鬼才ナ・ホンジン始動!新作『Hope』にマイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルが夫婦共演
『チェイサー』(08)で世界に衝撃を与えて以来、韓国はもちろん世界中のシネフィルから新作を熱望されている映画人の一人、ナ・ホンジン監督。原案およびプロデューサーとしてタイの新鋭バンジョン・ピサンタナクーン監督と作り上げたオカルティック・ホラー『女神の継承』(21)で見せた、ナ・ホンジン監督ならではの底知れない絶望から、未だ抜け出せないファンも多いことだろう。そんな彼が、いよいよ待望の新作に向けて動き出した。
平和な港町で巻き起こる危機を描く『Hope』
アメリカの大手映画情報サイトindiewireなどによると、ナ・ホンジン監督の新作『Hope』は、人里離れた港町・湖浦の郊外で謎の存在が発見されたことをきっかけに、未だかつて経験したことのない危機に見舞われていく住民たちの姿を描く。郊外の平和な村で起きた怪事件をめぐり破滅していく人々の恐怖を描いた『哭声/コクソン』(16)と同じく、人間たちが絶望的な心理に追い込まれていくさまが生々しく表現された異色のホラー作品になりそうだ。
マイケル・ファスベンダーとアリシア・ヴィキャンデルが夫婦で共演!
現在報じられている出演陣には、韓国だけに留まらない国籍を越えたビッグネームが挙がっている。まず、「X-MEN」シリーズのマグニートー役をはじめ、ブロックバスターからヒューマンドラマまであらゆるキャラクターを演じ分けるマイケル・ファスベンダーと、『グリーン・ナイト』(21)で一人二役の難役を完璧にこなしたアリシア・ヴィキャンデルがキャスティングされている。二人は実生活で夫婦でもあるが、結ばれるきっかけとなった『光をくれた人』(17)以来、6年ぶりの共演となる。二人がどんな役柄を演じるかはまだ明らかにされていないが、ハリウッドきっての実力派俳優が、得体の知れない恐怖を観客に届けるナ・ホンジンワールドに揃って初参加するだけに、生み出されるシナジー効果は未知数で大いに期待が高まる。
さらに、『哭声/コクソン』で謎多き祈祷師イルグァンに扮したファン・ジョンミンが、地方の警察官ボムソク役として再びナ・ホンジン監督とタッグを組む。そして、『モガディシュ 脱出までの14日間』(21)で鮮烈なカーアクションをこなしたチョ・インソンが若い狩人ソンギ役を演じるほか、「イカゲーム」への出演以来ワールドワイドな活躍を見せるチョン・ホヨンが警察官ソンエに扮する予定だ。
妥協を許さない完璧主義者のナ・ホンジン監督だけに、スタッフの人選もこだわっている。『パラサイト 半地下の家族』(19)や『ベイビー・ブローカー』(22)といった韓国の傑作はもちろん、日本映画『流浪の月』(22)でも絶妙なルックを作り上げたホン・ギョンピョ撮影監督が、『哭声/コクソン』に続いて二度目のコラボレーションを果たす。流麗かつ情感のある水の表現で観客の胸を打つホン・ギョンピョ撮影監督のカメラワークが、ナ・ホンジン監督の新作をどう彩るのだろうか。
報道によれば、『Hope』は 現在プリプロダクション中で、今年末に撮影を開始する予定だという。本作の製作意図についてナ・ホンジン監督は「誰かの善意が立場の違いを経て、ついに破局に突き進む姿が社会のあちこちで発見されたりもする。 今回の映画は、このような現象を盛り込んでみようと思う」と明らかにしている。『哭声/コクソン』や『女神の継承』から引き続く、ナ・ホンジン監督特有の奇異な現象と人間の信頼をめぐるストーリーになるようだ。まだまだベールに包まれた鬼才の新作。続報を震えて待ちたい。
文/荒井 南