「007」やマーベル作品など、ハリウッド大作の北米新公開日が続々発表!各スタジオの思惑は?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2021/1/28 21:00

「007」やマーベル作品など、ハリウッド大作の北米新公開日が続々発表!各スタジオの思惑は?

4月2日に公開が予定されていたキャリー・フクナガ監督の『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の新しい北米劇場公開日が、10月8日に決まった。ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じる「007」シリーズ最新作は当初2020年3月公開予定で、この1年で3度目の延期だ。

【写真を見る】待ちきれない…マーベル作品から大人気シリーズまで、公開を控えるハリウッド超大作ラインナップ
【写真を見る】待ちきれない…マーベル作品から大人気シリーズまで、公開を控えるハリウッド超大作ラインナップ[c]& TM 2020 MARVEL

このニュースが発表された1月21日から、各スタジオの2021年公開カレンダーが大きく変化している。まず、同じく10月8日に公開を予定していたソニー・ピクチャーズのダニエル・エスピノーサ監督作、ジャレッド・レト主演の『モービウス』は2022年1月21日に移動。「007」が抜けた4月2日には、もともと2月26日公開予定だった、ユニバーサル映画でボブ・オデンカーク主演のアクション『Nobody』が公開される。そのほかのユニバーサル映画作品では、トム・ハンクス主演のSF作品『Bios』が4月16日より8月13日へ、エドガー・ライト監督、アニヤ・テイラー・ジョイ主演の『Last Night In Soho』が4月23日より10月22日へ、マイケル・ベイ監督、ジェイク・ギレンホール主演の『Ambulance』の公開日は2022年2月18日に決定した。

『モービウス』を2022年に移動したソニー・ピクチャーズは、2月5日公開予定のカミラ・カベロ主演『Cinderella』を7月16日に、4月2日公開予定だった『ピーターラビット2/バーナバスの誘惑』を6月11日に、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』が6月11日より11月11日に、『Uncharted』が7月16日から2022年2月11日に移動となった。また、『スパイダーマン:スパイダーバース』(18)のフィル・ロードとクリス・ミラーによるアニメーション映画『The Mitchells vs. the Machines』の世界配信権をNetflixに売却している。

『キングスマン:ファースト・エージェント』は北米で夏に公開予定
『キングスマン:ファースト・エージェント』は北米で夏に公開予定[c]2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

ディズニーは『キングスマン:ファースト・エージェント』を3月12日公開から8月20日へ、3Dアニメーション映画『Ron’s Gone Wrong』は4月23日公開から10月22日公開へ、20世紀スタジオによるアニメーション映画『Bob's Burgers: The Movie』は4月9日公開から公開日未定となった。パラマウント映画は4月23日公開予定だった『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』を9月17日公開に延期している。

アメリカおよび世界におけるパンデミックの状況を見ても、これから数か月の間に状況が劇的に変化するとは考えにくい。アメリカの現状でいうと、国内の映画館の約4割のみが営業中で、ワクチン摂取も一部では始まっているが、感染抑制、集団免疫ができるまで、まだしばらく時間がかかると見られている。公開延期はそういった外的要因と、各スタジオの経営判断によるものだ。
スタジオのなかでも劇場公開に積極的なユニバーサル映画は、AMCやCinemarkといったシネコンチェーンとの間で、劇場公開日から最短で17日間でPVOD(有料配信)へ移行可能となる契約を結んでいる。今年公開予定の全作品を劇場公開と同時にHBO Maxで配信するワーナー・ブラザースも同様に、配信への移行期間を短縮することで劇場公開を保っている。パラマウント映画の親会社であるバイアコムCBSは、3月4日に北米で展開している定額制ストリーミング・サービス「CBSオール・アクセス」をアップグレードし「パラマウント・プラス」を誕生させる。現時点ではパラマウント映画作品の扱いは発表されていないが、ワーナーのHBO Max、ディズニーのDisney+、Huluと同じような位置付けになると考えられる。

『ブラック・ウィドウ』は5月8日北米公開予定
『ブラック・ウィドウ』は5月8日北米公開予定[c]Marvel Studios 2020

現在のところ、5月8日公開予定のディズニー作品『ブラック・ウィドウ』、5月28日公開予定のユニバーサル映画作品『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』といったスタジオのテントポール作品(収益の屋台骨となる作品)の延期は発表されていない。テントポール作品はスタジオの1年間の収益構造を支える作品で、そのため興行成績の予想が立てやすいヒットシリーズや、大きなファンダムを抱えるコミック原作映画などが多い。スタジオは莫大な製作費と宣伝費をかけたテントポール作品をどのタイミングで、そしてどの形態で公開するかに頭を悩ませている。
ユニバーサルとAMC/Cinemarkの間で交わされている“17日間ルール”は、公開初週末の興行成績が5000万ドル(約52億円)を超えた場合は適応されない。「ワイルド・スピード」シリーズの前作『ワイルド・スピード ICE BREAK』(17)は、公開初週に北米だけで約9800万ドル(約101億円)、全世界最終興行成績は約12億3600万ドル(約1282億円)を稼ぎ出している。公開延期が続くのは、大きな収益をあげるポテンシャルのある大作映画を、簡単に配信送りにできない事情があるからだ。

ワーナー・ブラザースは、今年公開の作品を劇場公開と同時にストリーミング・サービスHBO Maxで配信
ワーナー・ブラザースは、今年公開の作品を劇場公開と同時にストリーミング・サービスHBO Maxで配信[c] and TM 2021. Warner Media, LLC. All Rights Reserved. All trademarks are the property of their respective owners.

そして、ディズニーとワーナー・ブラザースのストリーミング・サービスの現状認識にも違いがある。会員数を増やすことを命題としているHBO Maxは、毎月のように新作映画をストリーミングに投下し、2021年は劇場配給収入よりもプラットフォームのポジション獲りを選んだ。他方、すでに堅調な会員数増加を得ているDisney+にとって、テントポール作の『ブラック・ウィドウ』を起爆剤として投入するメリットはあまり大きくない。コアなマーベル・ファンはすでにDisney+に加入していると考えられるのと、世界興行収入約28億ドル(約2903億円)という、世界歴代1位の記録を持つ『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)の次のフェーズとなる、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)最新作は、劇場公開すれば世界中で大ヒットすることは間違いない。度重なる話題作の公開延期や配信への移行には、こうした各スタジオの思惑と経営判断が影響している。
 
文/平井 伊都子

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