巻く人々との交流を描く
人生の再スタートを切ろうとする男と、彼を取り巻く人々との交流を描く[c]佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

下町の片隅で暮らす三上正夫(役所)は、すぐカッとなるところはあるが、まっすぐな性格で、困っている人を放っておけない男。しかし彼は、人生の大半を刑務所で過ごした元殺人犯だった。なんとか人生の再スタートを切ろうと悪戦苦闘する三上に、若手テレビマンの津乃田(仲野太賀)と吉澤(長澤まさみ)がすり寄りネタにしようと目論むが、三上の過去と現在を追ううちに、思いもよらないものを目撃していく。

正反対の2人が強い絆をはぐくむ『最強のふたり』にも通じるバディ感

殺人の罪を犯し、13年も服役していた中年男性が主人公ということで意外に思うかもしれないが、本作はフランス映画『最強のふたり』(11)との共通性を感じさせる。障がいがあり、首から下が動かせないパリに住む大富豪フィリップ(フランソワ・クリュゼ)と、その介護人となったスラム街出身のドリス(オマール・シー)との交流がコミカルに描かれ、本国フランスはもちろん日本でも大ヒットした作品だ。

堅物の大富豪と陽気な貧困層の青年、一見正反対な2人がポジティブな影響を与え合い、かけがえのない友情を結んでいく。このようなバディが『すばらしき世界』では、役所演じる三上と、『泣く子はいねぇが』(公開中)での演技も高く評価された、仲野扮する小説家志望の津乃田という形で登場する。

頸髄損傷で体が不自由な大富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者との交流を描く『最強のふたり』
頸髄損傷で体が不自由な大富豪と、その介護人となった貧困層の移民の若者との交流を描く『最強のふたり』写真:SPLASH/アフロ

テレビの制作会社を辞めたばかりで、小説のテーマも決まらず生活が苦しい津乃田は、やり手のテレビプロデューサー、吉澤からの依頼で、三上の社会復帰をカメラに収めることに。最初は単なる取材対象としてしか見ておらず、理由はどうあれ殺人を犯した彼への偏見もあった津乃田。しかし、根は真面目で不器用なぐらいに正義感が強く、まっとうに生きようと悪戦苦闘する姿を追っているうちに、気持ちに変化が。心から三上を応援し、親身になって支えようと思い始める。そんな2人の関係性は、撮る者と撮られる者から、友人、そして疑似親子のような強いものへと変化していく。

「撮る者と撮られる者」という関係から徐々に絆が芽生えていく、三上(役所広司)と津乃田(仲野太賀)
「撮る者と撮られる者」という関係から徐々に絆が芽生えていく、三上(役所広司)と津乃田(仲野太賀)[c]佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

はみ出し者が懸命に生きる姿が相通ずる、『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

近年のバディもので言えば、米サイト「ロッテン・トマト」の集計によると批評家の95%から高評価を獲得している『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』(19)も押さえておきたい。

ダウン症の青年とはみ出し者との冒険を描く『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』
ダウン症の青年とはみ出し者との冒険を描く『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』[c]2019 PBF Movie, LLC. All Rights Reserved.

ダウン症の俳優、ザック・ゴッツァーゲンの「映画スターになりたい!」という夢を知ったタイラー・ニルソンとマイケル・シュワルツの両監督が、彼の願いを叶えるために制作した作品で、老人の養護施設に暮らすザック(ゴッツァーゲン)が、訳あって逃亡中のタイラー(ラブーフ)と出会い、ボートに乗って旅に出るという物語。2人の凸凹コンビぶりが笑いと感動を誘うのはもちろん、ハンディキャップを抱えた青年と孤独なはみ出し者が心を通わせ、知らない世界や新たな出会いを体験していく様子が、前向きになれる勇気をくれる。

『すばらしき世界』の三上もまた、すでに足を洗ったとはいえ、反社会的勢力に所属していた過去が足枷となって、社会から見放されてしまったような存在だ。しかしそれでも、「今度こそは」と顔を上げ、身元引受人の弁護士の夫(橋爪功)と、その妻(梶芽衣子)のやさしさに触れ、津乃田らとの出会いを通して、懸命に堅気の世界で生きようとする。

様々な人々との交流する三上の姿から、“人”と“社会”の在り方を考えさせられる
様々な人々との交流する三上の姿から、“人”と“社会”の在り方を考えさせられる[c]佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

刑務所で身につけた裁縫の技術を生かして、「剣道の防具を作ってみたい」と目を輝かせ、それが難しいとわかれば、ドライバーの職を得るために失効した運転免許証を取得しようと教習所に通い始めるなど、そのひたむきさに心打たれるはず。また、お世話になった刑務官と気さくに会話し、近所の人とも笑顔で挨拶を交わし、困っている人がいれば放っておけないといった、三上の人懐っこく実直な性格を観ているうちに、“人”と“社会”の在り方についての気づきも与えてくれるのだ。

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