新しい“バットマン”はカート・コバーンをイメージ?『THE BATMANーザ・バットマン一』マット・リーヴス監督が語る|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
新しい“バットマン”はカート・コバーンをイメージ?『THE BATMANーザ・バットマン一』マット・リーヴス監督が語る

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新しい“バットマン”はカート・コバーンをイメージ?『THE BATMANーザ・バットマン一』マット・リーヴス監督が語る

「トワイライト」シリーズや『TENET テネット』(20)のロバート・パティンソンが主演を務め、世界中で社会現象を巻き起こした『ジョーカー』(19)に続くDCユニバースに属さない注目の最新作となる『THE BATMANーザ・バットマン一』が、3月11日(金)より公開される。若き日の青年ブルースが葛藤しながらも“バットマン”になろうとする姿が描かれる今作で、監督を脚本を手掛けたマット・リーヴス監督が今作での“新しいバットマン像”をイメージしたというある人物と、そのバットマンを描くにあたりインスピレーションを得た作品について明かした。

“バットマン”こと若き日のブルース・ウェインの姿を描き、クリストファー・ノーラン監督による『ダークナイト』トリロジー以来のバットマン単独映画として注目を浴びる今作。両親を殺害された青年ブルースは、社会への復讐を誓い悪と敵対する存在の“バットマン”になろうとしていたが、探偵としての表の顔を持つブルースの前に史上最狂の知能犯リドラーが現れる。政府の陰謀とブルースにまつわる過去の悪事や父親の罪が暴かれていくなか、ブルースの中で何かが壊れ始めていく…。

サスペンス要素が色濃く、まるで『ジョーカー』を紡彿とさせるような世界観に包まれている今作では、未熟で等身大な青年ブルースが“バットマン”になろうとしている成長過程にフォーカスされている。若いブルースを描いた理由について、マット・リーヴス監督は「僕はバットマンのオリジンではなく、バットマンになって2年目を描くことに決めた。今までのバットマンの物語では、成長し区切りのついた姿を見ることになる。『彼はバットマンだ。彼は困難を乗り越えてやりきった』とね。でも僕が見たかったのは、バットマンがまだ完成されたものではなく、バットマンになることがどういう意味なのかを葛藤しながら見つけようとしている過程なんだ」と語る。

また、「バットマンは、両親が殺されたことの復讐心に突き動かされバットマンとしての活動に身を投じるが、次第にその経験に病みつきになっていく。戦うことに中毒状態で、ブルースにとってバットマンになることこそが麻薬のようになっている」とも話し、その自己破壊的なロック・アンド・ロールの美学が宿るアイディアこそが思い描くバットマンのイメージだと辿り着き、バットマンには伝説のロックバンド「ニルヴァーナ」のカート・コバーンをイメージし、脚本を書いている時にはニルヴァーナの「サムシング・イン・ザ・ウェイ」を聴いていたことを明かす。

さらに未熟な青年としてのキャラクター造形には、往年の名作『タクシー・ドライバー』(76)からもインスピレーションを得たといい「『タクシー・ドライバー』は、都市の中での居場所の無さを明示したり、迷っていて、自分自身を理解しようとする人について入っていく上でとても重要だった。そういったことは、ブルース/バットマンの中にうまく移し変えられると感じたんだ」と、ロバート・デ・ニーロ演じる主人公が社会への鬱憤を抱え、夜ごと街をさまよう様子にバットマンを重ねたと話す。
また「スーパーヒーローの多くのストーリーではキャラクターはコスチュームを着ていて、とても空想的だ。でも僕はそれを現実的に見せる方法を考えた。ブルース・ウェインがバットマンとなる瞬間は、彼は第二の自分(分身)を見つける必要がある。それは、トラヴィス・ビックル(『タクシー・ドライバー』の主人公)みたいだと思った。トラヴィスは自分の手をポケットに突っ込んで、まるで流れ者だ。そのデイテールは、僕をとても魅了した。ブルース・ウェインだったら、人々に気づかれてしまう。でも、バットマンという流れ者だったら、犯罪を探しにいけるかもしれない。そして、彼は暗闇から姿を現すんだ。コスチュームを身にまとい、復讐のイメージと視覚的に恐ろしいものをクリエイトすることになったんだ」とも語っている。


善と悪の間で揺らぎ、いまだかつてない葛藤に満ちたバットマンの心理的側面を掘り下げた本作に注目が集まる。

文/富塚沙羅

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