美術や風景にも心奪われる『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』、ミステリーとしての醍醐味も…『かがみの孤城』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
美術や風景にも心奪われる『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』、ミステリーとしての醍醐味も…『かがみの孤城』など週末観るならこの3本!

コラム

美術や風景にも心奪われる『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』、ミステリーとしての醍醐味も…『かがみの孤城』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、ダニエル・クレイグが変わり者の探偵に扮し事件解決に奔走する人気ミステリーの第2作、辻村深月の小説を原恵一が映像化し、学校生活に思い悩む中学生たちの1年を描くアニメ、三浦透子演じる恋愛感情を持たない主人公が家族や友人、お見合い相手と向き合っていくドラマの、考えさせられる3本。

細部までサービス精神満点の一作…『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』(公開中)

【写真を見る】エドワード・ノートン、デイヴ・バウティスタ、ジャネール・モネイら豪華キャストが競演!(『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』)
【写真を見る】エドワード・ノートン、デイヴ・バウティスタ、ジャネール・モネイら豪華キャストが競演!(『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』)Netflix映画『ナイブズ・アウト:グラス・オニオン』12月23日(金)より独占配信

「007」を引退したダニエル・クレイグにとって、新たな当たり役となったのが探偵、ブノワ・ブラン役。前作のイギリス郊外とはうって変わり、この続編はギリシャのリゾートアイランドを舞台に、ブランが豪邸での難事件に挑む。億万長者のマイルズ(エドワード・ノートン)が、友人たちを島に招待するのだが、なぜかブランもその一人として到着。マイルズが仕掛けた“ゲーム”をきっかけに思いも寄らぬ事態へ発展していく。招待されたメンバーは、誰もがマイルズとは複雑な関係。しかもブランが島に来た理由も事件に深く関与していた…。

登場人物すべてに動機があり、外部から侵入できない閉ざされた空間。殺人ミステリーとしては王道の設定が用意されたうえ、ゴージャスな美術や衣装、陽光きらめく島の風景に目が奪われまくり、ここまで観ていてテンションが上がる作品も珍しい。事件自体はシリアスなのだが、前作以上に笑えるシーンやセリフも詰め込まれており、そのバランスも絶妙。クレイグを中心にキャストたちも、心から楽しんでいる様子が伝わり、それが作品の魅力になっている。前作では描かれなかったブランの私生活や、一瞬だけ登場する有名人など、細部までサービス精神満点の一作だ。(映画ライター・斉藤博昭)

世代を超えた人間ドラマの魅力が見事に両立…『かがみの孤城』(公開中)

辻村深月の人気小説を、原恵一監督で劇場アニメ化した『かがみの孤城』
辻村深月の人気小説を、原恵一監督で劇場アニメ化した『かがみの孤城』[c]2022「かがみの孤城」製作委員会

2018年に「本屋大賞」を史上最多得票数で受賞した辻村深月の傑作小説が劇場アニメ化。監督は『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)など、大人も泣けるアニメーションの名手として知られる原恵一。制作は『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(13)をはじめ、繊細な青春群像ストーリーを多く手がけるA-1 Picturesが担当している。

ある日突然、鏡の中に吸い込まれた少女こころ(声:當真)が行き着いた先は、海にかこまれた不思議な孤城。彼女はそこで出会った6人の中学生とともに、願いを叶えることができるというカギを探すことになる。様々な理由で学校に行けなくなった中学生たちが、異世界の密室(城)の中で謎を追っていく。約1年という長い期間、城と現実世界を行き来できるという設定がポイントで、城での交流を糧に、彼らが現実を生き抜く力をつけていく過程が丁寧に描かれていく。思春期特有の痛みを生々しく描く一方、ミステリーとしての醍醐味もばっちり。張りめぐらされた伏線が、パズルのピースがはまるように次々と回収されていくクライマックスの感動は圧倒的だ。繰り返し観たくなるサスペンス的仕掛けと、世代を超えた人間ドラマの魅力が見事に両立している。(映画ライター・石塚圭子)


自分らしく生きようとする姿を等身大に綴る…『そばかす』(公開中)

恋愛感情を抱かない女性が、周囲や自分、将来と向きあっていく『そばかす』
恋愛感情を抱かない女性が、周囲や自分、将来と向きあっていく『そばかす』[c]2022「そばかす」製作委員会

ドラマ「恋せぬふたり」でも描かれ、大きな反響を呼んだ“恋愛感情を持ち合わせない”人を主人公に据え、周りの理解を得られず葛藤する姿、生きづらさ、それでも自分らしく生きようとする姿を等身大に綴った青春映画。30歳の佳純は音楽を志すも挫折し、コールセンターで苦情処理をしながら家族と同居している。ある日、母親が勝手にセッティングした見合いに連れだされるが、なんと相手も恋愛にも結婚にも興味がないという。すっかり意気投合した2人は、その後もしばしば会うようになるが。

「恋せぬふたり」のように相手も自分と同じハズが…という展開がミソ。佳純が旧交を温める元AV女優の元同級生に対する周囲の好奇の眼差しや態度のウザさも相まって、なんで人間って自分の価値観で他人を測ったり勝手に哀れんだり盛り上がったりするんだよ、と観ながらイライラ怒り心頭!とはいえ佳純を演じる三浦透子自身がまとうユーモラスな空気や強い存在感が、暗さやネガティブさを吹き飛ばし、元AV女優役、キレかける演技をさせたら右に出る者なしの前田敦子とともに、力強く爽快な風を吹かせてくれる。“いるいる”な佳純の母と妹、バツ3で口の悪い祖母、半ひきこもりの父などのキャラやその家族関係もいい味。物語に惹き込むアサダアツシの脚本(映画『his』(20)など)、監督、玉田真也の演出もいい塩梅!(映画ライター・折田千鶴子)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

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