日本を代表するアニメーター大塚康生は「オタク第一号!」貴重なエピソードで故人を偲ぶ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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イベント 2021/11/2 22:13

日本を代表するアニメーター大塚康生は「オタク第一号!」貴重なエピソードで故人を偲ぶ

10月30日より開催されている第34回東京国際映画祭「ジャパニーズ・アニメーション」部門内での特集「アニメーター・大塚康生の足跡」にて、『わんぱく王子の大蛇退治』(63)のトークショーイベントが11月2日にTOHOシネマズ シャンテで行われ、アニメーターの月岡貞夫が登壇。公私ともに仲の良かった大塚との貴重なエピソードを語った。

”温故知新”をキーワードに「過去を知り、未来を考える」という狙いのもと3つの特集を組んでいる今年の「ジャパニーズ・アニメーション」部門。本特集は1956年に東映動画へ入社以降『白蛇伝』(58)などの動画や「未来少年コナン」(78)、『ルパン三世 カリオストロの城』(79)の作画監督を務め、今年3月にこの世を去った日本を代表するアニメーターである大塚康生の仕事を振り返る貴重な特集となっており、登壇した月岡は本作『わんぱく王子の大蛇退治』で大塚とともに主人公スサノオによる大蛇退治の原画を担当した。

母の突然の死を受け入れられず兎のアカハナと旅に出たわんぱく王子のスサノオ少年は、出雲の国でクシナダ姫を苦しめるヤマタノオロチを退治する。

『わんぱく王子の大蛇退治』のトークショーイベントに登場したアニメーターの月岡貞夫
『わんぱく王子の大蛇退治』のトークショーイベントに登場したアニメーターの月岡貞夫

東映動画と手塚治虫の虫プロの黎明期からアニメーターとして活躍した月岡。イベント冒頭では「最近は、アニメーションをやらずにもっぱら絵を描いております」と挨拶し、当時一緒に作品を手掛けていた大塚について「元々エフェクトを多く担当した方で、『白蛇伝』の時から水や自然現象とか、あまりキャラクターは与えられていなかったといいますか。アニメーションでは“運動系の動き”と“演技系(コミュニケーション系)”の2つがあるんですけど、大塚さんは演技系はやや弱くてアクション系(笑)」だと明かす。

本作『わんぱく王子の大蛇退治』の製作の裏側の話になると、「(監督を務めた)芹川さん(芹川有吾)は実写映画と同じようなカット割りをやるということで、みんなから嫌われていてですね(笑)」と笑いを交えながら当時を回顧しつつ「だから芹川さんは、なんとかアニメーターのなかに入ろう入ろうと努力してらっしゃった。なので企画の段階から相当リサーチをやってらっしゃいましたし、当時世界で流行り始めたリミテッド・アニメーションの手法を取り入れようという考え方が共通認識としてあった。無視できない、世界的な潮流だからと。だからキャラクターデザインも各チーフはリミテッド・アニメーション的な、それまでの東映アニメーションにはないデザインを提示してきてらっしゃった」と述懐する。そんななか芹川監督とは「とにかくエンタテインメントで楽しくやろう」と話していたといい、「できるだけ楽しく仕事をしようじゃないかということで、結果的に楽しく仕事ができた」と本作の現場を振り返った。

司会を務めたプログラミング・ディレクターの藤津亮太
司会を務めたプログラミング・ディレクターの藤津亮太

大塚とは公私ともに非常に親しい仲だったという月岡。「入社した当初から波長があったのか、ものすごく仲が良くて日常生活も限りなく近いお付き合いをしていた。彼の独身時代からよく知っていて2人でよく色んな所にいきましたし、話すといくらでも出てきますね(笑)」と懐かしむ。さらに大塚は“オタク第一号”だとも明かし、「部屋によく遊びに行きましたが、押し入れを開けた時に書類じゃなくてカタログがダーッと落ちてきまして。それがまず車、戦車、飛行機、アメリカの本格的な武器のカタログなんです。それくらいマニア。あれはオタクの第一号ですよ(笑)」と当時のエピソードを明かし会場を笑わせた。

【写真を見る】今年3月に逝去した日本を代表するアニメーター大塚康生との様々なエピソードを語った
【写真を見る】今年3月に逝去した日本を代表するアニメーター大塚康生との様々なエピソードを語った

また、改めてアニメーションの魅力について問われると「実家が商売を色々やっていて、そのうちの一つが映画館だった。なので映画は子どもの頃から浴びるほど観ていて、お手伝いで映写室へ行ってコマを1コマ1コマ見てアニメーションの魅力に触れていました。いま思うと、動きが実におもしろい。動きというものの感性というのは、その頃についたのではと思います」と自身を振り返りつつ、本格的にアニメーションの世界に足を踏み入れてからも「大塚さんはずっと私を支持してくれた。とても仲のいい関係だったんです」と笑顔で大塚を偲んだ。

第34回東京国際映画祭は、11月8日(月)まで日比谷、有楽町、銀座地区にて開催中。

取材・文/富塚沙羅


さらなる進化を目指す、「第34回東京国際映画祭」特集