滝藤賢一と渋谷すばる「周りは全員敵だと思っていた」!?意外な共通点を持つ2人が語る、共鳴し合う想い

インタビュー

滝藤賢一と渋谷すばる「周りは全員敵だと思っていた」!?意外な共通点を持つ2人が語る、共鳴し合う想い

「お客さんはもちろん、現場を支えてくれて、一緒に頑張ってくれているメンバーやスタッフも大切にしたい」(渋谷)

――滝藤さんは、自分に近い役、自分とはまったく違う役、渋谷さんは自分自身を歌詞に書く時、タイアップなどでまったく自分ではないところを歌詞に書く時、では、どっちが演じやすい、書きやすい、というのはありますか?

渋谷「自分自身を書く時は、そこに近すぎるからこその苦しさみたいなのは生まれることはありますね。タイアップとかでまったく自分にないことを書く場合は、違うことを書きながらもやっぱりどこかに自分らしさが出てしまう気がしますね。そこは無理矢理自分を主張したいという意味ではなくて、自然と出てしまうと思うんです。その擦り合わせや、まったく自分にない部分をいろいろと探りながら作るのが僕としては楽しいんですけどね。自分自身の曲を作る時とはまた別の楽しさがあるというか。“こういう曲を書いてほしい”という希望にどれだけ近づけて、それをどれだけ自分が作る“そういう曲”にしていくかっていう楽しさがタイアップにはあるから、まだ見たことのない自分と出逢える貴重な経験だと思ってます。結果、自分だけの作品だったらこういう言葉は選ばなかったけど、というところになるんだと思うんですよね、僕の場合は。それが楽しいと思えるというか。滝藤さんはどうですか?」

滝藤「僕は当て書きのほうがやりやすいかもしれないな。『逃げるは恥だが役に立つ』の脚本を書かれた野木亜紀子さんが、古舘寛治さんと僕に当てて書いてくれた『コタキ兄弟と四苦八苦』というドラマがあったんですけど、すごく演じやすかったんです」

 主演として作品を背負う立場、フロントマンとしてサポートメンバーを率いる立場からそれぞれの想いを語った滝藤賢一と渋谷すばる
主演として作品を背負う立場、フロントマンとしてサポートメンバーを率いる立場からそれぞれの想いを語った滝藤賢一と渋谷すばる撮影/野崎航正 ヘアメイク/矢内浩美(渋谷)

――当て書きとなると、本当に自分自身だったりする訳ですよね?自分自身を演じるということほど難しいのではないか、もうそうなってくると“演じる”ということではなくなってくるんじゃないかな?って思うのですが。

滝藤「(少し考えて)僕はそこがやりたいのかもしれない。もちろん演じるんだけど、演じていないというか。そこを追求したいのかもしれないなって思いましたね、いま。『なにもするな』『演じようとしなくていい』『ありのままでいい』っていう監督さんもいるんだけど、俳優はやっぱり演じるんです。演じて、なにもやっていないように魅せるんですよ。なにもやらないということは、ほぼできないと思います。ちょっとでも俳優を勉強した人は。絶対に演じるんです。演じていないように演じる、素でいるように魅せる演技をするんだと思いますよ。僕もきっとそれを無意識にやっているんだと思います」

――田中監督は、深夜ドラマ「リバースエッジ 大川端探偵社」の「トップランナー」という回で、市民ランナー役で滝藤さんがご出演されていた時に、ドーピングして浅草の街を走りまくる役を演じられていたのを見て、“ほとばしる”ものを感じたらしく、それが忘れられずに今回滝藤さんに主演をお願いしたとおっしゃっていたんです。主演は滝藤さんしかいないと思ったと。

滝藤「田中さんがそう言ってくれていたの?初めて聞いた話だけど、そんなこと言ってくれていたんだね。うれしいな。でも、『リバースエッジ 大川端探偵社』で演じさせてもらった市民ランナー役は、とにかく本当にキツかった。3日間の撮影だったんだけど、朝から夕方まで隅田川のコンクリートの道を全力で毎日走って、1日目の午前中で一歩も動けなくなったくらいキツかった。膝の後ろ辺りに石の塊みたいなものが4個も5個も出来て、まったく動けなくなったからね。その日の撮影が終わってから歩けなくて、帰りに整体に駆け込んで、石みたいなった塊を力ずくで潰してもらって。激痛だったの覚えてるよ(笑)。それで、また次の日現場に行くっていう繰り返しだったな」

渋谷「すごいですね…聞いてるだけでキツかったの伝わってきます。すごい…」

滝藤「でも、すばるくんも演技してたりするよね?映画もやってたもんね」

渋谷「はい」


――田中監督は、渋谷さんが主演した『味園ユニバース』も観て、その時の演技と楽曲を聴いて、同じく“ほとばしる”ものを感じたんだそうです。

渋谷「そう言ってもらえるのは本当にうれしいことですよね」

滝藤「本当にそうだよね。でも、本当に僕はすばるくんの歌にも同じ熱量を感じるからね。衝撃というか、ガツンとくるものがある。今回の主題歌である『ないしょダンス』を最初に聴いた時は、本当に痺れたからね。こんなに力強くて熱い曲をこの映画のために書いてくれたんだな、この映画からこんなに熱い想いを受け取ってくれたんだなって、すごくうれしくなった」

