【連載】「MINAMOの話をきいてミナモ?」 第8回 元汚部屋住人の三度の気づき
自分に合わないことをしてもQOLは上がらない
自分の自堕落な生活にようやく羞恥心を覚えたのち、私は図書館で「西の魔女が死んだ」という小説を見つけた。中学1年生のまいという少女がある事がきっかけで不登校になり、母方の祖母の家に預けられる。祖母との生活の中で、たくさんの教えや知恵を身につけてまいは大きく成長する。
手作りのジャムに、ラベンダーの上に干した布団。ここに描かれている丁寧な暮らしぶりを見て私はハッとさせられたのだ。今までの生活はなんだったのだと。まいの祖母の口から語られる、しかる訳でもなく、甘やかす訳でもない優しい言葉に癒され、自然と共に生きるその暮らしぶりに魅せられた当時の私はすっかり目が覚めた。こんなふうに丁寧に生きたい、と。今思い返せばその時の私はまいの祖母の言葉を理解したようでしていなかった。ただ「憧れ」の念を持つばかりだった。
そんな、"目覚めたつもり"の私は質の良い、丁寧な暮らしを送ろうと、意気込んでいろんな挑戦をしてはことごとく失敗した。早寝早起きはもちろんのこと、ベッドメイキングや毎日の水回りの掃除、朝のウォーキングなど。どれも見事に続かなかった。未だに続かないのは日記である。最初に紙の日記を諦めた私はアプリの日記に挑戦した。だがそれすら続かず、毎日24時に「今日の出来事を一言だけでも書いてみましょう」とアプリから通知が来る始末である。だが私はそんなことで屈する女ではない。今もなお日記アプリの奴は私のスマホにいるが、24時の通知で一日の終わりを教えてくれる便利なアプリと化している。自分に合わないことをしてもQOLは上がらないことを学んだ。
そんな折、小説「かもめ食堂」に出会った私は、またハッとさせられる。豊かな食生活を芯とし、地に足のついた生活を築いてゆく主人公サチエの魅力に囚われたのだ。フィンランドでのゆったりと流れるように送られる日常は読んでいて心地よい世界に浸れる。そして、内側ばかりに向いていた私の狭い視野を広げてくれた。力んで生きなくても、美味しいご飯を食べて、近くにいる人を大切にする。それが一番幸せじゃないかと、生きる良さをこの本の緩やかな文章と共に教えてもらったのだ。質の良い暮らしをするためにどれだけいろんなチャレンジをしたとして、失敗ばかりなはずである。早起きも日記も掃除も、やりたくてやったことではない、私が自分自身に課した課題と化してしまっていたのだから。
京都府出身。2021年6月にSOFT ON DEMANDよりAV女優としてデビュー。趣味は映画&レコード鑑賞、読書。
YouTubeにて「MINAMOジャンクション」を配信中。
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