杏が考察する上橋菜穂子ワールドの魅力「政治や医療、人々のぶつかり合いをファンタジーという形で描くことで、本質を浮き彫りにしている」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
杏が考察する上橋菜穂子ワールドの魅力「政治や医療、人々のぶつかり合いをファンタジーという形で描くことで、本質を浮き彫りにしている」

インタビュー

杏が考察する上橋菜穂子ワールドの魅力「政治や医療、人々のぶつかり合いをファンタジーという形で描くことで、本質を浮き彫りにしている」

累計発行部数250万部を誇る、上橋菜穂子のファンタジー小説をアニメーション映画化した『鹿の王 ユナと約束の旅』(2月4日公開)で、原作の帯にコメントを寄せていた女優のが、密命により主人公ヴァンを追う“謎の狩人”サエを演じた。上橋作品の魅力について杏は、「夢物語だけではないリアリティが、上橋さんの作品にはあるんです。だからいまの私たちが生きているこの世の中にも通じること、政治や医療、人々のぶつかり合いといったものを、ファンタジーという形で描くことによって、その本質や問題がより浮き彫りになって、より深く感じられるのだと思います」と、分析する。

上橋菜穂子のベストセラー小説を、安藤雅司監督ら日本屈指のアニメーターが集結して映画化した『鹿の王 ユナと約束の旅』
上橋菜穂子のベストセラー小説を、安藤雅司監督ら日本屈指のアニメーターが集結して映画化した『鹿の王 ユナと約束の旅』[C]2021 『鹿の王』製作委員会

「上橋さんが、『主人公がおじさん、おばさんでもいいじゃない』と語っていたことが記憶に残っている」

かつて原作者の上橋と「鹿の王」について対談したことがある杏。その時のことを、「上橋さんが、『主人公がおじさん、おばさんでもいいじゃない』とおっしゃられていたことが、すごく記憶に残っています」と振り返る。「確かに、だから老若男女を問わず、大人が読む際にも自分の心の年齢を下げず、そのまま内容を楽しめるのだと思います。例えば、本作の主人公ヴァンにしても、彼の年齢でなければ描けないバックグラウンドや経験がある。若さゆえの情熱とピュアさがあるホッサルとの対比としても、清濁併せのんだ形で受け止め、誰かを守るというヴァンの姿が際立つ。その鮮明な対比をすごく感じました」。

ヴァン、ホッサル、サエ、出会うはずのなかった3人が、謎の病ミッツアルを機に、その運命が交錯する
ヴァン、ホッサル、サエ、出会うはずのなかった3人が、謎の病ミッツアルを機に、その運命が交錯する[C]2021 『鹿の王』製作委員会

杏が語るとおり、ヴァンとホッサルは外見も性格も対照的だからこそ、味わいや楽しみが倍増するのは間違いない。杏が、「見た目もそうですが、ヴァンは無骨で猛々しくゴツゴツしている。対するホッサルは、若く柔軟な柔らかさがある。渋くて落ち着いたヴァンと、光り輝くホッサルは、ザラザラしているものとツルツルしているもの、それくらいの違いがあって、違う魅力を放っていますよね」と絶妙に表現してくれた。

「戦闘シーンはすごく汗をかき、ずっと叫んでいたので声がガラガラに枯れた(笑)」

さて、杏が演じたサエは、謎の病、黒狼熱(ミッツアル)の解明を求めてヴァンを追うホッサルとはまた別の、帝国・東乎瑠(ツオル)に服従するアカファ王国からの密命を受けてヴァンを追う、優れた探索技術で一目置かれる狩人だ。杏は「サエはとても寡黙で、余計なことは決して言わず、雑談も一切しないタイプ」と解説する。「原作以上に“マスキュリン”に描かれていて、ヘアスタイルも男性より短い位に刈り上げたベリーショート。原作には、少し艶っぽくドキっとするようなシーンもありましたが、映画ではそのあたりはまったく描かれない。だから私も敢えて意識しないようにしました。人前では個人的なことを極力出さない人なので、とにかく抑える方向で演じました」。

ミステリアスな女戦士サエは、ミッツアルに抗体を持つヴァンの命をねらう
ミステリアスな女戦士サエは、ミッツアルに抗体を持つヴァンの命をねらう[C]2021 『鹿の王』製作委員会

アフレコを振り返って、特におもしろかったのはアクションシーンだったと語る。「アクションシーンを声で吹き込むにあたっては、実際に殺陣の形、転がって起き上がって、こっちの手でこうする、という動きを自分で確認できないと、実際に声が出せないんです。しかも、動きのタイミングも決まっているので、サエの動きをダンスの振り付けのように覚えて、『や~!』っと声を出したりしました。そのあたりも、サエとしての見どころの一つです。寡黙で淡々としている仕事人みたいなサエが、なぜそこまで戦うのか。そこも是非、映画で確かめてほしいです」。

実際に本番でも、マイクの前で動きながら声を当てたそう。「少しマイクから離れ、サエと同じアクションをしました。だから戦闘シーンはすごく汗をかき、ずっと叫んでいたので声がガラガラに枯れました(笑)。寡黙なサエでさえそんな状態だったので、ほかの方はもっと大変だったと思います」。


「ダンスのように振付を覚えた」と杏が語るアクションシーンにご注目を
「ダンスのように振付を覚えた」と杏が語るアクションシーンにご注目を[C]2021 『鹿の王』製作委員会

そんなサエが、ヴァンやユナ、彼らに同行するホッサルと道中を共にすることで、少しずつ変化していく。「アニメは順撮りで録音できるので、気持ちの変化は作りやすかったです」と杏。気持ちの変化を、「誰もが手を差し伸べたくなってしまう、守るべき存在であるユナと接することで、どんどん“守らなければ”という気持ちが強くなっていく。サエの気持ちが柔らかくなっていくのを、演じながら感じました」。


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