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「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」で、飛翔する監督たちの新作3本から国内コンペ作品14作を一挙紹介!

コラム

「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022」で、飛翔する監督たちの新作3本から国内コンペ作品14作を一挙紹介!

志の高い野心作から評価の高い卒業制作映画まで、国内コンペティション部門長編6本

国内コンペティション部門は、デジタルで撮影、編集をされた2021年~2022年に完成した国内作品が対象となるが、本年は長編部門に59本、短編部門には160本の応募があったなか、選りすぐりの長編6本と短編8本がしのぎを削ることに。

国内コンペティション審査委員長は『トウキョウソナタ』(08)や『岸辺の旅』(15)などの黒沢清監督作品などを多く手掛けてきた撮影監督の芦澤明子が、審査員を『リング0 バースデイ』(00)などのJホラー監督、鶴田法男と、映画の小冊子誌「映画横丁」の編集人でライターの月永理絵が務める。

夏の終わりを目の前にした若者たちの群像劇『明ける夜に』

『明ける夜に』
『明ける夜に』[c]堀内友貴

男女2人の就活生、コンビニバイトの同僚2人、元高校球児とマネージャーという、置かれた状況も目的もまったく異なる男女6人が、夏の終わりに織りなす一夜の群像劇。本作は堀内友貴監督が、東放学園映画専門学校映画制作科の卒業制作として完成させた1本だ。8月31日の夕方から9月1日の夜明けまでの短い時間に、3組のストーリーをパラレルに進めながらも、後半に向かってそれぞれが徐々に近づいていく。シンプルな手法ながら、誰もが共感できる哀愁と焦燥を帯びた夏を終わりを目の前にした日を描いたことで、観る者がおのずと自己投影するような作品に仕上がっている。

スキルの低さに悩むエスパーを描く自主制作のSF作品『ブルーカラーエスパーズ』

『ブルーカラーエスパーズ』
『ブルーカラーエスパーズ』[c]daikikoboayashi2022

超能力者の旬作は、自分のスキルが低いことで、いい仕事が回ってこないとあがいていた。ある日、高校生の輔に自分の仕事がばれてしまうが、彼もエスパーであると知り、共に行動することに。主人公の旬作を演じる加藤千尚が、ヒーローになれない男の哀愁を好演。自主製作のSF映画は予算がネックとなりがちだが、派手なバトルシーンはなくとも、脚本と演出、俳優たちの演技により、各超能力者たちの能力を巧みに描き切った。また、『イソップの思うツボ』(19)の高橋雄祐が、本作でも物語のキーパーソンとなる盲目のエスパー役で存在感を発揮している。

※高橋雄祐の「高」ははしご高が正式表記

疑似夫婦がお互いを通じて見えたものとは?『ダブル・ライフ』

『ダブル・ライフ』
『ダブル・ライフ』

一緒に行くはずだったワークショップを夫にキャンセルされた詩織。同僚から代行業をしている淳之介を紹介され、彼女は夫役を依頼。淳之介に満足した詩織は、夫に内緒でアパートを借り、彼と疑似夫婦生活を始める。他人の体に触れ、そこから相手の気持ちを感じ取ることで自分の新たな感情に気づくという身体的かつ心理的アプローチが、劇中の疑似夫婦の展開と上手く絡んでいく。監督を手掛けたのは、中国の北京電影学院を卒業後、日本に留学し立教大学の大学院に進んだ余園園。同大学で教鞭をとる映画監督の万田邦敏教授の指導のもとで本作を完成させた。


深遠な問いを投げかける哲学系宇宙SF映画『Journey』

『Journey』
『Journey』[c]霧生笙吾

肉体から意識を解放することが可能となった近未来。宇宙飛行士になることを諦めて地球で働く慶次は、心を病む妻の静と暮らしていた。ある日、慶次は新たな宇宙開発の噂を聞き、静は意識のみの存在に憧れを抱き始める。本作は、今年武蔵野美術大学を卒業した霧生笙吾監督の卒業制作作品で、スタンリー・キューブリック監督作『2001年宇宙の旅』(68)や近年のジェームズ・グレイ監督の『アド・アストラ』(19)などの系譜に連なる哲学系宇宙SF映画。様々な映像言語を駆使して表現した近未来の画に、監督の鋭い感性を見ることができる。

全編マダガスカル撮影の異色作『ヴァタ ~箱あるいは体~』

『ヴァタ ~箱あるいは体~』
『ヴァタ ~箱あるいは体~』[c]FLYING IMAGE

マダガスカル南東部の小さな村で、長老が男たちを集め、出稼ぎの地で亡くなった少女ニリナの遺骨を持ち帰って来るよう伝える。その命を受け、ニリナの弟タンテリと3人の男たちは、楽器を片手に旅に出る。全編をマダガスカルで撮影した異色作。監督の亀井岳自身、マダガスカルの音楽を題材としたドキュメンタリー『ギターマダガスカル』(14)も手掛けている。その際に「マダガスカルで音楽と表裏一体の死生観に出会い、人と自然を超えていく生命の連鎖がテーマになった」と語っていたが、本作でもそのテーマがしっかりと息づいている。

底辺からもい上がろうとする兄弟を描く人間ドラマ『命の満ち欠け』

『命の満ち欠け』
『命の満ち欠け』[c]2022 K-zone.LLC.

兄ショウタは、薬物依存の更生施設から弟ユウサクを引き取り、その人生を基にした映画の脚本を執筆しながら弟に取材を始める。一方、新しい生活に馴染めないユウサクは、次第に薬物の禁断症状に苦しみ始める。生きることの苛酷さをただならぬ熱量で描きだした本作は、俳優の小関翔太と、撮影監督としても活躍する岸建太朗の共同監督作。自ら脚本を書いた小関は、青黒い顔色、落ちくぼんだ瞼と頬などで、薬物依存の弟役を熱演。岸は撮影監督も兼ね、少年時代の回想と花火のシーンなどを筆頭に、美しくも力強い映像で作品に崇高さを与えた。


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■SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022
日程:【スクリーン上映】7月16日(土)~7月24日(日)、【オンライン配信】7月21日(水)~7月27日(水)
会場:SKIPシティ 彩の国 ビジュアルプラザ 映像ホールほか
内容:国際コンペティション、国内コンペティション(長編部門、短編部門) ほか
URL:http://www.skipcity-dcf.jp/
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