炊きたてご飯に塩辛、すき焼きに舌鼓…荻上直子監督作品に欠かせない”食”の味わい

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炊きたてご飯に塩辛、すき焼きに舌鼓…荻上直子監督作品に欠かせない”食”の味わい

かもめ食堂』(06)や『めがね』(07)など、ゆるやかにつながる人々の関係とゆったりとした時間の流れをフィルムに活写してきた荻上直子監督。最新映画『川っぺりムコリッタ』(公開中)は、北陸を舞台に “おいしい食”と “ささやかなシアワセ”を描く感動作だ。

【写真を見る】”白米を炊く才能”のある山田役を熱演した松山ケンイチの表情が絶妙…食べっぷりもいい!(『川っぺりムコリッタ』)
【写真を見る】”白米を炊く才能”のある山田役を熱演した松山ケンイチの表情が絶妙…食べっぷりもいい!(『川っぺりムコリッタ』)[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

北陸のとある町にある「イカの塩辛」工場で働くことになった山田たけし(松山ケンイチ)は、川べりに建つ「ハイツムコリッタ」で新たな生活をスタートさせる。金銭的に余裕のない山田の楽しみは、風呂上りの牛乳と炊き立てのホカホカごはん。誰とも接することなく静かに暮らしたいと思っていたものの、ある日、隣人の島田幸三(ムロツヨシ)が風呂を貸してほしいと押しかけてくる。その後も何かと部屋に上がりこむ島田や未亡人の大家の南詩織(満島ひかり)、幼い息子と共に墓石の訪問販売をする溝口健一(吉岡秀隆)ら住人たちと交流を重ねるうち、山田はその関係に居心地の良さを感じはじめる。

ロケ地はご当地塩辛「イカの黒作り」がある富山県(『川っぺりムコリッタ』)
ロケ地はご当地塩辛「イカの黒作り」がある富山県(『川っぺりムコリッタ』)[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

適度な距離感を保ちながら築かれる絆とスローライフの癒し

このつかず離れずの関係性は、荻上作品の特徴の1つとも言える。この構造は代表作『かもめ食堂』の頃から見てとれる。『かもめ食堂』はフィンランドの首都ヘルシンキを舞台に、日本人女性のサチエ(小林聡美)がオープンさせた「かもめ食堂」に集う人々の交流を映したヒューマンドラマ。食堂の看板メニューはおにぎりで、このほかにもシナモンロールやとんかつ、唐揚げ、肉じゃがなどが供され、食欲を刺激する。

南のおおらかでさっぱりした人柄も魅力的!(『川っぺりムコリッタ』)
南のおおらかでさっぱりした人柄も魅力的!(『川っぺりムコリッタ』)[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会


またコーヒーの消費量が世界トップレベルのフィンランドではコーヒーブレイクは欠かせない習慣だが、サチエはかもめ食堂で働くミドリ(片桐はいり)やマサコ(もたいまさこ)と共にしばしばコーヒー時間を楽しむ。その穏やかなスローライフが、本作が“癒し系”と呼ばれる所以だろう。

自称“ミニマリスト”の島田は家庭菜園で食材調達!(『川っぺりムコリッタ』)
自称“ミニマリスト”の島田は家庭菜園で食材調達!(『川っぺりムコリッタ』)[c] 2021「川っぺりムコリッタ」製作委員会

余談だが、実は荻上監督は大のコーヒー(&ビールも!)好きで、この作品でコーヒーが美味しく見える撮影方法をかなり研究したという。さらに本作には監督が愛するフィンランドの名匠アキ・カウリスマキの、『過去のない男』(02)で主演したマルック・ペルトラも出演。サチエにコーヒーを美味しくするおまじない「コピ・ルアック」を伝授する中年男性マッティ役に扮しているのでこちらもお見逃しなく。


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