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ゴールデン・グローブ賞発表目前!“多様性”の時代を象徴する、昨年の快挙を振り返る

コラム 2022/1/8 21:30

ゴールデン・グローブ賞発表目前!“多様性”の時代を象徴する、昨年の快挙を振り返る

昨年行われた第78回ゴールデン・グローブ賞で最優秀主演女優賞(ドラマ部門)を受賞し、第93回アカデミー賞でも主演女優賞にノミネートされるなど、多くの映画賞を席巻した『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs.ビリー・ホリデイ』が2月11日(金・祝)より日本公開を迎える。1940年代に活躍した伝説のジャズシンガー、ビリー・ホリデイとFBIとの戦いの真実を描いた本作は、近年のハリウッド映画界の最重要キーワードである“多様性”を象徴する一本だ。

1940年代を舞台に、実在の歌手ビリー・ホリデイとFBIの知られざる対決を描く(写真は『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs.ビリー・ホリデイ』)
1940年代を舞台に、実在の歌手ビリー・ホリデイとFBIの知られざる対決を描く(写真は『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs.ビリー・ホリデイ』)[c]2021 BILLIE HOLIDAY FILMS, LLC.

人種差別の撤廃を求める人々が国に立ち向かった、公民権運動の黎明期。アメリカ合衆国政府から反乱の芽を叩きつぶすよう命じられたFBIは、絶大な人気を誇っていた黒人ジャズシンガーのビリー・ホリデイ(アンドラ・デイ)にターゲットをしぼり、彼女の大ヒット曲「奇妙な果実」が運動を扇動すると危険視。黒人捜査官のジミー・フレッチャー(トレヴァンテ・ローズ)をおとり捜査に送り込むのだが、逆境に立たされれば立たされるほどホリデイのステージパフォーマンスは輝きを増し、肌の色や身分の違いを超えて多くの人々を魅了していくことに…。

前年のゴールデン・グローブ賞は歴史的快挙ずくし!

故チャドウィック・ボーズマンが主演男優賞に輝いた『マ・レイニーのブラックボトム』
故チャドウィック・ボーズマンが主演男優賞に輝いた『マ・レイニーのブラックボトム』Netflixオリジナル映画『マ・レイニーのブラックボトム』は独占配信中

アメリカ全土を超えて世界的に広がっているBLMムーブメントと、長年にわたって白人男性優位社会であると批判されてきたハリウッドの映画界。そうしたなかで行われた昨年のゴールデン・グローブ賞では、作品賞(ドラマ部門)を『ノマドランド』(20)が受賞し、同作でメガホンをとった中国出身の女性監督クロエ・ジャオが監督賞を受賞。さらに『マ・レイニーのブラックボトム』(Netflixにて配信中)のチャドウィック・ボーズマンが主演男優賞(ドラマ部門)を受賞し、本作のデイが主演女優賞(ドラマ部門)を受賞した。

黒人女性がゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞するのはウーピー・ゴールドバーグ以来35年ぶり!(写真は『カラーパープル』)
黒人女性がゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ドラマ部門)を受賞するのはウーピー・ゴールドバーグ以来35年ぶり!(写真は『カラーパープル』)写真:EVERETT/アフロ

歌手として活動しグラミー賞ノミネート経験もあるデイは、本作が本格的な演技初挑戦。それにもかかわらず、圧巻の歌唱力を武器にホリデイが憑依したかのような演技を披露。黒人女性による主演女優賞(ドラマ部門)を獲得するのは『カラーパープル』(85)のウーピー・ゴールドバーグ以来35年ぶりの快挙であり、主演男優賞と主演女優賞が揃って黒人俳優に贈られるのは史上初。賞レースの変革を告げる受賞結果に世界中が大きく沸き立った一方で、授賞式直前にはゴールデン・グローブ賞への投票権を持つ会員に黒人が1人もいないことなど様々な問題が明るみに出た。

変革の時を迎えたゴールデン・グローブ賞…今年の注目作品は?

作品賞や監督賞などで有力視されている『パワー・オブ・ザ・ドッグ』はジェーン・カンピオン監督の逸品
作品賞や監督賞などで有力視されている『パワー・オブ・ザ・ドッグ』はジェーン・カンピオン監督の逸品Netflixオリジナル映画『パワー・オブ・ザ・ドッグ』は独占配信中

その後、ゴールデン・グローブ賞を主催するハリウッド外国人映画記者協会は新規会員を21人追加し、そのおよそ半数が女性であり、6名の黒人会員が加わったことを発表。先日ノミネートが発表された第79回ゴールデン・グローブ賞では、監督賞に『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(Netflixにて配信中)のジェーン・カンピオン監督と『ロスト・ドーター』(Netflixにて配信中)のマギー・ギレンホール監督と女性監督2名がノミネートされ、主演男優賞(ドラマ部門)にはマハーシャラ・アリ、ウィル・スミス、デンゼル・ワシントンの黒人俳優3名がノミネート。また主演女優賞(コメディ/ミュージカル部門)にはラテン系のレイチェル・ゼグラーがノミネートされ、日本からも『ドライブ・マイ・カー』(公開中)が非英語映画賞にノミネートされている。


名優デンゼル・ワシントンは『マクベス』で10年ぶりの受賞を狙う
名優デンゼル・ワシントンは『マクベス』で10年ぶりの受賞を狙う写真:EVERETT/アフロ

現地時間1月9日に発表されるゴールデン・グローブ賞の受賞結果は、来たる第94回アカデミー賞にも大きな影響を与える。それは同時に、ハリウッドはもちろん世界のエンタテインメント界全体の価値観をアップデートする重要な機会であると考えることもできよう。今年のゴールデン・グローブ賞の受賞結果にも注目しつつ、人種差別反対運動の“音楽的出発点”ともいわれているビリー・ホリデイのパワフルで美しい生き様を描く『ザ・ユナイテッド・ステイツ vs.ビリー・ホリデイ』を通して“多様性”について改めて思いをめぐらせてみてはいかがだろうか。

文/久保田 和馬

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