『ズーム/見えない参加者』俊英監督が、『樹海村』清水崇監督と語り合った、ホラーへの熱い想い|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ズーム/見えない参加者』俊英監督が、『樹海村』清水崇監督と語り合った、ホラーへの熱い想い

インタビュー

『ズーム/見えない参加者』俊英監督が、『樹海村』清水崇監督と語り合った、ホラーへの熱い想い

コロナ禍によるリモートワークの推進によって、一気にその知名度を増したオンラインミーティングツール「Zoom」は、ビジネス以外にもオンライン上での飲み会などのコミュニケーションに用いられ、すっかり“新しい生活様式”になくてはならないものとなりつつある。このツールを使って、死者と交信する儀式“交霊会”を行なう若者たちの姿を描いた異色のホラー映画『ズーム/見えない参加者』が現在公開中だ。

『ズーム/見えない参加者』は現在公開中!
『ズーム/見えない参加者』は現在公開中![c]Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020

MOVIE WALKER PRESSでは、同作を手掛けた25歳の俊英ロブ・サヴェッジ監督と、彼が多大なる影響を受けたというJホラー映画の名手で、最新作『樹海村』(2月5日公開)が控える清水崇監督による“日英ホラー対談”をオンライン上で実施。Jホラーを築きあげた第一人者と、そのスピリットを受け継ぐ若手作家の貴重なやりとりを、『ズーム/見えない参加者』の制作秘話や、サヴェッジ監督のJホラーとの出会いから今後の展望を掘り下げた本記事、『樹海村』制作秘話と、清水監督のホラー映画に対するメソッドに迫る別稿とで、2週にわたってお届けする。

オンライン交霊会を行う若者たちに次々と奇妙な現象が…
オンライン交霊会を行う若者たちに次々と奇妙な現象が…[c]Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020

『ズーム/見えない参加者』の物語はロックダウン中のイギリスで、毎週オンライン上で会うことを約束した6人の友人グループの一人、ヘイリーが霊媒師のセイランをゲストとして招き“Zoom交霊会”をしようと提案することから始まる。軽い気持ちで準備を始めた参加者たちは、部屋の照明を落とし、ロウソクに灯をともして儀式を開始。しかしその矢先、参加者の一人が自殺した友人が現れたと主張。不穏な空気が流れ始めるなか、次々と奇妙な現象が参加者たちを襲っていくことに…。

17歳の若さで発表した初長編監督作『Strings』(12)で英国インディペンデント映画賞レイダンス賞を受賞した逸材、サヴェッジ監督が友人たちとのプライベートなオンライン飲み会で起こした“いたずら”に端を発した本作。その様子がサヴェッジ監督のSNSに投稿されるや瞬く間に世界中に拡散され、アメリカ最大のホラー映画配信サービス「Shudder」の目に留まり映画化が決定。全編Zoomによる画期的な撮影方法でロックダウン中の12週間で製作された。

2020年7月に北米とイギリス、アイルランドで配信されるや各メディアから絶賛を浴び、アメリカのレビュー集積・集計サイトである「ロッテントマト」では作品を鑑賞した批評家全員から好意的なレビューが寄せられる大旋風。さらに『ゲット・アウト』(17)などで知られる「ブラムハウス・プロダクション」を率いるジェイソン・ブラムからも熱烈な賛辞が贈られたほど。

「ホラー映画で大事なことは『どこまで見せるか、見せないか』」(清水)

ロブ・サヴェッジ監督はJホラー作品から多大な影響を受けたという
ロブ・サヴェッジ監督はJホラー作品から多大な影響を受けたという[c]Shadowhouse Films and Boo-Urns 2020

この日サヴェッジ監督は、“互いの作品を事前に鑑賞したうえで臨む”という約束を守れず、清水監督の新作『樹海村』を前半までしか鑑賞できていない状態だったが、清水監督に承知いただいたうえで対談がスタートした。

清水「『ズーム』を観させてもらいましたが、登場人物たちのいる背景がそれぞれ違っていることやカメラを各々が芝居のなかで動かすことを上手く活かしていて、計算され尽くされた作品だと思いました。それに欧米のホラー映画によくある観客を飽きさせないための単なるこけおどしもなく、リアリティある映像をじっくりと見せてくれる。とても自然にできているのはすごいと感じました」

サヴェッジ「ありがとうございます!清水監督にそのように言っていただけるなんて、本当に光栄なことです。学生時代に仲間たちと『呪怨』シリーズを観て、夜通し震えていたことが僕のホラー映画作りの原点でもあるので、いますごく興奮しています」

清水「若い時に『呪怨』を観て喜んでくれた人が、もう映画監督として活躍されていることを知ったのが、取り急ぎの今年イチ怖いです(笑)。サヴェッジ監督はどのようなきっかけで日本のホラーに興味を持ち始めたのですか?」

サヴェッジ「イギリスやアメリカのホラー映画にハマっていた時期に、友人から『日本のホラーが一番ハードコアだよ』と勧められたのがはじまりです。観てみたらものすごく怖くて…。『呪怨』や『リング』など、イギリスで観られる作品はほぼ全部観るぐらい没頭しました。いままで観たホラー映画で本当に怖かった作品は、全部Jホラーだと言ってもいいかもしれません」

清水「Jホラーのどういった点に魅力を感じたんでしょうか?」

サヴェッジ「例えて言うならば、自分のなかに徐々に入り込んで寄生していく怖さですかね。アメリカのホラーは驚かされる瞬間はたしかに怖いですけど、映画館を出る時にはもう忘れてしまっている。でも日本のホラーは記憶のなかに残って、しばらく引きずる怖さがあるのが魅力的に感じます」

清水「そこは僕も心掛けています。その場だけの脅かしよりも、如何にお客さんに“お土産”を持たせて帰ってもらえるか?帰宅後のふとした瞬間に思い出されてしまう感覚が怖さですからね。たしかにアメリカのホラーは表面的なものが多いですからね。アメリカでリメイクされた『ザ・リング』も日本のオリジナルと比べると、明らかに予算がかかっているのは間違いないのですが、わからない怖さがあった呪いのビデオが一種のアートみたいになってしまったり、サマラ(日本における貞子)の顔を見せ過ぎてしまったり、怖さや謎が減ってしまった印象。


ホラー映画で大事なことは『どこまで見せるか、見せないか』という感覚で、見せるまでの間や怖がってる人物の活きた演技だと思います。そういった点で、『ズーム』はなにが登場するのかわからないまま怖くなっていくので、未知なる怖さも含めて僕も好感持てました」

サヴェッジ「僕も実際に怖がらせているものよりも、怖がっている役者さんの姿を見せることで、観客は恐怖を感じるんじゃないかなと思っていました。今回の『ズーム』は役者さんたちの演技のおかげで強烈なホラー映画を作ることができたと自負しています。それに『どこまで見せるか』という点も意識していて、いつもロバート・ワイズ監督が『たたり』で描いたよう怖さを参考にしながら作っています」

清水「『たたり』はJホラーを作っている監督さんたちもみんな好きで、所謂Jホラーの作り手たちに大きな影響を与えている作品の一つです。ただそこにいるだけ、気配だけで怖いという、不確かな怖さが宿っている。あと役者のリアクションで見せるなら観客の想像力を引きだせるほうが怖くておもしろいですよね。ロマン・ポランスキー監督の『ローズマリーの赤ちゃん』はまさにそれです」

サヴェッジ「『ローズマリーの赤ちゃん』は本当にすばらしい映画ですよね」

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