現役フラガールたちが『フラ・フラダンス』を鑑賞!震災とコロナ禍を越えて繋がれた、“絆”のバトン|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
現役フラガールたちが『フラ・フラダンス』を鑑賞!震災とコロナ禍を越えて繋がれた、“絆”のバトン

インタビュー

現役フラガールたちが『フラ・フラダンス』を鑑賞!震災とコロナ禍を越えて繋がれた、“絆”のバトン

福島県いわき市にある「スパリゾートハワイアンズ」のダンシングチーム、通称“フラガール”の新人ダンサーたちの成長の1年間を描いた長編オリジナルアニメーション映画『フラ・フラダンス』(公開中)。“フラ”を仕事に選んだ新入社員・夏凪日羽(声・福原遥)と同期の仲間たちの絆にスポットを当てた本作だが、実際の“フラガール”たちは新社会人の期待や不安、大失敗までをリアルに映しだしたこの映画をどう観たのだろう。そして、彼女たちはどんな想いで“フラガール”になる道を選び、東日本大震災、コロナ禍を経たハワイアンズのステージで踊っているのだろうか。彼女たちの生の声を聞くため、11月中旬、ダンサーたちのための特別試写会が行われたハワイアンズを訪ね、現役の“フラガール”たちへの取材を敢行した。

爽やかな感動が評判となっている『フラ・フラダンス』
爽やかな感動が評判となっている『フラ・フラダンス』[c]BNP, FUJITV/おしゃれサロンなつなぎ

「私たちがこの10年間に経験したことが、ほとんど反映されていました」(ラウレア美咲)

まず最初に、「スパリゾートハワイアンズ」がどんなところで、そのダンシングチームのメンバーにはどうしたらなれるのかを簡単に説明しておこう。

ハワイアンズのある現在の福島県いわき市はかつて石炭の町だったが、エネルギーの主役が石油に変わった1960年代前半ごろから石炭産業が斜陽に。そんな窮地の時に、「坑内から湧出する温泉の地熱と豊富な湯量を利用すれば、東北の地でも1年間温暖な空間が創出できる」として、1966年に常磐炭礦株式会社(現・常磐興産)が“夢の島ハワイ”をイメージした日本初の施設「常磐ハワイアンセンター」をオープンする。それが、ドーム6個分の敷地に6つのテーマパークと3種類のウォータースライダーを擁した巨大な流れるプール、ビーチシアター、複数の温泉施設を有する現在の「スパリゾートハワイアンズ」になったのだ。

半世紀にわたり、多くの観光客を楽しませてきた「スパリゾートハワイアンズ」
半世紀にわたり、多くの観光客を楽しませてきた「スパリゾートハワイアンズ」撮影/黒羽 政士


そんなハワイアンズのダンシングチーム、通称“フラガール”のメンバーになるには、まず、ハワイアンズを経営する常磐興産の入社試験に合格して、正社員になる必要がある。応募できるのは高校、専門学校、短大、大学を卒業見込みの満22歳以下の女性のみだが、ダンス経験の有無は不問で、過去にはダンス未経験者も実際に合格している。そして入社後の4月にはダンシングチームのメンバーを養成する専門の学校「常磐音楽舞踏学院」に入学し、ほかの新採用社員と同じ研修を受けながらプロのダンサーになるための数々のレッスンを続け、その年の8月にメインステージで“フラガール”としてデビューするというのが通常の流れだ。

筆者の取材に応えてくれたのは、ダンシングチーム48期生でチームのキャプテンでもあるラウレア美咲、49期生のサブキャプテンであるキアヌ咲樹、そして今年の4月に入社した57期生の加藤華南と三井祐希。映画鑑賞直後の興奮冷めやらぬ4人に、まずは『フラ・フラダンス』の率直な感想から聞いてみた。

メンバーの心理描写に共感したというラウレア美咲(左)
メンバーの心理描写に共感したというラウレア美咲(左)撮影/黒羽 政士

「新人や先輩ダンサーの心情が細かく表現されていたので、共感できる部分もたくあって、涙が出そうなったり、笑えるシーンもありました。私たちがこの10年間に経験してきたことがほとんど反映されていたので、心から凄いなと思いましたね」。劇中のフラダンスシーンでモーションキャプチャーにも参加したラウレア美咲は、完成した本作への感慨を熱っぽく語る。

続いて、「研修や基礎レッスン時代に定期的に行われる査定やショーの舞台裏もほぼ忠実に再現されていましたね」と、ファンが気になる目線に立って感想を語ってくれたのは、ラウレア美咲と同じくモーションキャプチャーに参加したキアヌ咲樹。「そのあたりは常連のお客さまでも見られないところなので、きっと喜んでいただけると思いますし、あまり知られていないダンサーの日常までが垣間見える映画になっていました」。

自らの状況と重なり合ったとおどろく、加藤(左)と三井(右)
自らの状況と重なり合ったとおどろく、加藤(左)と三井(右)撮影/黒羽 政士

そんな先輩たちとは違い、映画を自分のいまの状況とシンクロさせながら観たのは、主人公の日羽と同じ、今年入社したばかりの新人ダンサー、加藤と三井だ。

「登場人物の悩みは、私たちも経験してきた共感できることばかりでした」と話すのは加藤。「例えば、日羽が“なんで私は試験に受かったんだろう?”と感じるシーンがありましたが、私はダンスレッスンの覚えが同期たちより遅れていたので、その気持ちがすごく分かって。ほかの子から『私もできてないよ』って言われた時の、彼女の『みんなとは、できていないレベルが違うから』というセリフにも共感できました」。

劇中では、彼女たちが日々レッスンを積む稽古場も完全に再現されている
劇中では、彼女たちが日々レッスンを積む稽古場も完全に再現されている撮影/黒羽 政士

「ハワイ出身のオハナが『お母さんが恋しい』と感傷的になるのも分かりましたし、同期との関係や、親元を離れた新人ダンサーがハワイアンズで暮らしていくためには自立心が必要ということまで描かれていたのにはおどろきました。それに、私たちが使っているレッスン場や施設まですごく丁寧に再現されていて、ステージで踊っている私たちだけではなく、お客さまがいる客席も含めて温かい一つの空間になっていることや、日羽たちがフラダンサーになってよかったなと思う瞬間もきちんと切り取られていたので、観ていてすごく楽しかったです」と、自らが体験した心情がそのままに描かれていたことにおどろいた様子。

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撮影/黒羽 政士

彼女の隣でうなずく三井は、「自分の職場でこの映画を観ることができて、本当に幸せだなと思いました」と、万感の想いを言葉にしてくれた。「映画でも描かれていますが、沢山の方たちがフラガールの採用試験を受けて、片手に収まるぐらいの人数しか受からないんです。それだけに、自分の好きなフラを職業にできた私は本当に恵まれているなと、この映画を観て改めて実感しました」。

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撮影/黒羽 政士

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