渋谷「こちらこそうれしいです。『ないしょダンス』に関しても、監督さんがとても喜んで下さっていたのを聞いて、改めて書かせてもらって良かったなって感じたし、主題歌というものの意味をとても深く感じることができたし、こうして滝藤さんにも直接感想を聞けたことをすごくうれしく思いますし、そんなふうに受け止めてくれたんだなって思ったら、本当に今回こういう形で関わらせていただけたことに感謝してます。それに、お話しさせていただいて、滝藤さんの人間性がすばらしかったことに感動したんです。話しているだけでいろんなことを学べている気がします」

滝藤「ありがとう、そんな褒められたもんじゃないんだけど(笑)。自分が主演の現場とかでは、場が和むようにみんなとできるだけ話をするように心がけてるんだよね。そういうのってすごく大事だと思うから常に意識して。やっぱり周りのみんなと一緒に楽しい現場にした方が自分も楽しいから。ぶっちゃけ、現場で話さなくても、演じる時になれば、自然と台詞を交わすから、余計な話とかする必要はないかもしれないんだけど、台詞さえあれば、演じさえすれば、成立する仕事だから。でも、リラックスして芝居出来た方が良いじゃない。それで、演じていない時間でたくさん話すようになったんだよね。最初は全員敵だと思っていたから、誰とも喋ってなかったけど」

渋谷「(ハッとした顔で滝藤さんを見る)」

滝藤「なに、同じ?(笑)」

渋谷「はい、昔はそう思ってました(笑)」

滝藤「だよね(笑)。現場でも昔はムスッとしていて、“お前らなんかと喋るもんか!”って思ってた。全員がライバルだと思っていた時もあったから」

渋谷「若気の至りなんですかね?ほんまに僕もそういう時ありました(笑)」

滝藤「それはそれで貫き通せばいいかなと。人間そういう時期ってあると思うからね、誰にでも。でも、僕は無駄に威圧する必要性ってないと思う。やっぱり楽しいほうがいいもんね。主演を張らせてもらうようになってから周りのことも考えなくちゃいけないなって思うようになったかな」

渋谷「それってやっぱり“自分の現場”という責任ですよね。それはすごくわかります。滝藤さんとは立場もやっていることも違いますけど、僕も自分の名前で歌っているから、そこで一緒に音を出してくれているバンドメンバーやスタッフには、“楽しいな”って思ってもらいたいですね。お客さんはもちろんですけど、やっぱり現場を支えてくれて、一緒に頑張ってくれているメンバーやスタッフは大切にしたいので」

滝藤「そうだよね。そこも責任だって思うよね」

――田中監督から、滝藤さんが “監督、セッションしたいからいまから会おうよ”と、シーンを作っていくうえで、とても積極的に協力してもらったとお聞きしましたが、今作は映画初主演というところでの意識の違いはありましたか?

滝藤「芝居の取り組み方という意味では、主演も脇もまったく変わらないです。どの作品でも、ワンシーン、ワンカット丁寧に向き合っているんですけど、主演というのは、ある意味作品に対しての責任が大きく違ってくると思うんです。やっぱり僕も主演となると責任感が違いますからね。周りからは“滝藤さんが居るだけで若い子たちは緊張しますから”って言われるんですけど、僕はまったくそういうつもりはないので、周りの若い人たちを緊張させないようにと気遣うようにしてますね。あと自分が主演の現場では、とにかくみんなとコミュニケーションをとるようにしているんです。相手がコミュニケーションをとりたくなさそうだなって感じたときは無理矢理行かない(笑)。でも、できるだけ若い俳優さんが現場で過度な緊張をすることなく、リラックスしてのぞめるような現場を作りたいし、彼ら自身の持ってる力を引き出せる俳優になりたいんですよ。威圧する俳優じゃなくて、“滝藤さんと一緒に芝居するのめっちゃくちゃ楽しかった!また一緒にやりたい!”って思ってもらえる俳優でありたい。芝居は結局、目の前の相手とのセッションだから」

本作で映画初主演を務めた滝藤賢一
本作で映画初主演を務めた滝藤賢一[c]2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会

渋谷「すごいなって思います。きっとそういう現場って楽しいんやろうなぁってのが伝わってきます」

――渋谷さんもサポートメンバーと一緒にステージに立つ時は、主演の感覚と似ている感じなんじゃないですか?

渋谷「そうかもしれないですね。観に来てくれるお客さんはもちろんなんですけど、僕は、一緒に音を出してくれるサポートメンバーや、関わってくれるスタッフさんみんなに幸せになってもらいたいなって思いながらやっているんです。一緒にやってもらうかぎり、絶対になにかこの現場から持って帰ってほしいなって思っているというか」

滝藤「やっていることは違うけど、同じ気持ちだね。本当に楽しい現場を作りたい。僕も、自分がこの歳になってできること、やってあげられることをつないでいけたらいいなって思っているんだよね、みんなとセッションしながら」

渋谷「本当にそうですね。1人じゃなにもできないですし、僕もいろんなものをみんなから貰ってきたように、みんなを笑顔にしたいし、幸せになってほしいと思うから」

滝藤「この映画『ひみつのなっちゃん。』と、すばるくんの書いてくれた『ないしょダンス』で、観てくれた人たちを笑顔にできたらうれしいよね」

渋谷「はい。そう思います」

 『ひみつのなっちゃん。』は現在公開中
『ひみつのなっちゃん。』は現在公開中[c]2023「ひみつのなっちゃん。」製作委員会
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