ロバート・エガース監督の手腕に酔う『ノースマン 導かれし復讐者』、韓国映画の“勢い”を体感する『パーフェクト・ドライバー』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
ロバート・エガース監督の手腕に酔う『ノースマン 導かれし復讐者』、韓国映画の“勢い”を体感する『パーフェクト・ドライバー』など週末観るならこの3本!

コラム

ロバート・エガース監督の手腕に酔う『ノースマン 導かれし復讐者』、韓国映画の“勢い”を体感する『パーフェクト・ドライバー』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、天才ドライバーが、海外逃亡を図るブローカー&息子という”ワケあり荷物”を運ぶさまを描くカーアクション、アレクサンダー・スカルスガルドが、復讐を誓うバイキングに扮するアクション、実話を基に、娘を誘拐されたシングルマザーの女性が犯罪組織に立ち向かっていく社会派ドラマの、因縁が絡みあう3本。

痺れるアクションにかぶりつきの歴史復讐劇『ノースマン 導かれし復讐者』(公開中)

「史上最も正確なヴァイキング映画」を目標に作られたという本作(『ノースマン 導かれし復讐者』)
「史上最も正確なヴァイキング映画」を目標に作られたという本作(『ノースマン 導かれし復讐者』)[c] 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ドラマ「ヴァイキング ~海の覇者たち~」×『グラディエーター』(00)とも言うべき歴史復讐劇の登場だ!主人公は叔父の裏切りによってヴァイキングの王である父を殺された王子のアムレート。大人へと成長し、バーサーカー(狂戦士)の一員としてヨーロッパで略奪の日々を送っていた彼は、預言者との出会いで復讐心を思いだし、自ら奴隷になって叔父の懐に入り込もうとする。

『ウィッチ』(15)『ライトハウス』(19)のロバート・エガースが監督ということで、とにかく濃ゆい映像が満載。平穏な集落を襲うヴァイキングの凶行を連綿と映し続けたと思えば、“伝説の剣(?)”を手にするためにアムレートがアンデッドの戦士と対決するファンタジーなシーンもあり、クライマックスでは溶岩が噴きだす火山地帯で叔父との決闘が繰り広げられるなど、こだわり抜かれた痺れるアクションに思わず前のめりでスクリーンにかぶりついてしまう。

【写真を見る】見よ、この肉体美!ヴァイキングの戦士役のアレクサンダー・スカルスガルド、バキバキの腹筋を披露
【写真を見る】見よ、この肉体美!ヴァイキングの戦士役のアレクサンダー・スカルスガルド、バキバキの腹筋を披露[c] 2022 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

アムレートを熱演するのは、スウェーデン出身のアレクサンダー・スカルスガルド。190cm越えの長身だけでなく、バキバキに鍛え上げられた肉体美も披露し、物語前半での長髪に髭を生やした風貌は完全に現代に甦ったヴァイキングだ。思えば、父親に強面の怪優ステラン・スカルスガルド、弟には「ヴァイキング」にも出演するグスタフ・スカルスガルドを持っており、その血統自体がヴァイキングを演じるべくして演じているような気もする。ロビン・キャロラン&セバスチャン・ゲインズボローによるサウンドトラックも抜群にカッコよく、ヴァイキングが吹き鳴らす角笛のような音で重厚感をもたらしたかと思えば、宿命に向きあうアムレートの心情にも寄り添い、一つ一つのシーンを劇的なものにしている。(映画ライター・平尾嘉浩)

このジャンルにおける韓国映画の“勢い”を体感できる快作…『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』(公開中)

ワケあり荷物を届ける“特送”の天才ドライバー、ウナの姿を描く『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』
ワケあり荷物を届ける“特送”の天才ドライバー、ウナの姿を描く『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』[c] 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.

わけありの荷物や人間を指定された場所まで運ぶ、裏社会の“運び屋”ドライバーを主人公にした韓国発のクライム・アクション。ある仕事のトラブルで悪徳警官と殺し屋に追われ、幼い少年を守るはめになった運び屋のウナが、ソウルから釜山へと疾走しながら危機また危機を突破していく姿をスリリングに映しだす。

『パラサイト 半地下の家族』(19)で美術の家庭教師ギジョンを演じて注目された若手女優パク・ソダムが、華麗な運転テクニックを誇るウナをタフ&クールな魅力たっぷりに体現。迷路のように入り組んだ路地や立体駐車場を舞台にした切れ味抜群のカー・チェイスに加え、逃亡中に姉弟のような絆を育むウナと少年の交流劇も本作の見どころとなる。クオリティの高いアクションとドラマがバランスよく配合され、ウナが死に物狂いの激闘に身を投じていくクライマックスまで目が離せない。このジャンルにおける韓国映画の“勢い”を体感できる快作だ。(映画ライター・高橋諭治)


いま目にする世界中の出来事と見事にシンクロする…『母の聖戦』(公開中)

シングルマザーの女性が、犯罪組織にさらわれた娘を救うため孤軍奮闘する『母の聖戦』
シングルマザーの女性が、犯罪組織にさらわれた娘を救うため孤軍奮闘する『母の聖戦』[c]MENUETTO FILM, ONE FOR THE ROAD,LES FILMS DU FLEUVE, MOBRA FILMS&TEOREMA

誘拐事件が年間約6万件と推定されるメキシコを舞台に、ルーマニア出身のテオドラ・アナ・ミハイが実話を基に脚本を手掛け、監督デビューした問題作。デートに出かけた10代の娘が帰ってこない。心配するシングルマザーのシエロのもとに、身代金要求の連絡が入る。若い愛人と暮らす元夫に工面してもらうが、娘は戻らない。さらなる身代金を払っても娘は戻らず、ついにシエロは警察に相談するが――。

警察に相談した途端に家が襲撃され、どこまで犯罪組織が入り込んでいるのかハラハラが募る。しかしシエロは諦めない。一人で張り込み、尾行し、ついに組織の中枢へ近づき、さらに軍まで動かしてしまう。だが安易な方へ流れないのが、本作の真骨頂!製作者らの名(ダルデンヌ兄弟etc…)が、まさに品質を保証していよう。我々はひたすらシエロの執念に頭が下がり、ヒェ~と慄いてしまう。その通り、ほとんどの人間は力でねじ伏せられ、恐怖で口をつぐむ。むしろ欲望も絡んで組織に加担する。そんな社会の理不尽は、いま目にする世界中の出来事と見事にシンクロする。もちろん此処、日本の数々の理不尽とも。根底には、マチズモ(男性優位主義)による暴力的な“力”の支配がある。誰もが熱くなること必至の迫りくる必見作だ。(映画ライター・折田千鶴子)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

関連作品