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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第8回

映画ニュース 2022/6/3 20:30

アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第8回

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。

ピンキー☆キャッチ 第8回

イラスト/Koto Nakajo

「鈴香です」
「七海です」
「理乃です」
「私達三人合わせて『ピンキー☆キャッチ』です!」

十七歳の私達、実は誰も知らない、知られちゃいけないヒミツがあるの。それはね、、表向きは歌って踊れるアイドルグループ。
でも悪い奴らが現れたら、正義を守るアイドル戦隊『スター☆ピンキー』に大変身!
この星を征服しようと現れる、悪い宇宙人をみ~んなやっつけちゃうんだから!
マネージャーの都築さんは私達の頼れる長官!
今日も地球の平和を守る為、ピンキー☆クラッシュ!

都築は悩んでいた。メンバー3人の学校が夏休みを迎えるにあたり、数日間里帰りをさせてくれと頼まれているのだ。
勿論休みは当然の権利であり、学生となればなおさらの事だ。ただ、どうしても怪人の討伐における問題が残ってしまう。怪人の出現は今のところ都内に限定されてはいるものの、時と場合を選ばない。メンバーがそれぞれの出身地である三重・長野・宮城に帰ってしまえば、距離的に戦闘は不可能だ。

2年前、防衛省が保管している隕石に含まれている『プリズムパワー』に耐えうる体質の人物を国がピックアップした結果、17名がリストアップされた。全国各地で行われる健康診断で、血液検査の結果照会を行政に極秘で協力を仰いだのだ。老若男女様々な人材がいる中で、『同年齢の女性で、地下アイドル活動を怪人討伐の隠れ蓑に』という理由でこの3人が選ばれたのだった。
この3人が帰郷している間は、他の候補者14名の中から新たに3名ほどを選抜するより他はない。今後も現メンバーが必ず出動できるとは限らない。冠婚葬祭などの急な休みも考慮し、今のうちにサブメンバーを揃えておく必要があるだろう。

この活動をする上で、新規メンバーにも求められる条件は大きく4つ。

1『一定の体力を持つ者』
2『現状で時間の融通が利く者』
3『機密情報を厳守できる者』
4『都内在住、もしくは都内に移住できる者』

まず一つ目の条件で静岡在住の名代トキ江さん(86)、青森の野々村秀次さん(89)、広島の宍戸正和さん(92)、アキレス腱を切って入院中の神奈川の小野李里奈さん(19)はまたの機会にとなった。
二つ目の条件では、茨城在住で小さなお子さんを3人抱える主婦の丸山奈美さん(31)、滋賀で自動車整備工場を営む横田秀次さん(46)、同じく滋賀の保育園に勤める佐山里美さん(24)を見送った。

問題は3と4の条件である。機密情報を守れるか否かは人間性の点であり、紙面上の情報では決め難い。また、都内への移住の可否も直接聞いてみる以外に知る手立てがない。こうなると三鷹に住むバンドマン、つまりフリーターの三島亮二(29)。西永福が実家の女子大生、加藤咲恵(20)。そして都内も都内、渋谷の松濤に一軒家を構える謎の金持ち、鏑木肇(52)。この3人に絞って事を進めるのが早そうだ。

本来であればそれぞれの生活スタイルや人間性を長期間吟味し、その上で依頼に入るのが理想だろう。しかし時間も残されていない為、当たって砕けろで交渉するしか手はなさそうだ。ただ、どうしても説明時には機密情報を喋らざるを得ない為、もし断られるような事になれば『急に地球防衛を依頼してきた頭のおかしい奴』を演じ、誤魔化すしか手はない。

都築と防衛省の後輩の樺島は、まず三島亮二にコンタクトを取る為、三鷹に向かった。

「都築さん、バンドマンっていっても、どれくらいの規模で活動してるんですかね?」
「そこは大きいよな。ほとんどバイトみたいな生活ならばこちらの提示金額で飛びついて来るかもしれない。年齢も29で人生について考える時期だ。説得できる隙はあると思う」
「でもミーハーだったら困りますよね。例えばピンキーのファンだったりしたら、下心ありで承諾してくるかもしれないし」
「バンドマンだからその辺は気を付けないとな。あくまで別働隊として線をひこう」
「チャラついてますからね、結局バンドマンなんて」

偏見に満ちた二人を、昼下がりの中央線は静かに運んだ。

三鷹に降り立つと、アルバイト先だという弁当屋に向かった。駅から15分ほど歩いた、住宅街の中にポツンと佇む個人経営の小さな弁当屋だった。外から様子を伺うに、店内には中年の女性が一人、暇そうに輪ゴムを指先で遊んでいた。

「ほぼ毎日いるって聞いてたんだけどなあ・・」

樺島がガードレールに座り込むと、壊れそうなエンジン音のカブが店先に停まった。白い割烹着が不釣り合いな、緑の髪色をした青年が伸びをしている。一瞬で三島だと分かった。おそらく配達先から戻ったのであろう。ただ、バンドマンと聞いて勝手にロック系をイメージしていたが、気持ちのいいくらいまっすぐなパンク野郎だった。
おそらくライブ時にはモヒカンにするのであろう、髪の毛は両サイドが高めに刈り込まれており、ポッキーのようにタイトな黒いパンツをボロボロのマーチンの8ホールにinしている。身長は185cmほどあろうか、しかしカマキリのように細い。眉はきれいに剃り落とされており、感情は読めない。

「都築さん、あれですよ絶対」
「ああ、そうだろうな。でも参ったな、パンクスか・・」
「だけどどのみち金は無さそうですよ」
「金は無いだろうけど・・。でもあの系統のガチパンクスだと交渉は難航するかもなあ・・」

