出産、女性の戦い、父と娘…「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」のショーランナー2人が明かす物語のテーマとは？

大ヒットドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の終了から3年、あの世界が再びファンの前に戻ってくる。8月22日(月)に日米同時で配信がスタートする「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」(日本はU-NEXTにて独占配信)は、「ゲーム・オブ・スローンズ」の200年前が舞台。主人公は、ドラゴンを操るターガリエンの一族。物語は、王の後継者を決めるにあたり、一番の候補者が女性だったことを理由に、彼女の従兄弟が選ばれるところから始まる。その時に生まれた“ひずみ”が少しずつ大きくなって、一族の関係を狂わせていく。

ショーランナー、製作総指揮を務めるのは、ライアン・J・コンダルとミゲル・サポチニク。コンダルは、原作者のジョージ・R・R・マーティンから直々に抜擢されたという。サポチニクは「ゲーム・オブ・スローンズ」の製作総指揮と監督も務めた、この世界のベテランだ。この2人は、マーティンによる原作を基に、キャラクターをふくらませ、それぞれのキャラクターに新たなストーリーを与えて、独自の物語を作り上げていった。

撮影が行われたのは、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの真っ最中。ただでさえ大規模な撮影だが、感染対策やこまめなPCR検査などを行ったものの次々に感染者が出て、相当な苦労があったようだ。いまやっと、めでたくもドラマは完成。ロサンゼルスでのプレミアが行われた前日の7月26日、このドラマにかける想いを2人に聞いた。

「『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』では女性が戦う姿が描かれる」(コンダル)

――「ゲーム・オブ・スローンズ」が終了する前から、このシリーズをその後どう続けていくのかについて、かなりの話し合いがなされたようです。そのなかではあらゆるアイデアが出てきたようですが、なぜターガリエン一族の話が選ばれたのでしょうか？

コンダル「『ゲーム・オブ・スローンズ』のファンは、ターガリエン一族のことをもっと知りたいと思っていたはずです。“ドラゴンの母”デナーリスはとても印象に残るキャラクターでしたから、人々は彼女に思い入れがありました。今作で、僕らはターガリエン一族の過去を描くことにしたんです。彼らはとても豊かで贅沢な暮らしをしていて、17匹のドラゴンを抱えています。親族には、叔父、従兄弟、甥、姪、王女などがいます。この一家は、このころ、最高の時代を過ごしていました。ここから彼らは転落していきます。本人たちは知らないけれど」

――「ゲーム・オブ・スローンズ」にもバイオレンスな描写はありましたが、今作の第1話には“出産”に関するバイオレンスな描写が出てきます。その要素を入れたのはなぜですか？

サポチニク「『ゲーム・オブ・スローンズ』には出てこなかった視点だからです。『ゲーム・オブ・スローンズ』でも、強い女性のキャラクターは登場しました。ですが、ストーリーは彼女たちの視点から語られるものではありませんでした。なのでそこを変えたいと思ったんです。パンデミックの前から、世の中では男女の不平等に対して声が挙がっていました。それもあって、今作は王の娘であるレイニラ・ターガリエンと、“王の手”の娘であるアリセント・ハイタワーという2人の女性を中心に語るのが正しいことだと感じたのです。この2人は互いに違うところから物事を見ます。そこに葛藤が生まれます。“出産”のシーンは、ストーリー上の必要性もありました。第1シーズンは20年間に起きることを描き、そこでは様々な世代の人々の物語が語られるので、誰かが産まれないといけません。それに、その時代、出産はとても危険なものでした。生き延びられるチャンスは五分五分だったんです。まさに女性にとっての戦場。男性が戦う姿は『ゲーム・オブ・スローンズ』でも描きましたが、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』では同じように女性が戦う姿を描きます」