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【追悼】日本が世界に誇るアクションスター・千葉真一が死去。その功績と、息子たちに託した想い

コラム

【追悼】日本が世界に誇るアクションスター・千葉真一が死去。その功績と、息子たちに託した想い

日本を代表するアクション俳優、千葉真一が8月19日、肺炎のため82歳で死去した。所属事務所の発表によると、新型コロナウイルスに感染し入院中であったとのこと。

1939年に福岡県で生まれた千葉は1959年、高倉健や梅宮辰夫を輩出した「東映ニューフェイス」の第6期に合格。翌年にテレビドラマ「新 七色仮面」で主演デビューを飾ると、深作欣二監督のデビュー作『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』(61)を皮切りに「柔道一代」シリーズなど数多くの映画で主演を務める。そして1968年から5年間にわたって放送されたハードボイルドなアクションドラマ「キイハンター」で、一気に国民的人気俳優の仲間入りを果たした。

深作欣二監督と多くの作品でタッグを組んだ。(写真は『宇宙からのメッセージ』より)
深作欣二監督と多くの作品でタッグを組んだ。(写真は『宇宙からのメッセージ』より)写真:EVERETT/アフロ

千葉のキャリアを振り返るとなれば、やはり深作とのタッグは欠かせない。前述の『風来坊探偵 赤い谷の惨劇』でお互い映画監督・映画主演デビューを飾った2人は、その後同作の続編をはじめ、「ファンキーハットの快男児」シリーズや「キイハンター」など、数多くの作品でコンビを組む。

『ギャング対Gメン』(62)、『カミカゼ野郎 真昼の決斗』(66)、『仁義なき戦い 広島死闘篇』(73)、『北陸代理戦争』(77)、『ドーベルマン刑事』(77)、『柳生一族の陰謀』(78)、『宇宙からのメッセージ』(78)、『赤穂城断絶』(78)、『復活の日』(80)、『魔界転生』(81)、『里見八犬伝』(83)、『必殺4 恨みはらします』(87)、『いつかギラギラする日』(92)、そして深作の遺作『バトル・ロワイアルII 鎮魂歌』(03)。友情出演の2作品を含めれば、実に20作もの映画でタッグを組んだことになる。

師弟関係であり盟友でもあった深作がこの世を去った2003年、千葉はクエンティン・タランティーノが深作に捧げた『キル・ビルvol.1』(03)に、世界最高の刀匠・服部半蔵役として出演。この役名はタランティーノが大好きな千葉出演のテレビドラマ「影の軍団」から付けられたもので、劇中のナレーションはテレビ版「柳生一族の陰謀」から引用したものだ。


1974年から4作が作られた「殺人拳」シリーズも代表作の一つ
1974年から4作が作られた「殺人拳」シリーズも代表作の一つ写真:EVERETT/アフロ

タランティーノは過去にも、初めて書いた脚本である『トゥルー・ロマンス』(93)のなかで主人公が「殺人拳」シリーズの3本立てを観に行くシーンがあったり、『パルプ・フィクション』(95)でサミュエル・L・ジャクソンが語るセリフが『ボディーガード牙』(73)のアメリカ公開版の冒頭に出る文章であったりと、千葉の出演作から絶大な影響を受けたことが作品に顕著にあらわれている。

千葉自身も早くから世界に目を向けており、イギリスとアメリカの合作映画『武士道ブレード』(81)や香港映画『風雲 ストームライダーズ』、さらには「ワイルド・スピード」シリーズの第3作『ワイルド・スピード X3 TOKYO DRIFT』(06)など多くの海外作品にも出演して、海外では“Sonny Chiba”の愛称で親しまれてきた。その国際的な活躍に対し、米アカデミー賞の公式Twitterも追悼のコメントを投稿した。

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画像はThe Academy(@TheAcademy)公式Twitterのスクリーンショット

また一方で、日本のアクション映画界を盛り上げ、世界に通用するアクション俳優やスタントマンを育成するために「ジャパン・アクション・クラブ」(JAC)を設立した千葉。いまやハリウッドの第一線で活躍する真田広之をはじめ、志穂美悦子や堤真一、伊原剛志、『カメラを止めるな!』(17)でブレイクしたしゅはまはるみら数多くの俳優たちを輩出するなど、後人の育成に力を注いできた。

プライベートでは2017年にこの世を去った女優の野際陽子との間に生まれた真瀬樹里が女優として活躍。1996年に再婚した一般女性との間に生まれた長男の新田真剣佑、次男の眞栄田郷敦がともに俳優としてめざましい活躍を見せている。

多くの作品がアメリカでも公開された父の背中を追い、新田もハリウッドへ踏みだした
多くの作品がアメリカでも公開された父の背中を追い、新田もハリウッドへ踏みだした写真:EVERETT/アフロ

千葉は、今年7月に「週刊女性」のインタビューに応じ、新田の出演している『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(公開中)を映画館に観に行ったことを明かしていた。インタビューのなかでは、新田に対し「日本であんなに動ける役者はいない」と賛辞を贈っており、「初めて『俺を越えたな』と思える役者が出てきた」との発言には、息子の成長を心から喜ぶ“父”の姿が見え隠れしていた。

今年春に海外進出を志し渡米した新田は仕事のため滞在先におり、父の死に目に立ち会うことが叶わなかったが、訃報に際し自身のInstagramに「No matter where I am, you'll always be in my heart. Love you so much Dad.(僕がどこにいたとしても、あなたはいつも私の心のなかにいます。お父さんのことを、心から愛しています)」と投稿。短いセンテンスに込められた想いは、察するに余り有る。

千葉真一さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。
千葉真一さんのご冥福を、心よりお祈り申し上げます。写真:EVERETT/アフロ

稀代のアクションスターの遺志を受け継ぐ多くの俳優たちの活躍を期待しつつ、千葉真一という、偉大な映画人のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

文/久保田 和馬

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