アニメ評論家・藤津亮太が考察…『バブル』のパルクール・アクションは荒木哲郎監督とWIT STUDIOの一つの到達点|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
アニメ評論家・藤津亮太が考察…『バブル』のパルクール・アクションは荒木哲郎監督とWIT STUDIOの一つの到達点

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アニメ評論家・藤津亮太が考察…『バブル』のパルクール・アクションは荒木哲郎監督とWIT STUDIOの一つの到達点

「SPY×FAMILY」のWIT STUDIO最新作『バブル』が5月13日(金)に劇場公開。重力が壊れた東京を舞台に、圧巻のグラビティ・アクションと「にんぎょ姫」をベースとしたせつないラブストーリーが繰り広げられる。そんな本作の見どころを、アニメ評論家・藤津亮太が解説する。

泡(バブル)が降り注ぎ、重力を失い荒廃した東京が舞台に
泡(バブル)が降り注ぎ、重力を失い荒廃した東京が舞台に[c]2022「バブル」製作委員会

「この世界で遊んでみたい」「登場人物たちの仲間になりたい」。日本のアニメは、視聴者・観客のそんな感情を強く喚起するところに特徴がある。観客は、その作品世界で(秘めたる)欲望を解放し、登場人物に感情を寄り添わせることで肯定的感情を湧き上がらせる。エンターテインメントとしてのアニメの“ストライクゾーン”はそこにある。
『バブル』は、そのストライクゾーンのド真ん中に、160kmの直球を投げ込んできた。堂々たる真っ向勝負だ。

業界関係者も驚嘆した“カロリーが高い”アクション

世界に降り注いだ謎の泡(バブル)により、重力異常地帯となった東京。廃墟となり水没した東京だったが、家族のいない若者たちが入り込み、そこで暮らし始めていた。
見知った風景が変わり果てた様子を見ることができるのは、フィクションの楽しさのひとつ。本作は、その廃墟をパルクールのコースにすることで、単なる背景にとどまらない、一種の“遊び場”としての魅力を付け加えた。

走る、跳ぶ、登るといったアクションを複雑に組み合わせて、障害物を超えて進んでいくパルクール。若者たちは、チームを組み、生活物資を賭けてのチームバトルに興じている。本作は、そんな彼らの姿を立体的なカメラワークで追いかけ、画面を活気づかせる。


【写真を見る】藤津亮太も評価する、少年たちが縦横無尽に動き回るパルクール・アクションとは?
【写真を見る】藤津亮太も評価する、少年たちが縦横無尽に動き回るパルクール・アクションとは?[c]2022「バブル」製作委員会

アニメならではのアクションとして魅力的な内容だが、これは同時に“カロリーが非常に高い”(作画等の高い技術が求められ、かつ手間がかかる)題材でもある。しかし本作はそれを見事にやり遂げた。試写が終わった後の雑談で、業界関係者がまず「すごかった」「大変なことをやってる」とパルクールのシーンへの驚嘆から話を始めていたことからも、その完成度の高さが伝わるだろう。

荒木哲郎監督は過去の取材の中で、WIT STUDIOの特徴として「アクションがうまいアニメーターが揃っている」と語っていた。だから「企画を考える時にもアクションが生きるような内容を意識する」と。つまり本作のパルクール・アクションは、荒木監督とWIT STUDIOが「進撃の巨人」で始め、「甲鉄城のカバネリ」を経て追求してきたアクションシーンのひとつの到達点なのだ。そこにはあえて難しい題材に挑むことをよしとする、荒木監督とスタッフの信頼関係も見える。

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