挑戦を止めない横浜流星。「T.」誌面未掲載写真と共にひも解く、現在の心境と成長

インタビュー

挑戦を止めない横浜流星。「T.」誌面未掲載写真と共にひも解く、現在の心境と成長

俳優活動10周年を超え、ますますその勢いを増す横浜流星。日本映画界において確かな地位を確立しつつあるが、同時に異端性が強まっているのも興味深い。
2022年はNetflixオリジナルシリーズ「新聞記者」、テレビドラマ「DCU」、映画『嘘喰い』『流浪の月』と新作が連続して世に出た。ただ役柄の幅が広いだけでなく、横浜が任される役には独特の“濃さ”がある。それはすなわち、彼の個性であり、「横浜流星にしか演じられない」ゾーンが着実に厚みを増している証明でもあろう。

次に我々の前に現出するのは、池井戸潤の世界に挑んだ『アキラとあきら』(8月26日公開)。財閥の御曹司であるエリート銀行員・階堂彬に扮し、『きみの瞳が問いかけている』(20)の三木孝浩監督と再タッグを組んだ。オーラやカリスマ性がビシビシと放出されていくような“強い”キャラクターを、どう構築していったのだろう?

横浜流星と竹内涼真は本作で初共演を果たした
横浜流星と竹内涼真は本作で初共演を果たした[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

父親の経営する町工場が倒産し、過酷な運命に翻弄されてきた山崎瑛(竹内涼真)と、大企業の御曹司ながら、次期社長の座を拒絶し、血縁のしがらみに抗う階堂彬。奇しくも同じ名前を持つ2人は、日本有数のメガバンクに同期入社し、異なる信念ゆえに反発し合いながらも、ライバルとしてしのぎを削っていた。やがて“現実”という大きな壁に阻まれながらもそれぞれの信念を貫いた2人の運命は交錯し、共に階堂家の危機に立ち向かうことになる。

注目したいのは、本作で横浜が見せるたたずまい(姿勢)と声だ。帝王学を体現するようなシャープな立ち振る舞いに、張りのある発声。「内面を作るのは当たり前だけど、外見の部分も今回の作品ではすごく大事にしていました」と彼が語る階堂彬の作り方や今後のビジョンを、TOHOシネマズとTSUTAYA BOOKSで発売中の雑誌「シアターカルチャーマガジンT.[ティー]」47号の未掲載カットと共にお届けする。

「“言葉を強く言う”ことを意識していました」

「何回か池井戸潤さんの小説や映像化作品を観させていただき、キャラクターが強くてエンタテインメント性が高い作品が多いと感じていました。そして、今回初めて池井戸さんの作品の世界に入るにあたって、何度か“銀行指導”や講習を受けたんです。僕自身は銀行のシーン自体は多くはないのですが、知ることはすごく大事。そういったなかで、銀行マンはスーツをずっと着ているからこそ、そこには彬なりの愛情やこだわりがあると感じましたし、御曹司としての振る舞いは絶対に猫背じゃないなと思い、役作りに活かしていきました」。

横浜流星が演じるのは大企業の御曹司、階堂彬
横浜流星が演じるのは大企業の御曹司、階堂彬[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

つまり、「池井戸作品の住人になる」にあたって、個人的な命題だったのが“キャラクター化”だったということ。「半沢直樹」に始まり、「陸王」「空飛ぶタイヤ」等々、映像化されても池井戸作品には共通する個性が見られる。それをどのように表現していくかの手がかりを一つずつ探っていったのだ。本作で顕著な声色も、その一環。「三木監督の狙いが明快で、『山崎と階堂のキャラクターの対比をちゃんとつけたい』と初期段階でおっしゃっていました。最初のホン読み(撮影前に出演者が一堂に会して行う台本の読み合わせ)で、僕はどちらかというとナチュラルな感じでセリフを言っていたのですが『もっと対比を』と指示してくださって。そこで、本番では自分のなかで気持ち悪くならない程度に“言葉を強く言う”ことを意識していました」


父親の経営する町工場が倒産するなど、過酷な幼少時代を過ごした山崎瑛(竹内涼真)
父親の経営する町工場が倒産するなど、過酷な幼少時代を過ごした山崎瑛(竹内涼真)[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

この発言でもう一つ興味深いのは、本作における三木監督とのコラボレーションの仕方だ。三木監督といえば、ピュアな青春ラブストーリーの名手。レンズフレアを意識的に取り入れたセピア調の映像が頭に浮かぶ映画ファンも多いのではないだろうか。横浜自身も「池井戸さんの原作を三木さんがやるのもけっこう挑戦だと感じていました。いままで自分のなかでは恋愛映画のヒットメーカーというか、柔らかくて温かく、美しくて繊細な作品のイメージがあったので、三木さんがどう挑むのかは予想がつかなくて」と振り返る。

「三木さんは恋愛ものをやっているときはすごく乙女チックで、『きみの瞳が問いかけている』の時はご自身が明香里(吉高由里子)を演じてみせたりしていました。今回はまた違っていて、なんだか熱かった気がします。ご自身で演じられることもありませんでした。そういった意味でも新鮮でしたし、結果的に、すごくいい形で池井戸さんの原作と三木監督の化学反応が起こった気がしています。“銀行”という堅苦しいテーマだけどヒューマンドラマの要素があって、大人の社会派青春映画になっている。それはきっと、三木さんだからこそ作り上げられたものだと思います」。

対照的な性格の2人のアキラは真っ向から対立
対照的な性格の2人のアキラは真っ向から対立[c]2022「アキラとあきら」製作委員会

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