安彦良和監督を支えた“3人の監督”がひも解く、40年ぶりに蘇らせた「ガンダム」への想い|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
安彦良和監督を支えた“3人の監督”がひも解く、40年ぶりに蘇らせた「ガンダム」への想い

インタビュー

安彦良和監督を支えた“3人の監督”がひも解く、40年ぶりに蘇らせた「ガンダム」への想い

6月3日より公開中の『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』は、1979年より放送されたテレビアニメ「機動戦士ガンダム」の第15話を映画化した作品だ。「機動戦士ガンダム」のエピソードが映画化されるのは、劇場版3部作の第3部『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(82)以来、実に40年ぶりとなる。

「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザイン・アニメーションディレクターであり作画監督を務めた安彦良和監督が、「自分が映像として作る最後の『機動戦士ガンダム』」として選んだ第15話「ククルス・ドアンの島」は、戦争の被害者ともいえる子どもたちと、子どもたちを守ろうと苦悩するジオン軍兵士を描いている。これまで再映像化のチャンスを失っていたこのエピソードを、40年を経て映画化するために、スタッフはなにを考え、どんな技術を使ったのか。安彦監督の元に集まったスタッフの証言と共に紐解いていこう。

「登場人物一人一人がちゃんと生きている姿を描きたい」(イム)

20人の子どもたち個々の性格や行動が、脳裏に刻まれるような演出も印象的
20人の子どもたち個々の性格や行動が、脳裏に刻まれるような演出も印象的[c]創通・サンライズ

「若手の演出さんとやってみたい」という安彦監督の希望を受け起用されたイム・ガヒ副監督。絵コンテの一部を担当することになり、安彦監督から好きなシーンを選んでもいいと言われた時、真っ先に子どもたちの食事シーンを選んだという。「だいたいの劇場アニメには食事シーンがあると思うんですけど、物を食するシーンはもっとも人間らしいなって思っていて、子どもたちの食事ってもうエライことになると思うんです。抑えてはいるんですが、今作でも子どもたちは料理をこぼしたり、あちこちを走り回ったり。劇場作品じゃないとここまで描けないから、大変だと分かっているけど、むしろ大変なところをやってみようって」。

イム副監督は、このほかにジオン軍の精鋭部隊で裏切り者のドアンを付け狙うサザンクロス隊の高機動ザクが初登場するシーンの絵コンテも担当した。「安彦さんには『思ったより描けているね』という評価をいただき、レイアウト(絵コンテから作画の構図を起こす作業)を監督自ら担当してくださって。とても誇らしい仕事になりました」と話し、安彦監督のねらい通り、若手スタッフとの豊かなコラボレーションとなったようだ。

登場人物の一人一人がちゃんと生きているように意識したという
登場人物の一人一人がちゃんと生きているように意識したという[c]創通・サンライズ


「舞台を見ていると、主役より周囲の役者を見てしまう」というイム副監督は、今作でも子どもたち一人一人の性格を自分なりに決めていったそうだ。「舞台では役者さんひとりひとりが“生きている”じゃないですか。そんな、舞台だとできていることが、意外とアニメではできていなかったりするんです。主役にフォーカスしたいのに、ほかでゴチャついてしまうというか…。ノイズになることもあるので、同じというわけにはいかないんですけど。基本的に作品に登場する村人AやBでも、一人一人ちゃんと生きているんだっていうことを意識して、今回はそれを少しでもやりたいなと思っていました」。

ニュータイプへ覚醒する前の、等身大の少年としてのアムロの描写が凝縮されている
ニュータイプへ覚醒する前の、等身大の少年としてのアムロの描写が凝縮されている[c]創通・サンライズ

思い出すと安彦監督の作品には、コメディ的なちょっとした動きが楽しいところがある。メインとなるドラマに紐付いているわけではないが、その人物のキャラクター性を的確に表現し、視聴者と登場人物との距離を縮めてくれた。イム副監督が今作に参加する決め手として、「作品のなかでの島の子どもたちの日常生活とか。ホワイトベースから離れ、15歳の少年に戻っている感じがするアムロを、丁寧に描ける機会があるんじゃないか」と話し、その想いがこのシーンに凝縮していたのだろう。


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