M.ナイト・シャマラン監督に単独インタビュー!『オールド』を読み解くヒントと“老い”への恐怖を告白|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
M.ナイト・シャマラン監督に単独インタビュー!『オールド』を読み解くヒントと“老い”への恐怖を告白

インタビュー

M.ナイト・シャマラン監督に単独インタビュー!『オールド』を読み解くヒントと“老い”への恐怖を告白

『シックス・センス』(99)や『スプリット』(17)など、ドラマチックな展開と衝撃の結末で世界中を驚かせてきたM.ナイト・シャマラン監督。最新作となる『オールド』(8月27日公開)の日本版予告編が解禁となり、“ビーチを訪れた一家が、なぜか急速に老け込んでしまう”…というスリリングでミステリアスな内容の一部がお披露目となった。漂う緊張感と不穏な空気にゾクゾクとさせられるが、一体なにが起きているのか謎すぎる! そこでシャマラン監督にリモートインタビューを敢行。「これまでとはまったく新しい映画言語を使っている」と明かすシャマラン監督が、本作の着想のきっかけとなった“老いへの恐怖”や“時間についての考え方”、そしてコロナ禍での撮影について語った。

『シックス・センス』(99)など斬新な意欲作を手掛けてきたM.ナイト・シャマラン監督
『シックス・センス』(99)など斬新な意欲作を手掛けてきたM.ナイト・シャマラン監督写真:SPLASH/アフロ

本作は、ピエール・オスカー・レヴィとフレデリック・ピーターズのグラフィック小説「Sandcastle」を原案に、シャマランが脚本、監督、製作を手掛けたスリラー。美しいビーチで、“時間”が異常なスピードで加速していく不可解な現象に見舞われ、謎を解かなければ脱出できない家族の恐怖とサバイバルを描く。一家の父役を、ガエル・ガルシア・ベルナルが演じている。

解禁された映像は、ある家族がバカンスに出かけるありふれたシーンからスタート。秘境のビーチに到着すると美しい眺望が広がり、各々が浜辺で寛いでバカンスを楽しむ。母親が目を離したすきに息子がいなくなってしまうが、そこで「ここにいるよ」と現れたのは、すっかり大人の姿に成長した息子。さらに海に漂流し異常なスピードで腐敗が進む死体、不可解なメッセージ、お腹が大きくなっていく少女の姿も。はたしてビーチに隠された秘密とはなんなのか…。

本作の舞台は、異常なスピードで“時間”が加速していくビーチ
本作の舞台は、異常なスピードで“時間”が加速していくビーチ画像はM. Night Shyamalan(@mnight)公式Instagramのスクリーンショット

これまでも誰もが観たことのないような映画をエネルギッシュに作り続けているシャマラン監督だが、なぜ今回、“時間”や“老化”をテーマとした作品に挑もうと思ったのだろうか。

シャマラン監督は「子どもが大きくなってきて、『子どもが大人になるのは、あっという間だな』とちょっとショックを受けたり、『いずれは自分が介護をされる側になったりするんだろうな』と考えたりすることもある。『時間というものは、僕たちの身体や心にどんな影響を及ぼしていくんだろう』と思った。つまりは、老いることへの恐怖、時間に対する恐怖を感じていたんです」と50歳の率直な想いを吐露。「『Sandcastle』を読んだ時に、僕の老いに感じている恐怖や驚きと同様のことが描かれていると感じたんです。しかも非常に美しく、賢くね。ぜひこれを映画にしてみたいと思いました」と語る。

さらに「本作のキャラクターたちは、時間に勝とうとするんです。『時間よ、そんなに速く進まないでくれ!』となんとか時の流れを止めようとする。それは、僕たちがいつも感じていることでもある。でも『オールド』で改めて時間、老いと向き合ってみて、そういった考えをやめようと思うようになったんです。今日をしっかりと生きて、この瞬間に幸せを感じよう、楽しもうと感じるようになったので、いまはこのインタビューを、ものすごく楽しんでいます!」と笑顔を弾けさせるなど、本作を撮りあげて心境に変化があったという。

本作のクランクインは、2020年9月。コロナ禍の撮影では、これまでにない、“新たな恐怖”を感じることもあったとシャマラン監督は告白する。

【写真を見る】コロナ禍で『オールド』撮影をスタートさせたシャマラン監督、撮影現場の様子をSNSで公開
【写真を見る】コロナ禍で『オールド』撮影をスタートさせたシャマラン監督、撮影現場の様子をSNSで公開画像はM. Night Shyamalan(@mnight)公式Instagramのスクリーンショット


「まだそのころは、映画を制作しようとしている人はほとんどいなかったと思います。だからまず、パンデミック下での映画撮影はどのようにすべきなのか、ルールを作らなければいけなかった。100人、200人の人たちと一緒に仕事をするうえで『僕に責任があるんだ』と思うと、怖くもありました。常に『みんなは大丈夫か』『安全が保たれているか』と心を砕く必要があったからです。すべてのスタッフ、キャストが『このやり方なら参加できる』と思える状態まで、徹底して対策を練ったので、滞在したホテルもロケも、隔離された、ひとつのバブルのなかにいるような感覚でした。おかげさまで、誰も感染せずに撮影を終えることができたけれど、まだまだ世界的な感染が収束していない。そういったこれまでに感じたことのない恐怖は、本作にも影響を与えていますね」。

しかしコロナ禍では、いい影響もあったと前を向く。シャマラン監督は「パンデミックが起きてからすぐ、2、3か月の間、すべてがストップした時期があった。みんなが生活をスローダウンさせましたよね。生産的な生活をすることができなかった。そんな時に僕は『まだ誰も、僕を知らなかった時代にやっていたことにトライしよう』と思ったんです。座って本を読んだり、映画を観たり、いろいろなことをじっくりと考える時間を持った。するとその間に、新しい映画3本分のアイデアが浮かんだんですよ!」とにっこり。「ビル・ゲイツはシンク・ウィーク(考える週間・習慣を持つこと)を作っているらしいけれど、そういう時間って、本当に必要だなと思いました」としみじみと話す。

巨大なプールのセットを背景にしたシャマラン監督。パンデミック下での撮影の苦労も明かした
巨大なプールのセットを背景にしたシャマラン監督。パンデミック下での撮影の苦労も明かした画像はM. Night Shyamalan(@mnight)公式Instagramのスクリーンショット

いまのシャマラン監督の想いがたっぷりと込められている『オールド』。ますます完成作を観るのが楽しみになってくるが、シャマラン監督は「『アンブレイカブル』シリーズの3部作が撮り終わり、僕のなかで“新しい始まり”が起こっている。新しい映画言語、新しい言葉を習い始めているかのようで、映画と自分の関係が新しくなっているような気がしています。それがどのように劇場で展開されているのか、ぜひ楽しみにしてほしいです」と呼びかける。“ニュー・シャマラン”がスクリーンにお目見えする日を、期待して待ちたい。

取材・文/成田おり枝

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