清水崇監督が『クワイエット・プレイス』の“巧さ”を力説!「冒頭10分間で一気に引き込まれた」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
清水崇監督が『クワイエット・プレイス』の“巧さ”を力説!「冒頭10分間で一気に引き込まれた」

インタビュー

清水崇監督が『クワイエット・プレイス』の“巧さ”を力説!「冒頭10分間で一気に引き込まれた」

「音を立てたら、即死。」。その衝撃の宣伝コピーで日本でも大ヒットした、体感型サバイバルホラーの続編『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』が6月18日(金)より公開される。前作で、住む家と大切な家族を失ったエヴリンは、産まれたばかりの赤ん坊と2人の子どもを連れてどこに逃げるのか?そして思いがけず音を立て、あの“なにか”が襲撃してきた時、彼女たちは生き残ることができるのか?想像しただけで、音を立てることが許されない世界の極限的な恐怖が甦る。
そこで第1作の完成度の高さに唸り、大ファンになったという清水崇監督へインタビューを敢行。日本が世界に誇る“ホラーマスター”である清水監督に、クリエイターの視点で前作の魅力を徹底解説してもらいながら、まだ観ぬ最新作への期待まで語ってもらった。

※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。

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「観客に“マズい、静かにしなきゃ”って気持ちにさせるのもスゴい」

2018年に公開された第1作は、音を立てた途端に“なにか”に襲われる世界で、音を立てずに生きる家族の姿を描いた究極のサバイバルホラー。そのシンプルな設定も話題になったが、清水監督は「タイトルまでの冒頭10分間で、一気に引き込まれた!」と興奮気味に振り返る。「セリフも音もない状況で、その異常な世界や家族構成、長女のリーガンが聴覚障害者で自責の念に駆られてしまうということまで全部伝えて、観客の心を掴んでしまうんですよね」。

清水監督は、本作が最恐のホラーとしてだけでなく、良質な家族の物語としても成立していることにも着目。「冒頭で末っ子の男の子が襲われるまでの展開も秀逸です。父親のリーは音が出るオモチャを取り上げるけれど、やさしい長女のリーガンは彼にそっと返してあげる。しかし、目を離した隙に本人が抜いた電池をこっそり持っていくあたりはうまいな~と思いました。しかも、オモチャの音が鳴ったあと、マズいと思って家族が振り向いたカットではスッと音を消している。その音の作り込み方も周到です」と強調。さらに、「あの描写で観客にも“マズい、静かにしなきゃ”って気持ちにさせるのもスゴいし、自分を責めてしまうリーガンの複雑な内面、リーガンと、彼女をフォローしきれない父親との微妙な距離感がわかる。同じ痛みを抱えているのに距離ができちゃっている家族の姿がリアルに描かれているから、観る人も誰かに共感しながら、あり得ない世界にどんどん引き込まれていく。家族愛が根底に流れているからこそ、シンプルなスリラーなのにスリリングで怖いんです」。

音を立てないように移動する一家だったが…
音を立てないように移動する一家だったが…[c] 2018, 2019 Paramount Pictures.

もちろん、俳優陣による迫真の演技が、生々しい恐怖を作り上げているのは言うまでない。ヒロインの母親エヴリンを演じたのは、ジョン・クラシンスキー監督の夫人でもあるエミリー・ブラントだが、「ご本人もおそらく芯の強い人だと思うんですけど、最初はどこにでもいる普通の母親にちゃんと見えるからいいですよね」と清水監督。「でも、出産して子育てをするうちに女性は強くなるので、この展開もリアルの延長上にあって理にかなっている。気弱な長男に『お母さんが歳をとったら、守ってくれなきゃいけないでしょ?』と言う前半の台詞で彼女の覚悟を感じる。作り手の僕としてはあそこで“ああ、お父さんは死ぬんだな”って察知してしまいましたが」と笑う。

音を立ててはいけない世界でどうやって出産するのか?
音を立ててはいけない世界でどうやって出産するのか?[c] 2018, 2019 Paramount Pictures.

だが、それ以上に清水監督が魅了されたのは、リーガンを演じたミリセント・シモンズだった。『ワンダーストラック』(17)のシモンズにも感心していた清水監督は「彼女は実際に難聴らしいんです。クラシンスキー監督はそんなシモンズをあえて起用し、彼女とコミュニケーションをとりながら“音のない世界”がどんなものなのかを探っていったみたいです」と説明する。「それに彼女は、その表情になにかを背負って生きている感じが出ているんです。あの年ごろの子は、もともと少しひねくれていたり、世界の見え方が大人とは違っていたりするけれど、そういうことが芝居でちゃんと読み取れてしまうのはすばらしいですね」。

自身も聴覚障害を持つミリセント・シモンズがやさしい長女を好演
自身も聴覚障害を持つミリセント・シモンズがやさしい長女を好演[c] 2018, 2019 Paramount Pictures.

■『クワイエット・プレイス』
Blu-ray 発売中
価格:1,886円+税
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント

■清水崇監督 プロフィール
1972年7月27日群馬県生まれの映画監督。助監督を経て3分間の自主制作映像を機に1998年に商業デビュー。『呪怨』シリーズ(99~03)が大ヒットを記録し、2004年にはサム・ライミ監督がプロデュースしたリメイク作『THE JUON 呪怨』でハリウッドデビュー。 日本人監督として初の全米興行収入1位を獲得。近作に『犬鳴村』(20)、『樹海村』(21)、Netflixにて配信中の『ホムンクルス』など。
また、総合プロデュースを務める1話完結の短編集「スマホラー」、スマホ動画アプリsmash.にて毎週(水)(金)に新作を続々配信中。
・スマホラー:https://sharesmash.page.link/MbYB

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