菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ” - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ”

インタビュー

菅野美穂、高畑充希、尾野真千子が語る、『明日の食卓』で改めて考えた“家族の幸せ”

「周囲からは恵まれていると思われていても、“そういうことじゃない”と言いたかった」(菅野)

映画は、ライターとして復帰した留美子、シングルマザーの加奈、専業主婦のあすみ、3人の物語が交錯しながら紡がれるが、3人が共演するシーンはない。だからこそ高畑が、「お2人の演技を、都度都度“すごい”と思いながら観ていました。オムニバスのようでもあるので、自分も出演している映画なのに、こんな素直に観客のように楽しめたのは初めて。不思議な感覚でした」とうれしそうに語る。

菅野が演じる留美子は、やんちゃ盛りの兄弟に振り回されながらも、ライターの仕事に復帰し、充実感を覚え始めている。しかしそれに伴い、カメラマンの夫とすれ違っていく――。菅野は、「留美子は望んで子どもを持てたし、育児の覚悟もしていたはずだけど、実際に生まれてみると、“こんなはずじゃなかった、もっとこうできるはずだ”という現実と自分の思いのギャップにもがき苦しんでいる女性」と人物像を分析。そして女性の元上司に留美子が言われた一言が、ずっと付いて回っていた、と回顧する。「『でも幸せな主婦には変わりないでしょ』という一言が、『でも恵まれたなかでの文句に近いなにかだよね』と言われている気がして、『そうかもしれないけれど、そうじゃないのよ!」と言いたい、というか…」。

留美子は、喧嘩ばかりする兄弟の育児に奮闘中
留美子は、喧嘩ばかりする兄弟の育児に奮闘中[c]2021「明日の食卓」製作委員会

そんな菅野の演技を、尾野が絶賛。「留美子さんの“普段” がとてもリアルに思えて。それこそ起きてキッチンに行き、冷蔵庫を開けて卵を取り、お鍋に水を汲んで…といった朝食を作る一連の流れに始まる生活の、リズムや速度がリアルに感じられて、すごく安心感があったんです。それが大好きでした」。

高畑も印象的なシーンを挙げて感嘆する。「夫が家を出ていく時に、留美子さんが子どもたちに『嫌い合って別れるわけではないけれど、もう一緒にはいられない』というようなことを話すシーンが、個人的にすごく好きでした。子どもに対しては“自分勝手でごめんね”という気持ちもあって、それが綺麗事でもなく、すごく複雑なシーンになっていて…。あの瞬間が切り取られた映画をあまり観たことがなくて新鮮でしたし、すごくリアルに感じられて、脚本を読んだ時以上にグッと来てしまったんです」。

「不安な気持ちで撮影に挑んだことが、逆によかったのかもしれない」(高畑)

一方で高畑が演じた加奈は、息子を育てるために朝から晩までバイトを掛け持ちし、息つく暇もないほど。息子のために走り回る一生懸命な姿は、いつ我慢や頑張りが爆発しないかと、観る者をヒヤヒヤさせ目を釘付けにする。高畑は、「気が張っている役だなあ、と思いましたが、演じながら私も気が張ってました」と苦笑い。「ほとんどのシーンが自分と息子の2人だけで、『大変ですね』と話せる大人のキャストさんも近くに居なかったので、結構な閉塞感で…。実は記憶があまりないんです(笑)。不安だ、不安だ、と思っているうちに撮影が終わってしまったので」。

菅野は「私からすると、加奈さん親子は理想の親子。頑張るお母さんを見て育っているから、息子も本当に優しいし。母と息子、お互いがお互いを思い合っているがゆえに生まれる、問題や歪みはあるけれど…」と加奈の親子に共感を示す。高畑の演技を、尾野は「高畑さんの演技も菅野さんと同様、すごくリアルだったんです。子どもとの接し方にしても、いろんな仕事の仕方にしても、本当にそこで生活している人のリズムとリアルが感じられて、落ち着いて観ていられて、すごくステキでした」と称える。

加奈と息子ユウの関係は、菅野と尾野も"理想的な親子"と称賛
加奈と息子ユウの関係は、菅野と尾野も"理想的な親子"と称賛[c]2021「明日の食卓」製作委員会

菅野も、「加奈さんがトマトと食パンとゆで卵を食べる姿や、雨が降って来た時に上着を取って羽織る仕草など、“ああ、こういう人なんだな”という感じがして、淡々と送る毎日、その日常が感じられて、すごく良かったですよね」と賛同する。高畑のあまりのリアルさに、尾野から「クリーニング工場やコンビニで働いたこと、もしかしてあったの!?」とツッコミが入る。「ないです、初めてです。勉強しました」と噴き出しながら高畑。「喋りながらレジを打つことが、あんなに難しいと思わなかったです」という高畑の発言により、 “いかに自分たちがコンビニのレジで嫌がられる注文をしてきたか”トークが開始。“カードを忘れたと言いながら、途中で出した”“レジの最中に、やっぱ唐揚げ1つ追加注文した”などなど、ひとしきり爆笑で話に花が咲いた。

衣装協力/
菅野…ネックレス¥2,200,000、ブレスレット¥792,000、イヤリング¥2,035,000/ミキモト
高畑…ワンピース¥73,000/VIVIANO(VIVIANO)、シューズ¥32,000/lostinecho(VIVIANO)、ピアス¥63,000、リング¥67,000/すべてCHARLOTTE CHESNAIS(EDSTRÖM OFFICE)
尾野…ピアスtalkative(トーカティブ)
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