ソン・ガンホ、史上初の快挙。カンヌ2冠の『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしい」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ソン・ガンホ、史上初の快挙。カンヌ2冠の『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしい」

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ソン・ガンホ、史上初の快挙。カンヌ2冠の『ベイビー・ブローカー』是枝裕和監督、「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしい」

第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門の授賞式が現地時間5月28日夜に行われ、是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』(6月24日公開)で主演を務めるソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。また同作は独立賞の一つであるエキュメニカル審査員賞にも輝き、見事に2冠を達成した。

是枝裕和監督が4年ぶりのカンヌ国際映画祭で2冠の快挙達成!
是枝裕和監督が4年ぶりのカンヌ国際映画祭で2冠の快挙達成![c]2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

是枝監督が長年温めてきた企画を映画化した『ベイビー・ブローカー』は、“赤ちゃんポスト”をきっかけに繰り広げられる、養父母探しの旅を描く物語。ベイビー・ブローカーを裏稼業にする2人の男を演じるのは『パラサイト 半地下の家族』(19)のソン・ガンホと『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20)のカン・ドンウォン、赤ん坊の母親をIUことイ・ジウンが演じ、彼らを追う刑事役を『空気人形』(09)のペ・ドゥナと「梨泰院クラス」のイ・ジュヨンが演じる。

パルムドールに輝いた『万引き家族』(18)以来、4年ぶりのカンヌ国際映画祭コンペティション部門参加となった是枝監督。是枝監督の作品から最優秀男優賞受賞者が出るのは、『誰も知らない』(04)で当時史上最年少で受賞を果たした柳楽優弥以来18年ぶりのこと。また韓国人俳優が最優秀男優賞を受賞するのは史上初の快挙で、最優秀女優賞では、過去にソン・ガンホも出演した『シークレット・サンシャイン』(07)でチョン・ドヨンが受賞している。

ソン・ガンホは授賞式のスピーチで、「偉大なる芸術家、是枝裕和監督に深く感謝申し上げます。一緒に頑張ってくれた役者のカン・ドンウォンさん、イ・ジウンさん、イ・ジュヨンさん、ペ・ドゥナさんに深い感謝と、この光栄を分かち合いたいと思います」と是枝監督、共演者たちへ感謝の気持ちを述べ、さらに「いま、2階にいると思いますが、愛する家族と共に来ました。このトロフィーの栄光と永遠なる愛を捧げます」と、家族にとっても最高のプレゼントとなったようだ。

一方、コンペティション部門の出品作のなかから「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られるエキュメニカル審査員賞を、日本人監督の作品が受賞するのは青山真治監督の『EUREKA(ユリイカ)』(00)、河瀬直美監督の『光』(17)、昨年の濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(公開中)に続いて4人目。韓国映画としての受賞も初めてとなった。

【写真を見る】熱いハグで喜びを分かち合う、是枝監督と最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホ
【写真を見る】熱いハグで喜びを分かち合う、是枝監督と最優秀男優賞を受賞したソン・ガンホ[c]2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

授賞式後に取材に応じた是枝監督は「自分の映画に出た役者が褒められるのが一番うれしいです。予想していませんでしたが、この作品にとって最高のゴール。とても美しいゴールだなと思います」と喜びを語り、授賞式の後にソン・ガンホと2人で抱き合って喜びを分かち合ったことを明かす。

そして「彼の演技を見ながら僕が脚本を現場で直していく、彼に編集を見てもらって意見が戻ってくる。そういうフィードバックが撮影の裏で毎日ありました。それが僕にとって判断の基準になりましたし、その信頼関係のなかで進められたことが、結果的に彼の芝居の質を上げたと思っています。本当に助けられましたし、よい関係が築けたと思います」と、ソン・ガンホとの充実した共同作業を振り返った。

『ベイビー・ブローカー』はエキュメニカル審査員賞も受賞
『ベイビー・ブローカー』はエキュメニカル審査員賞も受賞[c]2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

本作では韓国にわたり、現地のスタッフ・キャストと共に作品を作り上げた是枝監督。「これをきっかけに、もっと日韓のスタッフやキャストの交流が進むといいねと、(監督賞を受賞した)パク・チャヌクさんとも話をしました」と語り、「日本の映像産業や映画文化も含めて変えなければいけないところが明解になってきており、もう何年かこのままでいくと手遅れになると個人的には思っています。なにかしらのアクションを促しながら、またチャンスがあれば海外でいろんな方たちと組んで吸収し、日本に持ち帰ってを繰り返していけたら」と力説。

またカンヌ国際映画祭ではオスカー俳優のハビエル・バルデムや『ROMA ローマ』(18)のアルフォンソ・キュアロン監督らと対面したことを楽しげに振り返り、「ハリウッドというと大きくなってしまいますが、英語圏で撮ってみたいという気持ちはある。いつになるかわかりませんが考えてみようと思います」と、英語圏に“撮りたい役者”がいることを明かしながら、今後のさらなる飛躍を誓った。

文/久保田 和馬


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