『THE WITCH/魔女 ―増殖―』の“少女”、シン・シア単独インタビュー!“魔女ユニバース”を不動のものにした飽くなき探求心
人体実験により生みだされた特殊能力を操る少女を主人公に、その破壊的パワーをめぐる人間の思惑と暴力が絡み合う『The Witch/魔女』(18)。銃撃戦とサイキックアクションが融合した斬新な活劇と、あどけない表情から一瞬で怪物に豹変する“少女”のキャラクターは、韓国映画ファンのみならず世界中のジャンルムービー・マニアを唸らせた。その続編『THE WITCH/魔女 ―増殖―』が、5月26日(金)に公開される。
本作を手掛けたパク・フンジョン監督は、ライフワークとして『The Witch/魔女』に始まる“魔女ユニバース”を育てていく計画があるという。拡張し続けるこの映画において、最も重要なのはやはり“少女”の存在だ。前作のファンは、主演のキム・ダミに圧倒された。そして『THE WITCH/魔女 ―増殖―』の観客は、シン・シアという存在に驚かされるだろう。今回、来日したシン・シアへ単独インタビューを敢行。劇中で見せるバイオレンスな演技とは全く違う愛くるしさに心を奪われ、また取材陣へお菓子をプレゼントする細やかさにも癒やされつつ、“少女”の役作りや俳優としての展望を存分に伺った。
入念な監督ミーティングの末にヒロイン抜擢!強烈な初登場シーンは「俳優としても重要な第一歩でした」
シン・シアは、本作で長編映画初出演となる。『THE WITCH/魔女 ―増殖―』の1400倍にも上る倍率を勝ち抜いたシンデレラストーリーや、パク・フンジョン監督から合格の連絡をもらった瞬間に驚きのあまり食べていたたこ焼きを落としてしまったという微笑ましいエピソードは日本でも話題になった。聞けばパク・フンジョン監督は、“魔女ユニバース”へのなみなみならぬ熱意ゆえだろうか、シン・シアへのオーディションを3回、ミーティングに至っては5回以上も重ねたそうだ。
「オーディションを終えたあとも続けてミーティングに呼んでくださるので、“もしかしたら…もしかしたら…もしかしたら?”って(笑)、胸がドキドキしましたが、確信した瞬間はなかったです。お会いしている時、パク・フンジョン監督とはたくさんお話しましたが、最後に“このオーディションに受からなくてもあなたには今後たくさんチャンスがあるので、傷つかないでください”とおっしゃったのを覚えています。その時は“選ばれないのかもしれない”という風にも思いました」。
オーディションでは自信満々というわけではなかったというシン・シア。しかし、いざ“少女”としてスクリーンに登場すると唯一無二の風格を漂わせる。パク・フンジョン監督の徹底された美学がふんだんに盛り込まれた「魔女」シリーズは息もつかせぬシーンのつるべ打ちだが、『THE WITCH/魔女 ―増殖―』は、前作以上にエキサイティングな描写が待ち受けている。ファーストシーンでは、血まみれで施設からさまよい出てくる少女の姿が捉えられている。撮影はシーンの順番通りに行われたということは、シン・シアの初めての映画撮影は、あの強烈な姿からスタートしたことになる。早々に俳優として高いハードルを越えなければならなかったシン・シアは、「この映画の中に入り込むということは、本当の意味で最初のステップでした」と振り返る。
「でもそれが理由で、『THE WITCH/魔女 ―増殖―』の“少女”と私は、シンクロする瞬間が非常に多くなったように思います“少女を演じる上で自分の中から反映できることがより増えて、完全にキャラクターを作ることができました。私が演じた少女は、一般的に出逢える人物ではないですよね。彼女のように超能力を持っている少女は私たちの住む世界では一般的にはいません。なので、劇中のようになにも知らずに研究所に囚われている子がいたら、彼女はなにを考えて、どのように過ごしているのか。そんなビハインドストーリーを想像しました。できる限り、卵から目覚めたばかりの小鳥をイメージして、ありのままの少女を演じようと考えました」
張り詰めたシーンの応酬であるこの映画だが、“少女”の人間的な一面が垣間見える瞬間がある。研究所から出てきた少女と鉢合わせしたことをきっかけに保護することになったギョンヒ(パク・ウンビン)とその弟デギル(ソン・ユビン)の牧場に身を寄せた時、初めて見る食べ物に目を輝かせ口いっぱいにほおばるシーンだ。少女に抜擢された際のエピソードからもわかるように、彼女は食べることが大好き。来日してすぐの先行上映イベントでも、「日本に来てお寿司、ラーメン、懐石料理、アップルパイなど美味しいものをたくさん食べました」と喜んでいた。すばらしい食べっぷりに“少女”の生命力を感じたが、もしかしたらシン・シアの素のままの姿なのではないだろうか?そんな質問を投げかけると、少しはにかんだ様子で「あのシーンでは、パク・フンジョン監督は最初から“あなたがいつも食べるように食べて”とおっしゃったんです。美味しく食べました!」と笑顔を見せる。
“魔女ユニバース”を背負う強い責任感で、カリスマ的な“先輩”の後を継ぐプレッシャーを克服
こんなにもほがらかなシン・シアだが、本作への出演はシリアスな挑戦だった。“魔女ユニバース”には、キム・ダミが演じたアイコニックな存在がいる。ジャユンというキャラクターを演じたキム・ダミ本人も一気にスターダムを駆け上った。元々シン・シアは『The Witch/魔女』の大ファンだったそうだが、カリスマティックな先人のあとを継ぐことにプレッシャーはあったのだろうか?
「もちろんプレッシャーもありました。でもそれよりも、“魔女ユニバース”に迷惑をかけてはいけないという責任感のほうが強かったんです。“どうすればもっと少女を上手く演じられるだろうか?と熱心に考えて、責任感を持って役に向き合いました」。