「ONI」堤大介監督と岡田麿里にインタビュー!2人が心を寄せた、“はじかれ者”としての鬼|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「ONI」堤大介監督と岡田麿里にインタビュー!2人が心を寄せた、“はじかれ者”としての鬼

インタビュー

「ONI」堤大介監督と岡田麿里にインタビュー!2人が心を寄せた、“はじかれ者”としての鬼

10月21日よりNetflixリミテッドシリーズとして全世界190の国と地域へ配信中の「ONI ~ 神々山のおなり」。日本の民話を思わせる神さまや妖怪たちの世界を舞台に、理想と現実の間で揺らぐ少女おなりの成長と親子の絆を描く。監督を務めたのは、ピクサーで経験を積み、2014年7月にアニメーションスタジオのトンコハウスを設立した堤大介だ。

「ONI ~ 神々山のおなり」より
「ONI ~ 神々山のおなり」より[c] 2022 Netflix

短編アニメーション『ダム・キーパー』(14)がアカデミー賞にノミネートされてから7年、初の長編アニメーションと呼べる本作で堤監督がパートナーに選んだのは、脚本家の岡田麿里だった。同世代にして気が合う2人に、MOVIE WALKER PRESSが独占インタビュー。馴れ初めから、「聞かれないと報われないほど苦労した」というシーンまでを語ってくれた。

「模型を見た時『この作品、やるかも』って気がしたんです。おかしな話なんですけど」(岡田)

本作の監督を務めた堤大介
本作の監督を務めた堤大介[c] 2022 Netflix

――トンコハウスと岡田麿里さんというタッグは意外で新鮮な組み合わせです。一緒に仕事をすることになったきっかけを教えてください。

堤「岡田さんのお仕事は以前から知っていて、絵本『ダム・キーパー』をお送りしたこともありました。その後『ONI』の概要が決まり、ハリウッドで脚本家を探したのですがなかなかうまくいかない。その時たまたま『ひそねとまそたん』を見たら、脚本が岡田さんだった。僕は岡田さんの作品だと『心が叫びたがってるんだ。』が一番刺さっていたのですが、『ONI』に参加してほしいと思った決め手は岡田さんが不登校児だった経験も含めて書いた自叙伝(『学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで』)です。僕は自分自身をさらけ出すような、内側に入っていくお話を作りたいと考えていて、今回の『ONI』もそうでした。だから、ここまで自分をさらけ出すことができる岡田さんに参加してほしいと思ったんです。でも連絡先がわからないので、日本脚本家連盟のWEB伝言板に『岡田麿里さんと連絡がとりたいんです』って書きました(笑)」


岡田「(笑)。伝言板経由で連絡をいただいた時には、まだ『ONI』をやるというお話ではなかったんです。2019年のトンコハウス映画祭に行った時、待合室に『ONI』のパイロット版で作ったおうちの模型が展示してあって、それを見た時『(私)この作品、やるかも』って気がしたんです。おかしな話なんですけど」

「ONI ~ 神々山のおなり」の脚本を務めた岡田麿里
「ONI ~ 神々山のおなり」の脚本を務めた岡田麿里[c] 2022 Netflix

――『ダム・キーパー』はヨーロッパの雰囲気がある世界観でしたが、「ONI」は鬼や妖怪が出てくる和風の世界観です。

堤「もともと違う企画をアメリカのNetflixと進めていました。その時に『ほかにもこんな作品の企画開発もしていますよ』と見せたなかに『ONI』もあったんです。そうしたらその場で『こっちをやりましょう』と。驚きました。ここまでコテコテの日本文化の民話ベースのものに興味を持ってもらえると思わなかったので」

天狗になま&はげ、アン・ブレラにたぬきんたなど日本の神様や妖怪をモチーフにしたキャラが集結
天狗になま&はげ、アン・ブレラにたぬきんたなど日本の神様や妖怪をモチーフにしたキャラが集結[c] 2022 Netflix

岡田「私が参加した時はにはもう、主人公のおなりやなりどんの秘密など、根幹の部分は決まっていました。そのうえでシリーズとして、どの話数から見ても気軽に楽しめるような作りになっていて。でも堤監督の企画書には、監督自身の経験から生まれてくる『いま、なぜこの作品を届けたいのか』という想いがはっきり書かれていたんです。それらは物語の根幹に強く結びつくところだったので、そこをもっと深く掘り下げてみたいと思いました。監督のパーソナルな部分に踏みこんだ物語にしていくことで、逆に多くの人が共感できる物語になるのではないかと」

「自分は自分をどう受け入れていくのか。それと『よそ者が鬼である』というアイデアを組み合わせた物語を作りたかった」(堤監督)

――おなりは、なりどんという神様をお父さんに持つ女の子です。なりどんは“赤鬼”に似たルックスをしています。

学校で“ヘンテコな父親”とからかわれても、おなりはなりどんとめいっぱい遊ぶのが大好き
学校で“ヘンテコな父親”とからかわれても、おなりはなりどんとめいっぱい遊ぶのが大好き[c] 2022 Netflix

堤「鬼と呼ばれる存在は、もともと日本に漂着した外国人だったのではないかという説がありますよね。あれが今回のアイデアの一つです。日本列島に住んでた人たちと、あまりにルックスが違うことで恐れられてしまった。そういうお話をずっとやりたかったんです。その一方で、僕は30年前ぐらいにアメリカに移ってずっと外国人として生きてきたので、“よそ者”っていうことにすごく敏感なんです。『見た目が違うからこう思われる』ということが日常茶飯事で。それは外国人だからというだけでなく、いろんな局面であらゆる人が感じる普遍的な感覚でもあります。そこを踏まえた上で、自分は自分をどう受け入れていくのか。それと『よそ者が鬼である』というアイデアを組み合わせた物語を作りたかったんです。どういうストーリーでそこに到達するかは見えていませんでしたが、絶対に外せないと考えていました」

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