“真実の苦味”に迫る『沈黙のパレード』、心もお腹も満腹に『川っぺりムコリッタ』など週末観るならこの3本！
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、沈黙の裏に隠された真実に変わり者の天才物理学者と熱き刑事が挑む人気シリーズ最新作、荻上直子監督が、豪華キャストとともに“食”と“絆”を描くヒューマンドラマ、潜入捜査中の元警察官とサイコなヤクザがタッグを組み組織内でのし上がるクライム・エンターテイメントのの、深みのある3本。
人間模様に肉迫していく高揚感は「ガリレオ」の真骨頂…『沈黙のパレード』(公開中)
東野圭吾の人気小説を原作とする、大ヒットシリーズ劇場版第3弾。変わり者だが天才的頭脳を持つ物理学者の湯川学(福山雅治)、捜査一課の内海薫刑事 (柴崎コウ)、湯川の大学の同期でもある草薙俊平刑事(北村一輝)が9年ぶりに再集結した本作は、とある町で起きた不可解な二つの殺人事件の謎に挑むスリリングなミステリーだ。
定食屋「なみきや」を営む並木夫妻の長女である佐織が行方不明となり、数年後に遺体となって発見された。草薙とも因縁を持つ容疑者の蓮沼は完全黙秘を貫き、証拠不十分で釈放。そして夏祭りパレード当日に蓮沼が殺害されるが、佐織を愛する人々にはアリバイが…。愛、怒り、挑発、後悔、そして沈黙…振幅に富んだエモーショナルな人間ドラマに心揺さぶられる。
これまでも湯川が口にしていた“真実の苦味”という難題に考えさせられつつも、難攻不落と思えた事件の真相と複雑に絡みあった人間模様に肉迫していく高揚感は「ガリレオ」の真骨頂。軽快なテーマソングとともに、一抹の寂しさ漂うパレードの余韻をかみしめて欲しい。(映画ライター・足立美由紀)
束の間の癒しを相手にもたらしていく姿が心地よい…『川っぺりムコリッタ』(公開中)
観たあとにちょっと幸せな気分になる、荻上直子のオリジナル脚本による監督作。舞台は北陸。イカの塩辛工場で働くことになった松山ケンイチ演じる主人公は、社長の紹介で長屋のようなボロアパート「ハイツムコリッタ」に住むことになる。このアパートの住人を演じているのが満島ひかり、ムロツヨシ、吉岡秀隆という芸達者な面々で、彼らと松山との日常的な触れ合いが描かれていく。
ここの住人は誰もが大切な人を亡くしていて、松山も子どもの頃に生き別れた父親が孤独死した知らせを受け、その遺骨を引き取ることになる。どこか心に孤独と淋しさを抱えた住人たちが、触れ合いながら食卓を囲むことで、束の間の癒しを相手にもたらしていく姿が心地よい。松山が常食とするイカの塩辛、ムロが家の庭で育てている新鮮な野菜など、日々の食卓を彩る食材や料理も食欲をそそって、心とお腹に元気を与えてくれる、異色の群像劇になっている。(映画ライター・金澤誠)
観ているだけでアドレナリンがあふれだす…『ヘルドッグス』(公開中)
日本映画のアクションの可能性と限界を次々に塗り替えてきた岡田准一。そんな彼が、『関ヶ原』(17)、『燃えよ剣』(21)に続く原田眞人監督との3度目のタッグで放ったノンストップ・クライム・アクション！
関東最大のヤクザ組織に潜入した元警官の兼高(岡田)は組織内で最もヤバいサイコボーイ、室岡(坂口健太郎)と手を組み、のし上がっていくが…。原田監督が『KAMIKAZE TAXI』(95)などでも描いた日本のフィルム・ノワール(裏社会を描く暗黒街映画)を極めた本作だが、その緊張感が途切れないダークな世界観が俳優陣のキレッキレの芝居とアクションで作られているのだからたまらない。
汚いセリフを吐くこんなにワルの坂口はほかでは観たことがないし、ヤクザの一員、三神に扮したはんにゃの金田哲はお笑い芸人とは思えないクールなマスクが刃物のように鋭くて恐ろしい。さらに、ヤクザのトップ、十朱に扮したMIYAVIの妖しい美しさと迫力に目を奪われる。
そんなクセ者キャストたちが、ファイトコレオグラファー(殺陣の振付師)も兼任した岡田によるそれぞれのキャラに合ったアクションを炸裂！岡田自身も女アサシンとの実戦さながらのスリリングなバトルを繰り広げるし、観ているだけでアドレナリンがあふれだす。(映画ライター・イソガイマサト)
映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。
構成/サンクレイオ翼
