「鎌倉殿の13人」前半戦を彩った、頼朝、義経、上総広常ら“生き様”が魅力的な英傑たち|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「鎌倉殿の13人」前半戦を彩った、頼朝、義経、上総広常ら“生き様”が魅力的な英傑たち

コラム

「鎌倉殿の13人」前半戦を彩った、頼朝、義経、上総広常ら“生き様”が魅力的な英傑たち

鎌倉幕府を開いた源頼朝(大泉洋)がその生涯を閉じ、息子の頼家(金子大地)へと“鎌倉殿”が引き継がれたことで、新たな章がスタートしたと言えるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。「新選組!」「真田丸」に続いて三谷幸喜が3度目の大河ドラマの脚本を手掛ける本作は、歴史書「吾妻鏡」をベースに、源平合戦や鎌倉幕府で繰り広げられる権力闘争を北条得宗家の祖となった北条義時(小栗旬)の視点で描いていく。

政子と共に幕府を守ろうとする義時(第30話「全成の確率」)
政子と共に幕府を守ろうとする義時(第30話「全成の確率」)

本作の見どころとして、魅力的な登場人物が次々と登場しては歴史の彼方へ消えていく展開や演出の妙、俳優たちの真に迫る演技などが挙げられる。そこで今回、より多くの視聴者の心に残ったと思われる登場人物をピックアップし、彼らの“生き様”を振り返ってみたい。

豪放ながらお茶目なところも魅力的だった上総広常

物語の前半戦で欠かせない登場人物といえば、佐藤浩市演じる上総広常だろう。上総国の豪族である広常は2万騎におよぶ兵力を持ち、平家打倒を目指す頼朝陣営にとっても必ず仲間に加えなければならない男。そういった経緯もあり、頼朝の挙兵にもあえて遅参するなど登場時は食えない男で、一筋縄ではいかない豪放さが印象的だった。この男を従えるには相当な苦労があるだろう…。そう思われたが、広常はしだいに頼朝の人柄に惹かれ、周りにはどう見えていようと、心のなかで強い忠誠を誓っていた。その距離感はほかの御家人よりも近い。広常にとって頼朝は、同志であり、自分たちを引っ張っていってくれる頼もしい棟梁であったのだろう。

なにかと頼朝に振り回される義時の相談相手にもなっていて、不器用さとお茶目さが垣間見えた広常。亀の前事件で、頼朝の愛妾、亀(江口のりこ)を預けられた時は、「ああいう女は好かねえ」と弱り顔を見せ、いつか、頼朝と京に上ることがあれば、文字の読み書きができないと恥をかく、と懸命に手習いをしていた。頼朝に対して、心から信頼していたのがわかり、その様子に心打たれた人も多いのではないか。そんな人間味あふれる広常だからこそ、頼朝に反感を抱く御家人たちへの見せしめとして、謀反の首謀者という名目で粛清されてしまう最期は、義時はもちろん、視聴者にも大きな衝撃を与えたに違いない。

源氏の争いに翻弄された悲劇のプリンス、源義高

信濃源氏の棟梁、木曾義仲(青木崇高)の息子である源義高(市川染五郎)の短い生涯も忘れられない。頼朝とは別に兵を挙げた義仲に対立する意志がないことを証明するため、人質として鎌倉に連れてこられた義高。表向きは頼朝の娘、大姫(落井実結子→南沙良)の婚約者ということで、若い2人の仲睦まじい様子は、苛烈さを増す物語のなかでちょっとしたオアシスのようになっていた。

そして、市川染五郎演じる義高がまた美しい。政子(小池栄子)や実衣(宮澤エマ)が彼のことを「良いお顔立ち」と言って褒めたが、あの言われ慣れている様子!そつのない振る舞い、それでいて蝉の抜け殻集めが好き、という少年らしいところがあったのもいい。が、大姫と義高の穏やかな日々は続かない。後白河法皇(西田敏行)の命によって義仲討伐が決まり、源義経(菅田将暉)が出陣していく。

鎌倉を発つ義経と義仲が最後に言葉を交わした場面は、本作の名シーンの一つだろう。自分が出陣するからには義仲に待っているのは死だと信じて疑わない義経。父が負けるはずがない、と義経に哀れみを抱いていた義高。静かで穏やかな義高の、実は激しい心の内が描かれていたからこそ、そのあとに彼に待ち受ける悲劇がより際立ったのかもしれない。

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