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口コミでロングラン中の『ハケンアニメ!』吉野監督と、『映画大好きポンポさん』平尾監督がクロストーク!

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口コミでロングラン中の『ハケンアニメ!』吉野監督と、『映画大好きポンポさん』平尾監督がクロストーク!

直木賞&本屋大賞受賞作家の辻村深月による人気小説を映画化した『ハケンアニメ!』(公開中)のティーチイン付き特別上映会が6月30日に開催。吉野耕平監督と、監督と交流のあるアニメ映画『映画大好きポンポさん』(21)の平尾隆之監督をゲストに迎え、本作の出演者である新谷真弓もMCとして登壇した。

【写真を観る】リピーターも続々。『ハケンアニメ!』のイベント時に撮られた自撮り写真
【写真を観る】リピーターも続々。『ハケンアニメ!』のイベント時に撮られた自撮り写真

吉岡里帆を主演に迎え、中村倫也、柄本佑、尾野真千子らが共演した『ハケンアニメ!』は、日本のアニメ業界を舞台に、最も成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」を手にすべく奮闘する者たちの姿を描いたお仕事ムービー。5月20日の劇場公開直後は興行でやや苦戦を強いられたが、映画の鑑賞者をはじめ、各界の著名人たちから絶賛の声や応援コメントが次々と発信され、連日大きな盛り上がりを見せてきた。

6月23日に開催された第1回ティーチイン上映会も反響を呼び、今回第2回ティーチイン上映会開催の運びとなった。さらには、第1回ティーチイン上映会で客席に鑑賞者として参加していた編集・白井役の新谷真弓が、今回はMCを務めることになった。

『映画大好きポンポさん』は、杉谷庄吾【人間プラモ】による漫画を基にした劇場アニメーション映画。敏腕プロデューサーから映画監督に抜擢されたアシスタントの青年が、波乱万丈な映画製作に没頭していく。新谷から「今日せっかく会えるということで聞きたいことがたくさんあるんですよね!」と促された2人。まずは、吉野監督が平尾監督に「『ポンポさん』では本編と劇中劇の差をアニメでどう工夫して表現したのか、どう演出されたのかぜひ伺いたい」と質問した。

『映画大好きポンポさん』は、杉谷庄吾【人間プラモ】による漫画を基にした劇場アニメーション映画
『映画大好きポンポさん』は、杉谷庄吾【人間プラモ】による漫画を基にした劇場アニメーション映画[c]2020 杉谷庄吾【人間プラモ】/KADOKAWA/映画大好きポンポさん製作委員会

平尾監督が「アニメは良くも悪くも嘘がつける。だからこそ、作品の本編では見せる部分、描かない部分をはっきりさせて、反対に劇中劇では実際に実写の法則に沿ってカメラの前で起こったかのように画を忠実に再現しました。また本編ではビスタ、劇中劇ではシネスコにして画角も変えることで物理的に変化をつけていきましたし、それぞれどう変化を工夫するか、悩んだところでもあり、こだわった部分でもあります」と答えた。

新谷は「アニメーションだからこそ昇華される部分や魅力があり、そこのバランス感覚がすばらしいですよね」と深く聞き入る。

新谷真弓はカット毎に撮影されたデータを絵コンテに準じてつなぎ合わせる「サバク」の編集担当、白井役
新谷真弓はカット毎に撮影されたデータを絵コンテに準じてつなぎ合わせる「サバク」の編集担当、白井役[c]2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

その流れで、『ハケンアニメ!』はどうだったかと振られた吉野監督は「例えばスマホの画面の文字を映像で表現すると、アニメと実写だとアニメのほうが圧倒的に見やすくて、実写だとスマホの周りの情報が気になってしまうんですよね。そこは平尾監督のおっしゃったことと通じる部分でして、本来ならそれぞれが思う『このクールではこの作品が熱い』というのが心のなかであって、好きな人同士では盛り上がれるんですけど、世間としては出ないですよね。そのみんながワクワクしている感じをもう少し出せないかなと思って、『ハケンアニメ!』では劇中で登場するテレビアニメの視聴率争いを、アニメーションを使って過剰に表現してみました」とコメント。

さらに吉野監督は「リアルにしすぎると地味になってしまうこともあり、また物語に入っていけなくなることもあると思ったので。今回では劇中に登場する2つのテレビアニメがそれぞれの作品のベストを目指して競っているというのも見せたいと思いました」と補足した。

『ハケンアニメ!』は公開中
『ハケンアニメ!』は公開中[c]2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

続いて新谷が、お芝居で両作品が対照的に感じた部分があったということで、役者の芝居に対して心がけたことを聞くと、吉野監督は「先ほどの話にもつながるんですが、『ハケンアニメ!』では多くの登場人物がいて、リアルすぎると”常識人による会話劇”という地味な印象になってしまう。それは避けたかったので、”アニメーション業界ではこういう人たちがいます!”というのを、ルックも含めて魅力的にかつ知ってもらいたかったので、演技やキャラ付けをしっかり芝居していました」と解説。


一方の平尾監督は「『ポンポさん』はキャラクター自体がかわいくポップではあるので、声(芝居)もキャラクターに寄せると、”作られた感”が際立ってしまう。逆に声は、真剣なトーンもぶつかり合う時の重いトーンも、ナチュラルさを意識していました」と語った。

また、新谷が「実写作品の『ハケンアニメ!』では芝居でのキャラクター付けが強く、アニメ作品の『ポンポさん』では、アニメでありながらもキャラクターの芝居はより実写のようなナチュラルさがあり、ある種、逆転現象が起こっていてとてもおもしろいし興味深いです」と前のめりに感想を述べる。

クリエイターの産みの苦しみを描く『ハケンアニメ!』。天才監督王子役を中村倫也が務めた
クリエイターの産みの苦しみを描く『ハケンアニメ!』。天才監督王子役を中村倫也が務めた[c]2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

それを受け、吉野監督が「アニメは視覚的情報が多くビジュアルというところでどうしても体重をリアルに引き戻すために、声でバランスを取っているんですよね」と『ポンポさん』を称賛。すると平尾監督は「『ハケンアニメ!』がすごいのは、こういう経験あるよねという、真に迫るという心の機微が丁寧に描かれていて、一方そこがアニメーションは苦手な部分ではあって、その瞬間のひと言と、実写としての実際の人物が演じているリアルな表情の動き一つで一気に掴まれるんですよね。それだけでなく、途中に入る劇中のアニメーションや、実写パートとの場面転換含め、バランスよくまとめながら最後まで見せてくれるので、作品のファンタジーな部分が気にならない。そこが本当に良くできているなと思いました」と絶賛した。

その後も観客とのティーチインでは、アニメーション業界にまつわる話で大いに盛り上がった。イベントの最後には、吉野監督が「いまでもまだまだこうして実際に映画をご覧いただいた方々のコメントを直接伺うことができて、本当に励みになっています。本当にありがとうございます!」と感謝の気持ちを改めて伝える。

監督や声優はもちろん、各パートに携わるアニメ制作のプロフェッショナルにフォーカス
監督や声優はもちろん、各パートに携わるアニメ制作のプロフェッショナルにフォーカス[c]2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

平尾監督も「私もコロナ禍での上映などで厳しかったこともありましたが、お客様に支えられて『ポンポさん』はロングランできまして、『ハケンアニメ!』もまさにそのような状況で、内容もモノづくりや夢に対する肯定感を与えてくれるすばらしい作品なので、皆さんで『ハケンアニメ!』を応援していきましょう!」と呼びかけ、熱気に包まれたなか、イベントは幕を閉じた。

文/山崎伸子

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