「まどマギ」「PSYCHO-PASS」「REVENGER」“虚淵玄”の特異性とは?名前だけで覚悟と興奮を覚える魅力|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「まどマギ」「PSYCHO-PASS」「REVENGER」“虚淵玄”の特異性とは?名前だけで覚悟と興奮を覚える魅力

コラム

「まどマギ」「PSYCHO-PASS」「REVENGER」“虚淵玄”の特異性とは?名前だけで覚悟と興奮を覚える魅力

ストーリー原案とシリーズ構成を虚淵玄(ニトロプラス)が手掛けることで話題となっている新作テレビアニメ「REVENGER」。虚淵といえば、「魔法少女まどか☆マギカ」を筆頭に、「Fate/Zero」や「PSYCHO-PASS」などダークな世界観を持った作品に携わってきたことで有名。それだけに「REVENGER」では、どれほど過激な展開と伏線回収が繰り広げられるかにも注目が集まっている。ここでは、虚淵がこれまでに手掛けた作品に触れながら、その特殊な作品性を紐解いていく。

代理で復讐を行う殺し屋たちの暗躍を描く「REVENGER」

【写真を見る】信じていた者に裏切られ、居場所を失くした男の物語…最新作「REVENGER」も目が離せない!
【写真を見る】信じていた者に裏切られ、居場所を失くした男の物語…最新作「REVENGER」も目が離せない![c]REVENGER製作委員会


信じる者から裏切られ絶体絶命の危機に陥った雷蔵(声:笠松淳)は、蒔絵師の幽烟(声:梅原裕一郎)、元海賊の町医者、徹破(声:武内駿輔)らからなる町の”利便事屋”に救われる。しかし利便事屋は、力なき人々の復讐を代行する殺し屋”REVENGER”だった。

「REVENGER」は、ニトロプラス×松竹が贈るオリジナル作品。キャラクターデザインは、「刀剣乱舞」シリーズのキャラクターデザインや「学園K」の連載などを手掛ける漫画家でイラストレーターの鈴木次郎。制作は「忍たま乱太郎」の亜細亜堂が担当し、「怪物事変」や「終末のイゼッタ」などの藤森雅也が監督を務める。そして、ストーリー原案とシリーズ構成を務めるのが虚淵だ。虚淵がテレビアニメのストーリー原案を手掛けるのは、2013年の「翠星のガルガンティア」以来約10年ぶりとなる。

ダークな世界観を得意とする脚本家、虚淵玄とは

シナリオライター、小説家であり、パソコン用ゲームメーカーの株式会社ニトロプラス取締役という肩書きも持つ虚淵。現在はテレビアニメの原案、シリーズ構成、脚本のほか、Netflixで配信されたアニメ映画『バブル』(22)の脚本に共同執筆で参加し、テレビや舞台など様々な作品を手掛けている。

その原点は、「Phantom -PHANTOM OF INFERNO-」や「吸血殲鬼ヴェドゴニア」など、ニトロプラスを代表する18禁PCゲームのシナリオライターとしてのキャリアだ。そこではテレビアニメでは表現不可能な、性や暴力などの過激な設定やシーンが数多く描かれた。2008年からテレビアニメのシリーズ構成、脚本を手掛けるようになると、社会の裏側や影に隠された闇の部分にスポットを当てた「ブラスレイター」や、少年少女が宇宙戦争に身を投じていく「アルドノア・ゼロ」、戦いの舞台を宇宙へと移したアニメ映画「GODZILLA」シリーズなど、根底にあるダークな世界観はそのままに、オリジナリティあふれる設定や緻密なストーリー構成で人気を集めた。

とにかくまず観てほしい「魔法少女まどか☆マギカ」

「魔法少女まどか☆マギカ」は、虚淵の作品性が顕著であり、彼の名を知らしめるきっかけとなった。「魔法少女」という言葉と蒼樹うめによるかわいらしいキャラクターからは、キラキラとした美少女ファンタジーを想像するが、それとは対照的に非常に生々しくダークなストーリーが話題を集めた。簡単に言えば、願いが叶えられる代わりに魔法少女となって魔女と戦う少女たちの姿を描いたものであるが、“魔法少女モノ”のお約束や定番がことごとく覆されていく。例えば、本来ならまっ先に魔法少女になるはずの主人公の鹿目まどか(声:悠木碧)は、最後まで魔法少女にならない。戦隊モノだったら最後まで一緒に戦うはずのメインキャラクターの一人、巴マミ(声:水橋かおり)が、早々に絶命することで、死と隣り合わせの恐怖が一気に押し寄せる。ここまで死と直結した魔法少女モノはかつてなかっただろう。

さらに少女たちを魔法少女になるよう勧誘するキュゥベえ(声:加藤英美里)は、最初は小動物のマスコット的な雰囲気だが、真の目的のための道具としか少女たちを見ていなかったことがわかると、あのかわいさが余計に怖くなる。それまでの魔法少女モノに絶対的に欠けていたものをあぶり出し、願いを叶えるということの本質を深く捉えた作品。ほかの作家への影響は大きく、その後、数多くのダーク系魔法少女モノが生まれるきっかけとなった。

魔術師たちによる救いのない物語「Fate/Zero」

願いを叶えるという思いが、登場人物の行動理念になっている作品としては、奈須きのこの原作による「Fate/stay night」が挙げられる。その前日譚となる「Fate/Zero」の原作小説を手掛けたのも虚淵だ。日本の架空都市、冬木市を舞台に、願いを叶える“聖杯”を巡って7人の魔術師たちが伝説上の英雄をサーヴァントとして召喚し戦うというストーリー。聖杯を手に入れることがそれぞれの一族の悲願であり、目的のためには手段を選ばず、その非道さが実にリアルに描かれた。

なかでも間桐家の当主、間桐臓硯(声:津嘉山正種)は見た目も考えもおぞましく、またキャスターとそのマスターである雨生龍之介は鬼畜。グロテスクなシーンもぼかすことなくリアルに描かれ、「Fate/stay night」ではメインキャラクターの一人として登場する、幼少期の間桐桜(声:下屋則子)のシーンは目を背けたくなるほど悲惨。遺恨のみが残るという結末だが、それが「Fate/stay night」の物語の引き金となる。サーヴァントの一人であるライダー(声:大塚明夫)の気持ちのいい豪快さとウェイバー・ベルベット(声:浪川大輔)の普通さ、桜を助けるために自らを差し出す間桐雁夜の優しさだけが、唯一の救いだろう。

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