『ファミリア』で親子を演じた役所広司と吉沢亮。俳優業のやりがいは「ずっと満足できないこと」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ファミリア』で親子を演じた役所広司と吉沢亮。俳優業のやりがいは「ずっと満足できないこと」

インタビュー

『ファミリア』で親子を演じた役所広司と吉沢亮。俳優業のやりがいは「ずっと満足できないこと」

数々の人間ドラマ作品を手がけてきた成島出監督がメガホンをとり、国籍、文化、置かれた境遇を超えて“家族”を作ろうとする人々を描いた映画『ファミリア』(公開中)。山里に暮らし、隣町の団地に住む在日ブラジル人の若者と親しくなる陶器職人の父の誠治と、赴任先のアルジェリアで難民出身の女性と結婚した、一人息子の学。父子役として初共演を果たした役所広司吉沢亮に、本作が演技初挑戦となった在日ブラジル人俳優たちとのエピソードや、俳優の仕事の醍醐味を語ってもらった。

公開中の『ファミリア』で親子役を演じている役所広司と吉沢亮
公開中の『ファミリア』で親子役を演じている役所広司と吉沢亮[c]2022「ファミリア」製作委員会

「吉沢くんのナチュラルな芝居のおかげで『息子なんだ』という実感がすぐに湧いてきました」(役所)

――お2人は初共演にして親子役を演じられましたが、どのように役作りされましたか?

役所「成島監督から、映画には描かれていない、学が帰ってくるまでのストーリーをいただいて。そういったものがない時は自分たちで勝手にストーリーを決めていくわけですけど、今回は“人生ノート”が全員に配られたので、同じ過去を知る者同士として存在できました。それを読んだ時から、息子の学役は吉沢くんの顔しか想像してなかったわけですが、コロナ禍で撮影が一年半ほど中断している間に、学だと思っていた吉沢くんがNHK大河ドラマで頑張っている姿をテレビ越しに見て、ちょっと誇らしくなったりしてね(笑)」

――まさに息子を見守る父親の心境ですね(笑)。

役所「撮影が中断する前に本読みだけは先にやったんですが、吉沢くんの芝居は肩に無駄な力が入ってなくて。シーンの中で自然なやりとりができたから、『息子なんだ』という実感がすぐに湧いてきました。なんといっても、僕が演じた誠治にとって学は一番大切なキャラクターですから。吉沢くんの存在に本当に助けられたと思います」

吉沢「僕からすると、役所さんの存在自体がもう本当に“誠治さんそのもの”という感じでした。ちょっと不器用だけど、息子である僕のことをちゃんと愛してくれている父親で。『この人は日常的に焼き物をする人生を生きているんだな』って、心から思わせてくれました。お芝居していることを忘れるくらい、役所さんは僕をこの映画の世界に入れてくれたんです」

陶器職人の誠治(役所)は、息子の学(吉沢)が陶芸の仕事を継ぎたいと言ってくることに戸惑う
陶器職人の誠治(役所)は、息子の学(吉沢)が陶芸の仕事を継ぎたいと言ってくることに戸惑う[c]2022「ファミリア」製作委員会


――ちょうど大河の撮影タイミングでご一緒されたのも、どこか運命的でもありますね。

吉沢「そうかもしれないですね。大河に入る前と後とでは、僕自身の芝居に対する考え方がだいぶ変わったような気がしているんです。前もって決めるより、現場で受け取れるものを受け取ったうえでやろうという気持ちが強くなってきて。だからこそ、この現場では、『なんでも吸収してやろう!』と思っていて。実際にそういったことができた現場なんじゃないかな」

――完成した映画をご覧になっていかがでしたか?

役所「僕は自分が出ている映画はいつも一度しか観ないものだから、あまり上手く批評はできないんだけど…。この映画はきっと、自分の体調とかそういうものによっても見え方が変わってくる映画なんじゃないかと思うんですよね。一方で、学と難民出身の妻・ナディアさんのシーンは、微笑ましく観てましたよ。『学は(アルジェリアに)帰って早々、奥さんをベッドに押し倒すようなマネをするのか』とかね。『そんな息子に育てた覚えはないぞ!』って(笑)」

吉沢「アハハハ(笑)。僕は自分が出ていないシーンもかなり多かったので、シンプルに『すごくいい映画だなあ』と思いながら試写を観ていたんですけど、僕ももっと長い時間、役所さんといろんなシーンでお芝居をしたかったなあというのが本音です(笑)。在日ブラジル人青年のマルコスたちのシーンも、残酷ではあるんだけど、すごくキラキラしてました」

誠治は半グレ集団に追われていた在日ブラジル人青年のマルコスを匿う
誠治は半グレ集団に追われていた在日ブラジル人青年のマルコスを匿う[c]2022「ファミリア」製作委員会

役所「誠治は、マルコスにかつての自分を重ねているようなところもあったと思いますね。息子と同じくらいの若者を、もうこれ以上失いたくないという気持ちもあったでしょうし。MIYAVIくんが演じた半グレのリーダーも、ものすごく痛みを抱えた青年ではあるんですが、あんなふうになるまで彼を違う方向に導いてくれる大人は、誰もいなかったのかなあとも思いますよね。この映画は、ちゃんと若者の周りにいい大人がいないと、社会はよくならないんだと教えてくれます。こんな社会を生みだしているのは、すべて大人の責任なわけだから」

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