『サイダーのように言葉が湧き上がる』イシグロキョウヘイ監督が市川染五郎&杉咲花に託した想い|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『サイダーのように言葉が湧き上がる』イシグロキョウヘイ監督が市川染五郎&杉咲花に託した想い

インタビュー

『サイダーのように言葉が湧き上がる』イシグロキョウヘイ監督が市川染五郎&杉咲花に託した想い

テレビアニメ「四月は君の嘘」のイシグロキョウヘイ監督による劇場オリジナルアニメーション『サイダーのように言葉が湧き上がる』が、いよいよ7月22日(木)より公開となる。人付き合いが苦手な俳句少年のチェリーと、コンプレックスを隠すマスク少女、スマイルが、言葉と音楽で距離を縮めていく姿を描く本作。歌舞伎界の新星、市川染五郎と、若手実力派女優の筆頭である杉咲花が、夏にぴったりの爽やかで甘酸っぱい青春ストーリーに、見事に命を吹き込んでいる。そんなイシグロ監督、染五郎、杉咲にインタビューを敢行し、オファーの理由や、共演の感想を語り合ってもらった。

「僕にとって、とても大切な出来事になりました」(染五郎)

チェリーとスマイルが、言葉と音楽で距離を縮めていく姿を描く描く青春ストーリー
チェリーとスマイルが、言葉と音楽で距離を縮めていく姿を描く描く青春ストーリー[c]2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

――主人公のチェリー役には、初映画、初声優、初主演となる市川染五郎さんが抜てきされました。“初づくし”となった染五郎さんを、チェリー役に選んだ理由から教えてください。

イシグロ監督「脚本や絵を作りあげていくなかで、『チェリー役を演じる人は誰がいいんだろうか』となかなか、しっくりくる人をイメージできずにいました。というのもスマイルが、チェリーの声について『かわいい』と言うシーンがあって。17歳の男の子で、なおかつ『かわいい』と言われる声というのは、どういったものなんだろうと考え込んでしまったわけです。そこで思ったのは、俳優さんでも声優さんでも、チェリーの実年齢に近い人にお願いしたいなということ。歌舞伎界にまで目を向けて調べ始めたところ、染五郎くんが小学生くらいのころ、まだ松本金太郎時代に話している声を聞いた時に、『声変わりをしたら、チェリーになるんじゃないか?』とピンと来るものがありました。そこで染五郎くんが、三谷幸喜さんの新作歌舞伎に出演するという情報を聞きつけて、さっそくチケットを取って観に行ってみたんです」

――オファー前に、2019年に上演された「月光露針路日本 風雲児たち」を観劇に行かれたのですね。

イシグロ監督「そうなんです。歌舞伎を観ていて、染五郎くんの声を聞いた瞬間に『これがチェリーだ!』『ついに見つけた!』と確信しました。絶対にお願いしたいと思い、僕の気持ちや、『あなたには声のお芝居ができる』という具体的な言葉を書き連ねた直筆の手紙を送りました」

人付き合いが苦手な俳句少年のチェリーを、市川染五郎が演じている
人付き合いが苦手な俳句少年のチェリーを、市川染五郎が演じている[c]2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

――染五郎さんは、声優のオファーが舞い込んできたことに驚きがあったのではないでしょうか。

染五郎「ものすごく驚きました。監督が観てくださった三谷さんの舞台は、僕のなかでとても印象に残っている経験で、記憶に焼き付いている舞台です。歌舞伎は小さなころからやっていますが、三谷さんや八嶋智人さんにお芝居の基礎から教えていただき、『お芝居とはなんなのか』ということを考えることができた、とても貴重な経験でした。その転機となったような舞台をきっかけに、チェリー役をオファーしていただいたということが、本当にうれしくて。僕にとって、とても大切な出来事になりました」

イシグロ監督「いつかの頑張りを誰かが見ていて、また次につながっていく。人生には、そういうことがあるものだよね」

――初めての挑戦に、不安はありましたか?

染五郎「不安はとても大きかったです。でも父もアニメの声優をやったことがあり、叔母の松たか子も声優の経験があって。挑戦して損になることは絶対にないし、今後のお芝居にも、きっと活かすことができると思いました。あとは監督のお手紙に背中を押されました。あの手紙がなかったら、だいぶ迷っていたと思います。今回のお話は最初に父から聞いたんですが『とにかくこのお手紙を一度読んでみて。それから考えてみよう』と言われて。完成してからは、父は一人で試写を観に行ってくれたみたいで。『よかったよ』と言ってくれました」

「監督から直筆のお手紙をいただき、とても心に響きました」(杉咲)

――スマイル役の杉咲さんも、役柄にぴったりでした。スマイル役は、すぐにイメージが湧いてきたのでしょうか。

イシグロ監督「スマイルに関しては、制作のかなり初期段階から『杉咲さんにお願いしたいな』と思っていました。プロットの段階で『このキャラクターはこういった性格』など特徴を記したキャラクターノートを作っていたのですが、そのころにプロデューサーが『杉咲花ちゃんという子がいて、その子もスマイルと同じように、歯が特徴的でかわいいんだよ』と言っていて。これはご本人はイヤな言葉かもしれませんが、すみません! 僕は『湯を沸かすほどの熱い愛』の杉咲さんのお芝居を見た時に『とんでもない女優さんがいる!』と思って、とても印象深かったんです。顔が映っていないシーンだとしても、表情がありありと浮かぶようなお芝居をされていた。プロデューサーの言葉を聞いた時に、改めて『湯を沸かすほどの熱い愛』を観直してみたんですが、『これはスマイルだ』と感じましたし、どうしても杉咲さんにお願いしたいと思ったんです」


コンプレックスを隠すマスク少女、スマイルを杉咲花が演じる
コンプレックスを隠すマスク少女、スマイルを杉咲花が演じる[c]2020 フライングドッグ/サイダーのように言葉が湧き上がる製作委員会

――チェリーもスマイルも、希望通りの配役が叶ったのですね。

イシグロ監督「その通りです。杉咲さんにもお手紙を書いたんですよ。『スマイルはコンプレックスを抱えている女の子で、それを声のお芝居で届けられるのは、あなたです』という気持ちを込めました」

杉咲「そのお手紙は、とても心に響きました。思いのこもった手書きのお手紙をいただく機会はなかなかないので、ものすごくうれしかったです。手紙には、監督が奥様と一緒に私のラジオを聴いてくださって、私の笑い声も印象的だったと書いてありましたよね」

イシグロ監督「そうなんですよ! 本作のキャラクターデザインと総作画監督は、妻(愛敬由紀子)が担当しているんですが、本作のロケハンのために、早朝から東村山に出かけたことがあって。車でラジオを聴いていたら、杉咲さんの番組が始まったんです。まだその時は『杉咲さんにお願いできたらいいな』と思っている段階でしたが、妻とも『杉咲さんって、コロコロと笑うよね。スマイルが笑ったら、きっとこういう感じだよね』と話していたんです」 

杉咲「監督や奥様が私の笑い声をスマイルに当てはめてくださったことは、私としても『スマイルはどのような声をしているんだろう』と考えるうえで、大きなヒントになりました。スマイルは、コンプレックスである前歯を隠すために人前では常にマスクをしているのですが、根はとてもポジティブな女の子だと思います。いるだけでその場がパッと明るくなるようなスマイルのまぶしさを、まっすぐに伝えられたらいいなと思いながら、アフレコに臨みました」


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