ウェス・アンダーソン監督、日本の旅館ビジネスに参入?『フレンチ・ディスパッチ』ファンイベントで秘密企画をほのめかす!
本日公開のウェス・アンダーソン監督最新作『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』。本作の公開を記念した前夜祭ファンイベントが1月27日、TOHOシネマズ六本木にて開催され、アンダーソン監督がライブ配信で日本のファンの前に登場した。イベントにはアンダーソン監督と親交の深い野村訓市もリモートで参加した。
前作『犬ヶ島』(18)でPR来日した際に、すでに本作の構想を聞いていたという野村。「2〜3週間の滞在中、バスローブ姿でタイピングするウェスの姿をよく見かけました」と明かす。なにをしているのかたずねると「次の映画のアイデアだ」と言うので、「もう(次の作品のために)働いている」と驚いたと振り返る。2018年5月に来日し、7月から脚本を手掛け、秋には最初のシーンをパリで撮影していたそう。パリ滞在中に撮影を終えたオーウェン(ウィルソン)と食事をした野村は、「今度はどんな映画?」と訊ねたところ「分からない」という答えが返ってきたと微笑む。オーウェンは「僕は自分の出演したパートのことしか分からない。でも、ウェスの映画はウェスが全部を知っている。僕たちはパズルのピースに過ぎないんだ。そのピースが(ウェスの描く)映画にハマるのがとても楽しみだよ」とうれしそうに説明していたという。
野村は「そして、その完成形がこの『フレンチ・ディスパッチ』です」と笑顔で紹介した。出来上がった映像については「想像をしなかった形の映画」と驚きを隠せない様子。「あまりにもおもしろくて2回も試写に足を運びました」と気に入ったことを明かし、「いろいろな角度から楽しめる記念すべき10作目にふさわしい映画だと思っています」と太鼓判を押した。
続いて、アンダーソン監督が画面に登場すると、割れんばかりの大きな拍手が沸き起こった。日本が大好きなアンダーソン監督は「基本、日本に行くチャンスは絶対に逃さないけれど、今回はコロナ禍で来日が叶わず残念です」と寂しそうな表情を浮かべつつも、来場者とイベントを企画したスタッフすべてに感謝を伝えた。日本への想いは特別なようでアンダーソン監督は「実は日本の旅館ビジネスに参入予定がある」という構想をいきなり告白。古い建物を購入し、インテリアデザイナーの野村とタッグを組み、宿泊施設をやりたいとのこと。「物件を探しているので、おすすめがあればサーチライト・ピクチャーズまでご連絡ください」とアンダーソン監督、野村共々お願いする場面もあった。
「ウェスの映画は毎回想像以上の新しい作り方を見せてくれる」と語る野村は「ウェスの頭のなかには、あと20か30くらいのアイデアがあるはずなので、今後は年1ペースでそれを吐きだして形にして」とリクエスト。「ありがとう」と微笑みながらアンダーソン監督は「実はいま、スペインで撮影した作品を編集中です。そしてもう1本、英国の素敵なキャストとともに短めの作品を作っています」と明かし、「数か月ほどで1本の映画と次のプロジェクトについてのなにかしらの発表ができるかもしれません」とコメント。会場に集まったファンをよろこばせていた。「アンダーソン監督の魅力とは?」という質問に野村は一言で表すのは難しいとしながらも「作家性があって、毎回話がおもしろいし、セットも音楽もすばらしい。そういう映画を作れるウェスを頼りにしています」と熱く語っていた。
イベントでは来場者からの質問にアンダーソン監督が答えるコーナーも。今作で取り組んだ新しいことについては、「僕の作品の新しさというのは、コラボレーションしている人に合わせていくことで生まれます。今回でいうと、ベニチオ・デル・トロやジェフリー・ライトと組み、ワクワクするサプライズが生まれました」と回答。さらに、役者に求めることという質問に絡めて、今回はベニチオ、ジェフリー、フランシス・マクドーマンドらがあてがきであることを明かしたうえで、役者の持っているパワーには毎回驚かされるとニコニコ。劇中に登場する手話のシーンはベニチオのアイデアだったと説明し、「自分でなにかを生みだす力、発言力がある役者はすばらしい」と感想を述べていた。
また、現在編集中の別作品にはジェフリーが出演し、デル・トロともまた組む予定だという。『フレンチ・ディスパッチ』を経て、“ウェス・アンダーソンファミリー”にまた、新たなメンバーが加わったようだ。来場者のためのフォトセッション時には再び「物件、探してます、とメッセージを広めてね」とお茶目に呼びかけ、笑いを誘いイベントを締めくくった。
取材・文/タナカシノブ