“いま描かれなければ”新海誠監督の覚悟『すずめの戸締まり』、母親という大きすぎる存在『わたしのお母さん』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
“いま描かれなければ”新海誠監督の覚悟『すずめの戸締まり』、母親という大きすぎる存在『わたしのお母さん』など週末観るならこの3本!

コラム

“いま描かれなければ”新海誠監督の覚悟『すずめの戸締まり』、母親という大きすぎる存在『わたしのお母さん』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、新海誠監督が、ヒロインの少女が困難にぶつかりながらも成長していく様子を描いたファンタジー、一人の女性が葛藤を乗り越えていく井上真央&石田えりによるドラマ、水上勉のエッセイをベースに、妻を亡くし遺骨を埋められずにいる作家の男性が変化を映す人間ドラマの、人々が前へ進む姿に胸を打たれる3本。

自然の怖さと美しさが体感できる…『すずめの戸締まり』(公開中)

【写真を見る】早くも口コミ続出!新海誠監督も「いま、日本で一番おもしろい映画かもしれない」と自信を寄せる『すずめの戸締まり』
【写真を見る】早くも口コミ続出!新海誠監督も「いま、日本で一番おもしろい映画かもしれない」と自信を寄せる『すずめの戸締まり』[c]2022「すずめの戸締まり」製作委員会

『君の名は。』(16)、『天気の子』(19)の新海誠監督が贈る最新作。完成報告会見で新海監督が「日本で一番おもしろい映画かもしれない…」と自信をのぞかせた本作は、九州の静かな田舎町で暮らす17歳の岩戸鈴芽(声:原菜乃華)が、災いをもたらす扉を閉めることを使命とする“閉じ師”、宗像草太(声:松村北斗)と出会い、日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる扉を閉めていく冒険物語。

主人公すずめの解放と成長を描く物語で、新海監督は震災を明確に描き込んでいる。「いま描かなければ、遅くなってしまうのではないか」と話す新海監督の覚悟が、ビシバシと伝わってくる意欲作だ。観たことのない圧巻の映像表現に驚かされながら、知ること、感じること、共有することの大切さを考え、自然の怖さと美しさが体感できる。(ライター・タナカシノブ)

息苦しさのあと、愛しさが込み上げてくる…『わたしのお母さん』(公開中)

あることをきっかけに再び母と同居することになった娘の姿を映しだす『わたしのお母さん』
あることをきっかけに再び母と同居することになった娘の姿を映しだす『わたしのお母さん』[c]2022「わたしのお母さん」製作委員会

夫と二人暮らしの夕子のもとに母の寛子が現れ、突然、同居することに。三人姉弟の長女の夕子をいまだ子ども扱いする母。外面では社交的で誰とでも仲良くなる母だったが、うちでは感情の起伏の激しい彼女に夕子は幼い頃から翻弄されてきた。唯一、自分の味方であってほしい夫にまで「いいお母さんだと思うよ。大切にしないと」と言われ、夕子は次第に追い詰められていく。

天真爛漫でマイペースな母を石田えりが演じ、威圧感のある風格が絶妙で、母を畏怖する娘役の井上真央の怯え、諦め、脱力を生々しく引きだす。なにが起きるでもなく静かに流れていく物語と多くの娘たちがかつて言われたであろう言葉の数々に誰もが自分の母の姿を重ねずにはいられない。近すぎて本当のことを言えない。嫌われたくなくて、なにもできない。母親という大きすぎる存在。息苦しさのあと、愛しさが込み上げてくる。(映画ライター・高山亜紀)


これからの生き方を考えるヒントや手がかりが隠れている…『土を喰らう十二ヵ月』(公開中)

山や畑で採れた食材を使って四季折々の料理を味わう作家の暮らしを切り取る『土を喰らう十二ヵ月』
山や畑で採れた食材を使って四季折々の料理を味わう作家の暮らしを切り取る『土を喰らう十二ヵ月』[c] 2022 『土を喰らう十二ヵ月』製作委員会

『ナビィの恋』(99)の中江裕司監督が作家、水上勉の料理エッセイを原案に撮り上げた本作は、沢田研二が扮した長野の山荘で犬と暮らす作家のツトムの1年間を、彼が作る料理の数々で見つめたヒューマン・ムービー。

ツトムは山の実やきのこ、畑で育てた野菜を自ら料理し、季節の移ろいを感じながら原稿を書く日々を送っている。彼の楽しみは東京から時折訪ねてくる編集者で恋人の真知子(松たか子)と旬の食材を料理して食べることだったが…。

日本映画では異例の1年6ヶ月の撮影で日本の四季を映しだす本作の最大の見どころは、映画初参加の料理研究家、土井善晴が、スタッフが畑で実際に育て、収穫した旬の食材で再現した原作の料理の数々だ。彼が指導した沢田の料理の手さばきも美しく、季節を感じる懐かしい料理の数々が、それらを笑顔で食べる松たか子の生っぽい芝居と相まって本当に美味しそう。

悠々自適な日々を送るツトムのスローライフ、地元の人たちとの助け合い…シンプルだけど人間らしい豊かな暮らしが忘れていた大切なことを思い出させてくれる。もちろん、それだけではない山暮らしの厳しさやリアルな問題もくっきり。コロナ禍で生活そのものが変わってしまった現代。本作には、これからの生き方を考えるヒントや手がかりが隠れている。(映画ライター・イソガイマサト)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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