“国民的年下彼氏”チョン・ヘインが主演作「コネクト」で見せた、孤独を越える強さ|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
“国民的年下彼氏”チョン・ヘインが主演作「コネクト」で見せた、孤独を越える強さ

コラム

“国民的年下彼氏”チョン・ヘインが主演作「コネクト」で見せた、孤独を越える強さ

「ハ・ドンスという役は“孤独”の中で生きているキャラクターだ。その演技はとても難しい。こんなに美しい人が孤独でないわけがないと思うが、そんな彼がハ・ドンスを上手く表現してくれて感謝している」Disney+で現在配信中のサイコ・サスペンスドラマ「コネクト」の三池崇史監督は、主役のチョン・ヘインについてこう表現した。平凡な青年ドンスは、ある夜臓器密売組織に拉致される。しかし手術の最中に突如覚醒し、脱出。彼は身体の傷口を自分自身で治癒・再生できる新種の人類“コネクト”だった。片目を奪われたドンスは、時折訪れる幻覚により自分の目が巷を騒がせている連続殺人鬼ジンソプ(コ・ギョンピョ)に移植されたと知る。凶行を止めて片目を取り返すため、ドンスはジンソプに死闘を挑む。

「コネクト」の主人公は不死身の身体を持つ孤独な青年ドンス(チョン・ヘイン)
「コネクト」の主人公は不死身の身体を持つ孤独な青年ドンス(チョン・ヘイン)[c]2022 Disney and its related entities

邦画で数多くの“原作もの”を手がけ、リミッター無しのバイオレンスが熱狂的マニアを生んできた三池崇史監督と、特殊メイクのオーソリティーCELLが手がけたゴア描写の凄みが加わった「コネクト」は、ジンソプの猟奇的な殺人や、“コネクト”の身体が破壊され再生していく様相といったハードなシーンに見応えが詰まっており、シーズン1とまだ序盤ながら、ジャンル映画の巨匠の面目躍如たる作品に仕上がっている。一方で、ドラマに漂うダークな雰囲気には、三池監督が示したようにドンスが抱える“孤独”という繊細な内面も一役買っている。チョン・ヘインは仔犬のように可愛らしい青年だが、俳優として役に入ると一転、深い海の底に沈んだような寂しさを見せる瞬間がある。私たちは切なさと共感を抱いてきた。今回はチョン・ヘインのフィルモグラフィーを紐解きつつ、役者としての尽きない魅力を掘り下げてみたい。

孤独な“国民的年下彼氏”が分け与えてくれた温かな愛

「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」でチョン・ヘインが演じたのは、姉の親友ジナ(ソン・イェジン)と恋に落ちるゲームデザイナーのジュニだった。落ち着いた声で「ヌナ(男性から年上女性に対する呼称)、ご飯おごって」と甘える愛くるしさと、いざという時の頼もしい姿が多くの視聴者の心を掴み、“国民的年下彼氏”の称号を得ることになった。

出張先へ送迎したりと、ジュニはジナを献身的に支える
出張先へ送迎したりと、ジュニはジナを献身的に支える[c]JTBC

チョン・ヘインとソン・イェジンの熱愛疑惑が取り沙汰されるほど息の合ったラブラインと、ジュニというキャラクターを消化したチョン・ヘインはヒーリング効果抜群であり、もちろん珠玉のラブロマンスとして楽しめる一本でもある。その一方で、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」の本質は、誰かを愛する方法や、愛を受け止める方法についてだ。ジナは仕事は出来るものの、上司のハラスメントを振り払えない様子が同僚から反感を買っている。彼女を尊重しているように見えない彼氏と腐れ縁を続け、保守的なジナの母は弟ばかりを重用している。

自身を取り巻く理不尽さにノーと言えない、自己肯定感の低い女性だ。他方、ジュニは母親を早くに亡くし、再婚した父はジュニたち姉弟を省みない。家族を助けるため、ジュニは夢を諦め就職を選んだ。年下らしく天真爛漫なジュニの瞳は、時折言いようのない暗さを見せる。複雑な家庭環境を持ち、愛情不足に陥っていてもおかしくないジュニだが、ジナへの献身は慈愛に満ちている。自分自身も孤独であるにもかかわらず、大切な人への分かち合いを、ごく当たり前にできる人物だ。社会的地位や男女関係を醜悪な権力勾配として利用するジナの上司や元彼とは、大きな差がある。ジュニの愛を受けたジナは、人を大切にするとはどういうことかを知り、周囲からの抑圧に抵抗しようと奮闘していく。

続編にも期待が高まる「D.P. -脱走兵追跡官-」アン・ジュノが見せた孤独と強さ

ウェブ漫画家キム・ボトンの実体験に基づくリアリティあるストーリーに誰もが釘付けとなった「D.P. -脱走兵追跡官-」
ウェブ漫画家キム・ボトンの実体験に基づくリアリティあるストーリーに誰もが釘付けとなった「D.P. -脱走兵追跡官-」[c]Netflix

“メロ職人”と呼ばれているチョン・ヘインにとって、ラブロマンス要素のない「D.P. -脱走兵追跡官-」の二等兵アン・ジュノに対しては、過去作とは違う心境で向き合ったはずだ。芸能界デビューする前にすでに兵役を終えていたチョン・ヘインだが、本人は「自分の二等兵時代を思い出した」「もう二度と行きたくない」とインタビューで述懐している。劇中で起こるような凄惨ないじめを経験したというわけではなくとも、軍隊という閉鎖的な空間の記憶は、生々しく心に残っているのだろう。これまでのロマンティックな役柄とは異なる方向性を獲得した。軍務を放棄し脱走した兵士を追跡・逮捕する“D.P. ”の活躍を通して、集団内にはびこる暴力とその構造を告発する本作では、父親の激しい家庭内暴力をトラウマに持ち、殴られないようにとボクシングを身につけたアン・ジュノもまた、自身も負のシステムに取り込まれ、加担してしまいかねない危うさに立っている。シーズン1第1話では、脱走兵の保護に失敗し、自殺を止められなかった自責の念から、当時の相棒を徹底的に痛めつけてしまう。心に深淵にたった一人で向き合う、孤独な人物だ。そのため入隊当初は無気力で、周囲とのかかわりを避けている。

撮影中、ク・ギョファンのアドリブに何度も笑いそうになったというチョン・ヘイン
撮影中、ク・ギョファンのアドリブに何度も笑いそうになったというチョン・ヘイン[c]Netflix

そんなアン・ジュノだが、脱走兵たちが抱える闇に対峙していくことで変化が訪れる。もちろんク・ギョファン演じるホヨルという、明るく型破りなバディの存在が最も大きいが、自身の心に閉じこもるのではなく、他者の悲痛をくみ取り、分かち合うことで自身の孤独もまた慰められていくのだ。チョン・ヘインは最も印象深い回として、最終回「傍観者」を挙げた。痛ましい事件が起きて終わるこの回のラストカットは、指揮官の命令に背き、軍隊の隊列に加わらず別の方へ歩いて行くジュノの姿だった。「D.P. -脱走兵追跡官-」では、物理的な力で相手を痛めつける者も、加害を見ていて何もしない傍観者も、等しく暴力の構造だと示唆している。父への抵抗のためにボクシングを習い、家族から逃げるように兵役に就き、傍観者になりかけていたアン・ジュノはもういない。彼は自身の孤独を抱き留めながらも、誰かの寂しさにも共鳴できる者になったのだ。

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