清水崇監督が特別寄稿!『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に期待することとは?|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
清水崇監督が特別寄稿!『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に期待することとは?

コラム

清水崇監督が特別寄稿!『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』に期待することとは?

2009年に公開され、いまなお世界興行収入歴代1位に君臨するジェームズ・キャメロン監督作『アバター』。12月16日(金)に続編となる『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開を迎える。3D映像革命を起こし、日本でも社会現象を巻き起こした前作から13年。キャメロンが新たに挑む映像世界に、映画ファンのみならず、日本を代表する映画監督やクリエイターたちからも注目が高まっている。

そこでMOVIE WALKER PRESSでは、『THE JUON/呪怨』(04)で全米No.1ヒットを果たし、近年は『犬鳴村』(20)から始まった「恐怖の村」シリーズでホラーシーンを牽引、最新作『忌怪島/きかいじま』が2023年に公開を控える清水崇監督に、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』への期待をテーマに特別寄稿してもらった。

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は12月16日(金)公開
『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は12月16日(金)公開[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

時に未来を、時に過去を憂い…J・キャメロン監督は、常にそれをエンタメで成し遂げてきた

【写真を見る】ジェームズ・キャメロンがこだわった“水”の表現に期待が高まる!
【写真を見る】ジェームズ・キャメロンがこだわった“水”の表現に期待が高まる![c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

その時代を先取りした、真新しい技術でその時代に寄り添った、原点回帰/自然回顧の思想/思考を描く――時に未来を、時に過去を憂い…J・キャメロン監督は、常にそれをエンタメで成し遂げてきた。

前作の公開前、日本配給の宣伝関係者たちが頭を抱えていたのを、僕は目撃していた。「知られたスターも出て来ない」「多少知った俳優が出てきたかと思えば、青い巨人と化している」「架空の星で架空の文化圏の話が展開する」…それが「巨大な規模の超大作」…ごもっとも、と感じた。誰が見るのか?見たいのか?どう宣伝すべきなのか?「いや、これ…『タイタニック』の監督作だから!」と推されながら公開された。しかし、蓋を開けると、一般のお客様方からもお見事!な関心度と興行成績を挙げてみせた。大した所業だ。

久々に前作『アバター』のリマスター版をIMAX3Dで鑑賞し、改めて、そのスタンスは彼の性分や性癖に根差しているのだろう…と感じた。初公開当時、僕は『アバター』を観て、幾つもの作品が脳裏に蘇った。それは彼が公言している通り、日本のジブリ作品(『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『もののけ姫』などなど…)も勿論だし、更に言えば諸星大二郎氏の漫画などにルーツは至るのだが…もっとも大きかったのは『ビルマの竪琴』と『ダンス・ウィズ・ウルブズ』だ。自らのルーツを探求し、過去の凄惨な歴史も含めて回顧し、自然への畏敬の念と本来あるべき人の生き様を想わせ、提議して魅せる。

森を追われたジェイクとネイリティの家族は、海へと逃げるが…
森を追われたジェイクとネイリティの家族は、海へと逃げるが…[c]2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

常に一歩二歩先の最新技術を駆使しながら、そんな自身のスタンスすら否定するようなテーマは他作でも変わる事無く、徹底した程に同じプロットの展開/構成でありながら毎回見事な娯楽性を伴い、観客を満足させる手腕には毎回舌を巻く。そこには、自然(緑と水)、時間、科学技術、SEXへの抵抗と罪悪感が見てとれる。自身の現状に物足りなさや悩みを感じている主人公…ふとした運命的な出会いを通し、アイデンティティを確立させながら、大きな挑戦と挫折を経験し、否応なしに宿命的な敵との闘い、克服へと昇華していく。そして、その挫折の直前には必ずSEXが絡み、象徴的な“男根破壊”モチーフが描かれる。『タイタニック』では豪華客船が真っ二つに折れ、『アバター』では大樹が撃ち倒された…新作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』では、どんなモチーフが!?


『ランボー怒りの脱出』(脚本)、『エイリアン2』、『ターミネーター2』など、続編においても見事な成功例を見せてきてくれたJ・キャメロン監督の新たな続編!そんな目線でも楽しみだ!!

文/清水 崇

■清水崇
映画監督。1972年生まれ、群馬県出身。大学で演劇を学び、助監督を経て98年に監督デビュー。オリジナル企画「呪怨」シリーズ(99~06)はVシネ、劇場版を経てハリウッドリメイク。日本人監督初の全米No.1に。近作に『犬鳴村』(20)、『樹海村』(21)、『牛首村』(22)の“恐怖の村シリーズ”3部作。ホラー以外にも『魔女の宅急便』(14)、『ブルーハーツが聴こえる/少年の詩』(17)、『ホムンクルス』(21)など。プラネタリウム映写の科学映画『9次元からきた男』(16)が上映中。最新作『忌怪島/きかいじま』が2023年に公開を控える。

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