パンクスは大きく分けて2種類存在する。ファッションか、ガチかだ。ファッションパンクスは文字通り、服装のジャンルの一つとしてそれらを取り入れているだけだ。しかしガチは違う。生き方そのものがパンクスであり、ファッションは後付けですらある。見分け方は“埃っぽいかどうか”だ。服がボロボロか否かだけではない。本物はどこか埃っぽいのだ。そして三島は匂い立つほどに埃っぽい後者だった。
人にもよるが、ガチのパンクスの中には過剰な富を否定する者も少なくない。元々が反体制の傾向があり、自由と不服従が理念の柱だ。権威や安定を否定した上に彼らのイデオロギーは成り立っている。報酬の金額をチラつかせてなびくタマではないだろうと、都築は考えを改めた。

三島は店内に入ると、先程の中年の女性と何やら楽しげに言葉を交わしている。これもガチパンクスの特徴の一つであろう、『バイト先では真面目で好かれがち』なのだ。己に芯が通っているために責任感が強く、義理堅く情がある。逆で考えると自分自身で決めた事以外にはそうそうなびかない精神力がある。とはいえ外堀から埋めていくような時間はない。下手に小細工をするよりも、正攻法で正面からぶち当たるのが得策かもしれない。しばらく様子を伺っていると、私服に着替えた中年女性が退店し、店内は三島のワンオペとなっていた。

都築と樺島は店内へ入ると、唐揚げ弁当を二つ注文した。対応した三島は思いがけず高めな声で「これから揚げますので10分弱お待ち頂いてもよろしいでしょうか?」と丁寧に接客してくれた。10分後、都築は弁当を受け取ると、なるべく柔らかめな表情を心がけつつ三島に話を切り出した。

「あの、三島亮二さんですよね?回りくどい言い方になってしまう事をお許し下さい。実は我々、本日ちょっとしたお願いがありましてお邪魔したのですが・・」

断られた場合のことを考えて名刺は渡せない。三島は少し目を大きくしたが、落ち着いた様子で答えた。

「僕にですか・・。ええとすみません、あと40分くらいで上がれますので、もしお待ちいただけるようでしたら前の道を左に少し行ったところに“とばり”って喫茶店があるんですが、そちらでお話伺ってもよろしいですか?」

拍子抜けするくらいすんなりと応じてくれた。二人は恐縮しながら頭を下げ、とりあえず横の公園で唐揚げ弁当を食べた。揚げたての唐揚げは生姜の味付けが効いており、好みの味だった。指定された喫茶店へ入り、奥まったテーブル席を選んだ。三島は律儀にも40分後きっかりに、もう色々細工され過ぎて、主張がよく分からなくなっているTシャツ姿で現れた。黒いスーツ姿の二人とバキバキの青年が一人という、チグハグな席になった。


「お待たせいたしました、それでお話っていうのは?」
「不躾に失礼いたしました。単刀直入に申し上げます。実は我々はとある機関に属しておりまして、現段階では名称は伏せさせていただきたいのですが・・。三島さんにお願いというのはですね・・」

硬くなり過ぎている樺島から都築が話を引き取った。

「そのお願いなんですが、近頃報道なんかでも取り上げられていますが、怪人出現のニュースはご存知ですか?」
「ああ勿論。ネットだと何かのプロモーションだとか書かれてますけど。あれが何か?」
「ええ、まあ色々と憶測を呼んではいますが・・。三島さんにお願いというのはですね、あの怪人の討伐をお願いできないかという事なんです。突然こんなお願いをされても驚かれるでしょうが、、、」

そこまで話すと三島は天井を見上げ、大きなため息をついた。

「すみません、ちょっと、想像とあまりにも違うお話だったもので・・。ええと、ちょっと混乱してるんですけど、とりあえずレコード会社の方ではないって事ですよね」


都築と樺島はハッとして顔を見合わせた。そうだ、こんな出立ちでバンドマンの前に急に現れたら、先方はそう考えてしまっても仕方がない。気遣いとして浅はかだった。ここまでの40分、三島は弁当を作りながら『音楽活動が軌道に乗るかもしれない』という大きな期待に胸を膨らませ、米を炊いていたのかもしれない。都築と樺島は申し訳なさげに頭を下げた。

「いえいえ、そうじゃないんです。もしそうだったらどうやって折り合いをつけようかなと。メジャー進出に向けてのお話はもちろん嬉しいんですが、そうなると色々と音楽的に制約が出てくるじゃないですか。ご覧の通りパンクバンドですので、日の当たる場所と音楽性との兼ね合いが難しいというか・・。名が知れ渡るのは有り難いんですが、自分達のスタイルや、今応援してくれているファンを裏切る形になるのは嫌だなと・・」

棺桶に豚が糞をぶっかけているTシャツの柄があまりにも不釣り合いな、実直な言葉だった。

「だけど自分はご覧の通り、ムダに身長はありますが、腕力の方はちょっと自信が無いんですよ」

当然抱く疑問に、二人は細かく説明をした。討伐においては特殊な力を秘めた装備があることを。しかしそれは誰でも耐え得る物ではなく、特殊な体質の持ち主だけが操れるもので、三島がそれに値する人物だということを。樺島が最後にピンキーについての説明をし、最後にそことは別働隊になる上での話も付け加えた。

「そういう事ですか。正直まだピンとは来ていませんが、僕が断ればたくさんの人が困るんですもんね、、。毎回でないのであればバイトやライブにも支障きたすわけじゃないだろうし。分かりました、お受けします」

この後は『果たして三鷹は都心なのか問題』が湧きあがったが、アパートは駅から徒歩3分の位置にあり、最悪バイト先のカブも使えるという事で、そこはなあなあで終わった。とりあえず貴重な人材を一人確保したのであった。

(つづく)

文/平子祐希

■平子祐希 プロフィール
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。